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ニューヨークの最前線メディアアートを紹介――“ニュー・メディア ニュー・フェイス/ニューヨーク”より

2000年04月21日 00時00分更新

文● 編集部 井上猛雄

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東京・西新宿のNTTインターコミュニケーション・センター(ICC)において、ニューヨークで活躍するメディアアーティストの最新作を紹介する“ニュー・メディア ニュー・フェイス/ニューヨーク”が4月21日から6月4日まで開催されている。

これは、メディアアートの新しい可能性と才能を発掘することを目的に企画された“ニュー・メディア ニュー・フェイス”展の第2弾にあたるもの。今回は、ニューヨーク大学ティッシュ・スクール・オブ・ジ・アーツ インタラクティブ・テレコミュニケーションズ・プログラム(ITP)出身者など、主にニューヨークを拠点に活動するアーティストを幅広く集め、米国東海岸で起こっているメディア・アートの動向を紹介。以下に展示作品を紹介する。

“ウッドゥン・ミラー”――ダニエル・ローズィン

その名の通り木でできた木片の鏡。この鏡は800個以上の木片チップと、中央にあるカメラで構成されている。八角額に縁どられた木片の鏡の前に立つと、カメラがその姿をとらえる。すかさず、それぞれの木片の角度が“サー”という静かな音をたてながら一斉に変化する。光に照らされた木片の濃淡表現により、鏡の前に立った姿を再現する。

ダニエル・ローズィン Wooden Mirror, 1999 photographed at ITP NYU by Marianne K.Yeungダニエル・ローズィン Wooden Mirror, 1999 photographed at ITP NYU by Marianne K.Yeung



木片はそれぞれモーターで制御されており、応答速度は高速。木片の角度(濃淡)は256段階に変化する。初期の画像処理技術と同レベルの精度である。制御系はMacintoshですべてコントロールしているという。高度な技術に裏打ちされた作品だが、その技術もさることながら、鏡そのものに木という素材を採用したアイデアは秀逸。さらに副次的に発生する木片の音が、聴覚に効果を与えてくれる心地よい作品。

“ウッドゥン・ミラー”の前でカメラを向ける姿。構えているイメージが分かる
“ウッドゥン・ミラー”の前でカメラを向ける姿。構えているイメージが分かる



“無題(シリーズ#3)”――セレステ・ブルジエ=ムジュノー

展示会場に響き渡る、硬質な音色。ビニールプールに漂う大小さまざまな器が触れ合い、澄んだ音を奏でるインスタレーション。器の種類やその組み合わせ方によってサウンドが変わる。また、水温を微妙に変えることで水の流れを変化させ、器のぶつかり合いを調整している。一見すると単純に見えるが、入念に神経を注いで調音しなければならず、繊細な作業が必要な作品。

untitled (series#3),1998 installation: Paula Cooper Gallery photo: Tom Powel
untitled (series#3),1998 installation: Paula Cooper Gallery photo: Tom Powel



“Under the Table”――中山ダイスケ

丸テーブル下にできた黒い影の中を2個のボールがせわしなく動き回る。ボールの中には流体が入っているのだろうか? 重心をずらしながら動き回るボールの挙動がとても面白い。絶え間ないボールの動きに連動して、床のきしむ音が聞こえる。無人になったカフェで、人々のざわめきを“音の記憶”として想起させる作品。

中山ダイスケ、Under the Table, 2000
中山ダイスケ、Under the Table, 2000


床のきしむ音が、人々のざわめきを彷彿させる

どなたかいますか?――テッド・ヴィクトリア

“シーモンキー”って覚えていますか? ミジンコのような小さな生物。子供のころ、“小さな海の怪獣”というキャッチにつられて育てた人も多いだろう。この小さな怪獣が数十倍に拡大され、ビニールハウスのような小屋の壁面全体に映し出される。水中を浮遊する小さな生物が体内時計に従って動き回っている様子を見ていると、なんだかとても奇妙な気分になってくる。

テッド・ヴィクトリア Is Anyone Home?,1999
テッド・ヴィクトリア Is Anyone Home?,1999


水中を浮遊するシーモンキーの動きが面白い

仕掛けは、元となる水槽にライトを当ててレンズで拡大、さらにそれを10個の木箱(投影装置)で投影方向を変えながら壁面にあてるというもの。

ビニールハウスのような小屋の内部。手前にサンプルの水槽があるビニールハウスのような小屋の内部。手前にサンプルの水槽がある



このほかライトボックスに光学的な仕掛けを組み込んだオブジェ作品“ウォッチング・TV・オン・LSD”なども展示。ライトボックスの中にはテレビ受像機とオブジェが組み込まれている。それらの像をライトボックスに写し出す。ときにノイズをともなうテレビ画面は、ライトボックスの上でさらに視覚的な効果を与えている。

テッド・ヴィクトリア Still-life with Still-life,1999
テッド・ヴィクトリア Still-life with Still-life,1999



“テキスト・レイン”――カミーユ・アッターバック&ロミー・アキタヴ

スクリーン上に無音で落ちてくるテキスト。そのスクリーンの前に立つと、自らの姿が写し出される。やがて、スクリーン上に落ちてくるテキストは、映し出される自らの姿の輪郭に沿って積もり出す。そのテキストは詩の一節となっていることが分かる。見る者自らがパフォーマーとなり、その詩の一節と戯れる。テキストレインが積もる様子が繊細な作品。

カミーユ・アッターバック、ロミー・アキタヴ、Text Rain, 1999, interactive installation
カミーユ・アッターバック、ロミー・アキタヴ、Text Rain, 1999, interactive installation


Support provided by Interval Research Corporation and The Interactive Telecommunications Program at New York University.

また、同時出展の“コンポジション”(カミーユ・アッターバック)は、テキスト・レインと同じコンセプトでつくられたインタラクティブ・インスタレーション。カメラで映し出された観客の姿が、アスキーアートのようにリアルタイムにスクリーン上で表現される。かつて大型コンピューターでアスキーコードを紙に重ね打ちしていた時代を振り返ってみると、このようにリアルタイムで映像を表現できる可能性については想像できなかった。

カミーユ・アッターバック Composition, 1999, interactive installation
カミーユ・アッターバック Composition, 1999, interactive installation


Support provided by Interval Research Corporation and The Interactive Telecommunications Program at New York University.

glasbead(icc)――ジョン・クリマ

透明に光るガラスのようなテーブルスクリーン上の3Dのオブジェ。このオブジェにはヘッドフォンとマウスが取り付けられている。テーブルスクリーン上には、細長いカラフルなガラス管と、それが交差する位置にビーズ玉が浮かぶ。これをマウスを滑らせながらクリックすると、ガラス管の構造が変わり、ヘッドフォンから流れるデジタルサウンドも変化する。デジタルゲーム的作品だが、同時にチープさも兼ね備えたインタラクティブ作品。

ジョン・クリマ、glasbead
ジョン・クリマ、glasbead



なお展示以外にも、4月22日、4月23日にはレクチャーやパフォーマンスも予定されている。

  • NTTインターコミュニケーションセンター(ICC)
  • 【イベント情報】 会場:NTTインターコミュニケーションセンター[ICC] 東京都新宿区西新宿3-20-2東京オペラシティタワー4F 開館時間:午前10時~午後6時(金曜は午後9時まで) 休館日:月曜日 入場料:一般800円(15名以上の団体料金600円)/ 大高生600円(450円)/中小生400円(300円)

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