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【CA-World 2000 レポート Vol.10】アメリカンヒーロー、77歳の宇宙飛行士、ジョン・グレン上院議員の基調講演--宇宙での体験を語る

2000年04月13日 00時00分更新

文● Tero Moda

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9日から14日までの6日間(現地時間)、米コンピュータ・アソシエイツ社(以下、CA)の主催する“CA-World 2000”が、米ルイジアナ州ニューオリンズの“Ernest N.Morial Convention Center”において開催している。

10日午後6時に開催した基調講演では、現役の宇宙飛行士としても活躍するジョン・グレン(John Glenn)上院議員が登壇した。本稿では、この基調講演の模様をお伝えする。

'62年に米国人としては初めて地球周回軌道を飛行した宇宙飛行士となったジョン・グレン上院議員
'62年に米国人としては初めて地球周回軌道を飛行した宇宙飛行士となったジョン・グレン上院議員



ジョン・グレン(John Herschel Glenn Jr.):現代のアメリカンヒーローの一人であるジョン・グレン氏は、'21年、オハイオ州ケンブリッジに産まれる。'43年に海軍に入隊し、第二次世界大戦では59回の出撃を行なった。その後'59年に、人類が宇宙への第一歩を踏み出そうとする“マーキュリー・プロジェクト”のパイロットに選ばれる。

'62年2月20日、プロジェクトは成功し、グレン氏は米国人としては初めて地球周回軌道を飛行した宇宙飛行士となる。'65年に海軍を除隊。'74年にはオハイオ州選出の米上院議員に選出され、その後'80年、'86年、'92年と再選し、オハイオ州の上院議員としては初の四選を果たした。

'98年10月29日、77歳となったグレン氏は36年ぶりに宇宙へと飛び立った。日本人宇宙飛行士の向井千秋さんらとともにスペースシャトル“ディスカバリー”に搭乗し、その様子はNASAのウェブサイトなどで公開された。


宇宙での体験を語るアメリカンヒーロー、グレン氏

壇上に現われたグレン氏を、力強い拍手が迎えた。グレン氏が第一声を発するまでの約2分間、その拍手は止むことがなかった。

「今日は、私の宇宙での体験をお話します。しかし、いつかこの話をみなさんと共有できるようになる日がくることを願っています」と、グレン氏はこの日の講演を始めた。

グレン氏は、衛星軌道上の宇宙船からは太陽がプリズムのように見えたこと、地球の80倍の速度で上り下りする太陽、無重力空間での不思議な現象などについて語った。

'98年、当時77歳のグレン氏が搭乗したスペースシャトル発射の映像は、CNNのウェブサイトで公開された。2日間で200万以上のリクエストがあったという
'98年、当時77歳のグレン氏が搭乗したスペースシャトル発射の映像は、CNNのウェブサイトで公開された。2日間で200万以上のリクエストがあったという



「プラスチックバッグの中に入った水は、まるでテニスボールのようになっていました。これを少し外に出すと、水のピンポンボールができてしまった。だから、食事の取り方には、とても気をつかいました」

「宇宙食は、まるで離乳食のようなペースト状の食事だったのですが、メニューは何種類も用意されていたので、辛いと思うことはありませんでした」

宇宙でのカラダの変化を探る

向井千秋さんらと'98年に搭乗したディスカバリー号では、宇宙における人体の変化を調査するため、グレン氏には様々な医療調査機器が取り付けられた。

無重力空間での筋肉や骨の変化を知るためにグレン氏には計器がとりつけられた
無重力空間での筋肉や骨の変化を知るためにグレン氏には計器がとりつけられた



無重力状態では、重力を感じない骨からカルシウムが流出してしまうため、筋肉や睡眠にも影響が出る。また、地球に降りてからの医師の診断では、眼球や鼓膜にも変化があったという。その経験を踏まえ、「NASAは、医療協会をメンバーに迎え入れるべき」とグレン氏は語った。

宇宙での映像を上映

続いてグレン氏は、ディスカバリー号で撮影した約20分の映像を上映した。上映中も、グレン氏はそれぞれの場面に解説を加え続けた。

向井千秋氏らが撮影した映像は、リアルタイムで米ジョンソン宇宙センターに転送され、ウェブサイトで公開された
向井千秋氏らが撮影した映像は、リアルタイムで米ジョンソン宇宙センターに転送され、ウェブサイトで公開された



インターネット利用については、「地球の家族とは、電子メールでやりとりをしていました」と、グレン氏。まるで引き出しのようなベッドの場面が映し出されると、「なかなか居心地がよかった」とコメントし、会場に笑いが起こった。

人類の発展は誰のものか

「人類は加速をつけて進化しています。ここ100年の人類の発展は、実に目覚ましいものがあります。そして、今、ウェブは世界を1つにしようとしています。本当にそうなのでしょうか?」と、グレン氏は疑問を呈した。

「実は、世界中の半分の人間は、これまで一度も電話を受けたことがありません。しかし、人類の遺産は、すべての人間が受けるべきものなのです」--。グレン氏の話が終わると、再び大きな拍手が起こった。それは、グレン氏の姿が会場から消えるまで、なかなか止みそうにはなかった。

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