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「とにかくマイクロソフト打倒」――Linuxにかける日本オラクルの狙い

2000年04月25日 00時00分更新

文● 編集部 小林伸也

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日本オラクル(株)が25日に設立を発表したLinux専業の子会社“ミラクル・リナックス株式会社”は、同社が展開するLinux事業の第1段階を集大成したものだという。RDBMSで競合し、そのプラットフォームとなるサーバーOS市場では圧倒的な支配を許してきた“仇敵”マイクロソフトが最大の標的だ。RDBMSで培ったブランド力と波に乗るLinuxの勢いで、マイクロソフトの牙城切り崩しは実現するのか。

日本オラクル社長の佐野力氏 日本オラクル社長の佐野力氏



サーバーOSとして注目を集めるLinuxだが、国内市場での導入実績は注目度に比べると多くはない。ハイテク専門の調査会社・米インターナショナルデーターコーポレイションジャパン(株)(IDC Japan)によると、'99年の国内サーバー市場シェアは、Windows NTの81.6%に対し、Linuxは2.7%にとどまっている。(社)日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)の調査でも、ユーザー企業のうち“今後導入に興味があるOS”として大半がLinuxを挙げたにも関わらず、導入済みの企業は全体の1%と完全な少数派だ。

「インストーラーに不備があるのに、日本法人は『米国ではこれでいいと言っている』と改善しない。これでは日本企業が安心して導入できるわけがない」。ミラクル・リナックスの社長に就任する日本オラクルパートナー事業本部ビジネス開発部シニアマネージャーの矢野広一氏は、日本企業がLinux導入に踏み切れない理由をサポートの不備にあると分析する。矢野氏は「安定性と信頼性が高く、サポートも充実したサーバーOSを日本企業に提供する」と話し、新会社では日本企業の要望にマッチしたOS開発を進めていくという。

さらに矢野氏は、「新会社の使命はLinuxを売ること。データベースは付加価値として提供する」と強調する。だがUNIXベースのRDBMSでは盤石のシェアを誇るオラクルだが、NTベースとなるとマイクロソフトの『SQL Server』と鋭く拮抗しているのが現状。NTに流れがちな中堅企業にLinuxのコストパフォーマンスをアピール、“オラクルのLinux”は企業に安心感も与える。その上で最適なRDBMSとしてOracle8iも売り込む。中堅企業のRDBMS市場でマイクロソフトを圧倒し、さらにサーバー市場のシェアを奪うことであらなる弱体化を図る――オラクルの戦略ははっきりしている。

「ラリー・エリソン(米オラクルCEO)も全面協力を約束してくれた。とにかくマイクロソフト打倒だ」。新会社設立発表会で、日本オラクル社長の佐野力氏は力を込めた。PCサーバーのNEC、ディストリビューターのターボリナックス、中堅向け業務アプリケーションのOBCと各分野のトップを集めた「勝ち組」(佐野氏)をそろえた上で、筆頭株主となる初めての子会社としてLinuxディストリビューターを選んだことからも、同社がLinuxにかける期待がうかがえる。

市場では競合することになるターボリナックスジャパン(株)も、「オープンソースの精神に立ち返る必要がある。ミラクル製品の優れた技術で、ターボの製品も向上する」(同社社長の小島國照氏)と歓迎、開発者を提供するなど協力を惜しまない。新会社のOSはサーバー用のみ。Linuxが普及すればターボのクライアント用OS販売にも弾みがつく。

IDC Japanが2003年のLinuxシェアを10%と予測したのに対し、新会社ではこれを30ポイントも上回る40%に目標を設定、NTシェアを徹底的に奪い取る姿勢を決意を表した。日本のRDBMS市場で見せた「オラクルのミラクル」(佐野氏)をLinuxとともに再現できるのか。挑戦を受けたマイクロソフトの動きも見逃せない。

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