Mindstormsとは'98年秋にLEGO社とMIT(マサチューセッツ州工科大)が共同開発したもので、“RCX”と呼ばれるプログラム可能なマイクロコンピュータを搭載したブロックと既存のレゴ・ブロックを組み合わせ、パソコンでプログラミングをし動きを制御して楽しむインテリジェント・トイである。日本では正式な発売はしていないが、ネットショップや秋葉原の並行輸入店などで英語版が販売され人気となっている。インターネット上でもオフィシャルページのほか、個人ページでも作成例や制作のコツ、開発言語までの情報を集めることができる。
今回新たに発売されるのは『RoboSports』、『Extreme Creatures』に続く3つ目の拡張版で、製品には約150個のレゴ・ブロックとWindows
98用のCD-ROMソフトが入っている。ただしモーターやセンサー類は含まれていない。これまでの拡張セットと同様に、使用するには本体セットである『9749
Robotics Invention System 1.5』または『9719 Robotics Invention System 1.0』が必要となる。ブロック状のコマンドモジュールによるプログラミングや作成したプログラムの転送方法などはこれまで同じだ。
拡張セットのパッケージ。約150個のブロックとCD-ROMソフト(Windows98用)、マニュアルなどが含まれている |
ミッションはMars Surveyorの作成
Exploration MarsではNASAで開発されている“Mars Surveyor”のような惑星探査ロボットを作成する。まず、同梱されているCD-ROMソフトをインストールすると、すでにハードディスクにインストールされているRobotics Invention Systemソフトウェアの“Challenge”にある“Exploration Mars”が起動できるようになる。これを起動すると画面は5つのミッションを選択できる画面となる。後述するがここでPCビデオカメラがパソコンに接続されていれば、ソフトウェアが認識して「CAMERA MISSION」も選択できる。Exploration Marsの起動画面。最初は「PIONEER」ミッションからスタートする。パソコンにPCビデオカメラが接続されていないと「CAMERA MISSIONS」は利用できない |
ブロックは製品に付属している「CONSTRUCTOPEDIA」を参考にして組み立てる。マニュアルにはRCXを搭載した基本モデル「ROVER」、ROVERのベース基地となる「MARS
LANDER」、物を挟んで運ぶメカニズムを持った「Robotic Arm」、アームやビデオカメラを回転させる台の「Turntable」などの組み立て方が解説されている。最初はこれらを参考にし、基本セットに入っているタッチセンサーやライトセンサーなどを工夫しながら取り付けていけばいい。
各ミッションはブロックの組立てから始まり、プログラムの作成、動作テスト、そしてそのテスト結果の入力(ログブックの作成)という順序で進めていく。1つのミッションが終了したら次のミッションに進めるようになる。
マニュアルに解説してあった「Turntable」と「Robotic Arm」の作成例 |
ベース基地の「MARS LANDER」。創造力を働かせて組み立てていくのがレゴ・ブロックの魅力だ |
RCXを遠隔操作する
今回新しく付け加えれたのがパソコンの画面からRCXを直接触れずに遠隔操作できる機能だ。これは「MISSION CONTROL画面」で行なう。これまでRCXには5つのプログラムを内蔵することができたが(同時に実行できるのは1つだけ)、プログラムの切り替えはRCX上にあるボタンを押して切り替えなくてはならなかった。ところが今回の拡張セットではMISSION CONTROL画面で、RCXに触れることなく画面のボタンをクリックして実行プログラムを切り替えることができる。また、タッチセンサーやライトセンサーなどの状態もここで確認できる。さらに前後左右方向にRCXを自由にナビゲーションすることも可能になった。動力(モーター)の強さや1回あたりの作動時間などのより細かい設定もここで行なえる。これらの指令はプログラムのダウンロードに使われる赤外線トランスミッター(本体セットに入っている)を通じてRCXに転送されるが、条件さえ整えば赤外線トランスミッターとRCX間で約20メートルの通信が可能であり、より広いスペースでMindstormsを楽しむことができるようになった。RCXを遠隔操作をする画面。左側の列はプログラムのプログラムのダウンロードや実行ボタン、真ん中の列はRCXのナビゲーション、右側の列にはタイマーと各センサーのモニタリング |
市販のPCビデオカメラを接続してみる
先に少し触れたが、Exploration MarsではパソコンにPCビデオカメラを接続するとさらに面白さが倍増する。レゴジャパンによると年内にカメラを別売するという計画もあるらしい。ただし現時点ではどのような規格のカメラが準備されているのか不明だ。マニュアルにはカメラを搭載した例が掲載されているが、これを見るかぎりコンパクトなサイズのカメラになると思われる。そこで、市販されている「WEBCAN 3」(クリエイティブメディア社製:USBバージョン)を購入しパソコンに接続しROVERにくくりつけてみた(少し強引だが)。WEBCAN 3は幅がRCXとほぼ同じサイズでありRCXの上に載せやすいため、パーツを使って簡単に固定できた。
市販のカメラをRCXに載せてパーツを使って固定してみた。前部にはタッチセンサーを2つ使ったバンパーを搭載。タッチセンサーが押されると方向を変えるようにプログラムされている |
カメラを接続すると、MISSION CONTROL画面に“IMAGE DISPLAY”という小さいな画面が現われる。カメラの明るさ、コントラスト、解像度など細かい設定も調整可能だ。カメラを接続したミッションでは、カメラから静止画をキャプチャーして保存したり、複数枚の静止画からパノラマ画像を作成したりする。また、RCXを遠隔操作をしながらカメラからの映像を確認したり、ROVERにマグネットを取り付けて部屋を探査させて楽しむことも可能だ(パソコンとカメラを接続しているケーブルの長さが問題になってくるだろうが)。ただし、今回WEBCAN
3をパソコン(SONY VAIO PCV-R61)に接続して試してみたところでは、BMP形式でキャプチャーした画像を保存することはできたが、CAPTUREボタンをクリックして出てくるダイアログのなかの「PAN
LEFT」「PAN CENTER」「PAN RIGHT」と「ID CARD」といったボタンは機能しなかった。原因は確認できなかったがLEGO社から発売される予定のカメラであれば機能するのもしれない。いずれにせよ、このように画面でカメラからの画像を確認しながらRCXを遠隔操作していると、NASAの惑星探査の気分を味わえる。もしPCビデオカメラを持っていれば接続してみて楽しんでみてほしい。
PCビデオカメラをパソコンに接続したときの画面。画面の真ん中にECXに搭載されたカメラから取り込まれた映像(書類が散らかった机の上の映像)が現われる |
以上、拡張セットについてレポートしてきたが製品の本当の魅力を発揮するにはLEGO社の純正カメラが必要だろう。価格は既存の拡張セットの8000円に対してExploration
Marsは9000円。モーターや光ファイバーユニットといった特殊なパーツも含まれておらず正直言うと割高感がある。しかし、遠隔操作などソフトウェアは強化され、Mindstormsをより楽しむ環境は提供されていると言えるだろう。
今回のExploration Marsの登場でLEGO Mindstormsは当初予定されていた拡張セットがすべて揃ったことになる。昨年秋に本体セットのバージョンも1.0から1.5にアップしたが、今後Mindstormsシリーズがどのように進化していくのか、さらに新しい拡張版が用意されるのかも注目していきたい。