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【INTERVIEW】クリエーターにとって大切な資質とは?――I.L.M.社のデジタルモデルスーパーバイザー、ジェフ・キャンベル氏に訊く

2000年04月26日 00時00分更新

文● 野々下裕子

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大阪・南港を拠点とするインキュベーション施設“ソフト産業プラザiMedio(イメディオ)”が今月で開設1周年を迎え、その記念セミナーが4月21日に開催された。講師として招かれたI.L.M.社(Industrial Light and Magic)のデジタルモデルスーパーバイザー、ジェフ・キャンベル(Geoff Campbell)氏は、“‘スターウォーズ エピソード1’の謎が解ける日”をテーマに、最先端の視覚効果技術の舞台裏を惜しみなく公開。聴衆を大いに楽しませてくれた。

講演終了後、キャンベル氏にインタビューを行ない、これまでの自身の制作活動やクリエーターとしての心構えなどについて語ってもらった。

I.L.M.社のデジタルモデルスーパーバイザー、ジェフ・キャンベル氏。'89年にI.L.M.に入社以来、『ターミネーター2』、『ジュラシックパーク』、『ジュマンジ』、『メン・イン・ブラック』、『101』など、映画用特殊効果で注目を浴びてきたI.L.M.の映画作品全てに関わってきたキーパーソン
I.L.M.社のデジタルモデルスーパーバイザー、ジェフ・キャンベル氏。'89年にI.L.M.に入社以来、『ターミネーター2』、『ジュラシックパーク』、『ジュマンジ』、『メン・イン・ブラック』、『101』など、映画用特殊効果で注目を浴びてきたI.L.M.の映画作品全てに関わってきたキーパーソン



シーグラフの入賞作品がきっかけで、I.L.M.に

--以前から、こうした視覚効果技術の分野に興味を持たれていたのですか?

「私の家族はクリエーター一家で、父がBBCのTVディレクターなのをはじめ、兄弟もアーティストやタップダンサーといった、何かしらクリエーティブなことに関わっています。私自身もそうしたことに興味があって、'73年から'78年までは美術学校に通っていました。最初は動物のかぶりものを作ったりしました。映像そのものに関心を持ったというよりも、何かクリエーティブな活動をすることに興味がありました」

--I.L.M.社に入社されたきっかけは?

「I.L.M.という組織には以前から関心があって、実は入社したいと思って作品を送ったことがあるんです。コンピューターやモデリングなどをやっていたので、その写真を撮ってI.L.M.に送ったのですが、その時は残念ながら採用されませんでした。それが'80年ころです。その後、'89年にシーグラフに応募した作品が入賞し、それがきっかけとなってI.L.M.に入社することができました」

--日本人でもあなたのようにチャンスがあれば、I.L.M.のスタッフになれる可能性はありますか?

「I.L.M.では常にスタッフを募集しています。特にアニメーターはもっと増やしていきたいと思っています。私は一部のスタッフに対して採用の権限を持っていますが、最終的に決めるのは会社です。I.L.M.で仕事をしたいと思うなら、シーグラフのような賞に応募して実力をアピールするのは1つの手でしょうね。ほかにもデモテープを送ってもいいのですが、CGの場合、作品づくりで関われる部分はいろいろありますから、自分が作品の中で何をどう担当して、さらに自分がI.L.M.で何ができるのかを明確にする必要があります」

「I.L.M.のスタッフは22ヵ国にいます。アニメの作業などは実際にカナダでやっていることも多いので、日本人がスタッフに入ることは何ら問題はないでしょう。けれども、これが一番問題だと思いますが、作品づくりは多くの人たちとの共同作業になるため、意思疎通がとても大切になります。ですから英語ができることが最低限の条件となります」

ファンからのサインに気軽に応えるキャンベル氏(セミナー終了後)
ファンからのサインに気軽に応えるキャンベル氏(セミナー終了後)



イマジネーションと観察眼が大切。そのために解剖学の勉強も

--そのほかにクリエーターとして求められるものは?

「セミナーの中でも話をしましたが、クリエーターに求められるのはイマジネーションなんです。何でも関心を持って探求する、毎日の生活の中でそうした観察眼を鍛えておくことが大切なんです」

--ご自身で特に勉強されていることは何かありますか?

「今はAnatomy(解剖学)を勉強していますね。クリーチャーにリアリティーを吹き込む上で、こうした勉強は欠かせないですからね」

--今後、CG映像に求められるのはリアリティーさだけになっていくのでしょうか?

「それは作品に求められるものによって変わってきます。映画作品の中では主にリアリティーが求められてきましたが、インターネットに載せられるようなデータの軽い映像なども要求があれば作ることはあると思います。たとえば、フラッシュで作る作品などは面白いですし、いろいろな可能性がありますよね」

質疑応答のシーン(セミナー終了後)
質疑応答のシーン(セミナー終了後)



I.L.M.には自分の作品づくりができる環境もある

--それでは、ご自身で自分の作品を制作したりすることも?

「I.L.M.のいいところは、大きな組織として最先端の現場に携われる一方で、個々のクリエーターたちの作業をするために、その機会も設けているということなんです。施設の中にそうした設備が別にあって、クリエーターたちは週末や休みを利用して自分の作品づくりができるんです。最先端の技術を大勢で作る一方で、そうした個人のクリエーティビティーにも目を向けられるという意味では、最高の環境ですよね」

--プライベートはどんなことをしていますか?

「だいたいスポーツをしています。体を動かすことが好きなんです。あとは飛行機の免許を持っているから、時間があれば飛行機に乗ったりもしたいんです。けれども、今は時間がなくて、作品にかかりきりのことが多いですね。それ以外では、最近はもっぱら人を見ているのが好きですね。いろいろ観察しながら作品づくりのヒントにしていくんです」

--そんな視点から新しいクリーチャーが生まれてくるんですね(笑)

「そうかもしれないですね(笑)。パーツ単位でものを見るより、ほんのちょっとした仕草や動きからアイデアが湧いてくるんです。とにかくアイデアというのは自分の中からしか生まれてこないものですし、それをどう形にしていくかにもアイデアが求められます。そのためにも、たくさん勉強をして、常に自分を磨いていくことが大切ですね」

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