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ソニー、企業向け広帯域常時接続サービスを7月に開始――無線アクセス利用し最大1.5Mbpsを月額15万円で

2000年04月11日 00時00分更新

文● 編集部 小林伸也

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ソニー(株)は11日、WLL(Wireless Access Loop:加入者系無線アクセスシステム)を利用した企業向け広帯域インターネットサービスを7月に開始すると発表し、都内で記者発表を行なった。他社の半額程度という月額15万円で、最大1.5Mbpsの常時接続環境を提供するインフラに加え、動画配信サービスやネット企業支援サービスなど、マルチメディアとネット事業に蓄積を持つソニーの強みを活かしたアプリケーションと組み合わせて提供する。当初は東京や大阪など6都市でスタートし、年内には全国の主要都市に拡大する方針。

WLLで使用するアンテナ WLLで使用するアンテナ



新サービスの名称は“bit-drive(ビットドライブ)”。主に中小企業とSOHO事業者を対象に、広帯域な常時接続環境を提供する。ソニーの中継ネットワーク網と基地局を光ファイバーで結び、加入者は22/26GHz帯を利用した無線通信でインターネットにアクセスする。通信速度は最大1.5Mbpsのベストエフォート型。「最大156Mbpsの伝送が可能な1基地局に対し100ユーザー程度の利用を想定しているため、ほぼ最大速度で利用できる」(同社)という。

データ伝送速度は当初は1.5Mbpsのみだが、1基地局当たりのユーザー数を減らしてさらに高速な接続が可能なサービスを年内にも用意する予定としている。

新開発のネットワークサーバーも用意

通信インフラサービスは、月額15万円で1.5Mbpsの常時接続環境を提供する“ブロードアクセス(仮称)”が基本。これに同社が開発したネットワークサーバー『Digital Gate』のレンタル・保守管理費用込みで月額18万円の“ブロードアクセスプラス(同)”も用意される。

また東京23区内向けに、複数の事業所間で最大1.5Mbpsのデータ通信が可能なサービス“シティアクセス(同)”を月額7万円で提供する。シティアクセスでは事業所間のデータ通信のみで、インターネット接続は従量制の別料金となる。

またマンションや団地など集合住宅向けに提供する接続サービス“コミュニティサービス(同)”も行なう。最大1.5Mbpsの回線を共有する方式で居住者に常時接続環境を提供するもので、デベロッパーやソニーコミュニケーションネットワーク(株)(SCN)などのISP(Internet Service Provider)らと協力する。1世帯当たりの料金は回線使用料と接続料合わせて月額5000円程度を予定している。

bit-driveのためにソニーが開発したネットワークサーバー『Digital Gate』。Celeron-500MHz、15GBのHDDなどを搭載し、OSはLinuxを採用している。背面のスロットにメモリースティックを差し込むことで自動セットアップが可能という。レンタル専用 bit-driveのためにソニーが開発したネットワークサーバー『Digital Gate』。Celeron-500MHz、15GBのHDDなどを搭載し、OSはLinuxを採用している。背面のスロットにメモリースティックを差し込むことで自動セットアップが可能という。レンタル専用



さらに企業のネット関連事業を支援する“ビジネスクリエーションプラットフォーム”提供サービスも同時に開始する。これは、多地点間を結ぶIPテレビ会議システムや動画配信サービスが利用できる“bit-port”、コンテンツクリエーターの仲介やソニーが持つ映像素材を提供する“bit-promotion”、ネット上のバーチャル見本市“bit-messe”の3サービスを予定しており、認証/課金やホスティング、ハウジングなどオプションサービスを要素技術として活用する。また接続サービスとDigital Gateレンタル・保守費用、ウェブホスティングなどをパッケージにした“ドットコムサポートパック”を月額25万円で提供する。

今後のスケジュールは、5月に実験サービスを開始し、本格的なサービスは7月から。当初のサービスエリアは東京と横浜、名古屋、大阪、京都、福岡の6都市、計29基地局。年内に北海道、東北、信越、北陸、中国、四国、沖縄とほぼ全国の主要都市に拡大、基地局は2000年度内に合計100局まで増設する方針。初年度は1000ユーザー、2005年度には10万ユーザーの獲得を目指す。

数年後にはコンシューマー向けサービスも

同社は昨年6月、第一種電気通信事業者の認可を受け、WLLを利用した通信事業への参入を表明していた。同社グループのインターネットサービス事業では、SCNのSo-netがあるが、「コンシューマー向けと企業向けでは、セキュリティー面などで要求が異なる」(ソニー執行役員の堀籠俊生氏)として、bit-driveは企業向け、So-netはコンシューマー向けと位置付け、当面は両者を切り分けて展開していく。

だが「数年後には安価なWLL設備がコンシューマーに普及する可能性もある」(堀籠氏)と見ており、将来のコンシューマー向けサービス開始も視野に入れている。

ビデオでメッセージを寄せたソニー社長の出井伸之氏 ビデオでメッセージを寄せたソニー社長の出井伸之氏



記者発表では、ソニー社長の出井伸之氏がビデオでメッセージを寄せた。出井氏は「コンシューマー向け市場よりB to B(企業間取引)市場のほうがより大きな広がりを持っている。ソニーが安価なサービスを開始することで、B to Bインターネットが加速するだろう」と語り、まずは企業向け広帯域サービスの提供で国内インターネット環境の広帯域化を促進したい考えを示した。

ソニー執行役員で上席常務の堀籠俊生氏 ソニー執行役員で上席常務の堀籠俊生氏



また堀籠氏は、「サービスの軸足はインフラとアプリケーションの2つに置く。ブロードバンド化で動画配信などが本格化すれば、まさにソニーが力を発揮できる環境になる。映像機器やテクノロジーなどソニーの得意分野を活かし、競争力のある事業を展開していきたい」と意気込みを語った。

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