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【INTERVIEW】エム研、エムビートの井上彰社長--インターネット配信、音楽の次は映像

2000年04月10日 00時00分更新

文● 編集部 伊藤咲子

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デジタルコンテンツ配信事業を行なう(株)エムビート・ドット・コム(以下、エムビート)は10日、インディーズ系1000曲の有料音楽データ配信を5月に開始すると発表した。同社は、電子透かし技術“LUCENTMARK(ルーセントマーク)”で知られる(株)エム研の全額出資による子会社。

今回ascii24編集部では、この2社の社長を兼任する、井上彰氏にインタビュー。バックエンドとフロントエンドの企業を抱え、動きの激しいインターネット配信市場の中でどのように舵を取るのか、今後の戦略を聞いた。

井上彰社長。この日は作業服姿。「エム研の事業は、新しい技術を研究していくことです。売上規模がどんどん増えていくという経営は、していません。今まで誰も作ったことのない、道を切り開くようなビジネスをやる会社です」井上彰社長。この日は作業服姿。「エム研の事業は、新しい技術を研究していくことです。売上規模がどんどん増えていくという経営は、していません。今まで誰も作ったことのない、道を切り開くようなビジネスをやる会社です」



バックエンドのエム研、フロントエンドのエムビート

--NTTグループがレコード会社数社と始める音楽配信実験“Arcstar MUSIC”*で、エム研が開発した著作権認証/課金/決済システム“MuSIC”を採用するとあった。エム研とエムビートの事業的な棲み別けはどのようになっているのか

「音楽配信サービス以外、“MuSIC”システムなどは、エム研が売っています」

「音楽データ配信を考えるレコード会社やミュージシャンに対しては、(1)エムビートがデータ販売のための“場”を提供する、(2)エム研がディストリビューションのためのシステムを提供する、といった2つのアプローチができるでしょう」

*(株)ワーナーミュージック・ジャパンや日本クラウン(株)など大手レコード会社を中心に9社が参画。各レコード会社は、自社のウェブサイトにおいて、試聴音源の提供によるCDの販売促進及び楽曲等のダウンロード販売を行なう。そこで採用するプラットフォーム技術の1つとして、“MuSIC”の名前が挙がっている。サービスは4月19日より

--自社でディストリビューションをおさえたいという会社が多い?

「音楽レーベルの中には、自前(のサイト)で配信したいという方が多いです。また、個人単位でそのようなことを行ないたいという、ミュージシャンの方もいます。そのような方に関しては、エム研がシステム“MuSIC”を販売していきます」

「“MuSIC”は、積み木みたいなものでして、課金の部分、著作権保護の部分--と、部分的に提供することが可能です」

「全システムの中で一番肝心なのは、著作権の不正利用監視の部分です。販売するコンテンツに対し、IDコードとともに電子透かし“LUCENTMARK”を入れ、このIDをもとに、探索ロボットで不正使用を監視するというものです。我々の元に、データの全ログ情報が全て集まってくるわけですが、将来的にこうした管理機関については、公共的なところに移していきたいと考えています」

路上のミュージシャンにも営業活動--エムビート

一方、エムビートの音楽配信サービスについて。現在、エムビートのサイトで販売されている楽曲は、『All You Need Is Love』などビートルズのカラオケMIDIデータ(無料)のみ。5月より、このメニューを拡充し、有料の音楽配信をスタートするという。

・販売データ:種ともこなどを擁する(株)マグネットの“MAGNET RECORDS”など、インディーズ系の楽曲1000曲
・音楽データ圧縮形式:MIDI/TwinVQ/AAC/MP3。スタート時は、TwinVQが中心
・価格:100~200円程度
・決済手段:クレジットカード決済と、プリペイド式電子マネー

価格やデータ圧縮方式は、ミュージシャン本人や原盤権を持っている団体が決定する。パッケージCDの通信販売も行なう予定。

--楽曲の単価が低いと、カード会社に支払う手数料やサイト運営費を引くと、配信業者の手元に残る分というのは極めて小額では?

「原盤権者とカード会社にお支払いした残り、1割~2割が配信事業者である我々に入ります」

「我々は、レコード店で売っていない楽曲を中心に揃えたいと思っています。もちろん、最初何年間はビジネスとして成り立たないとは思います。しかし、マイナーな楽曲でも、全世界を見ると1000人、2000人熱狂的なファンがいる。そういうある種のコアなニーズに応え、楽曲を集めて販売していくことが、我々の事業でのポイントとなるでしょう。サイトのテキストは日本語/英語のバイリンガル表示にします」

「実際に、街頭で演奏しているミュージシャンに名刺を渡したこともあります。“エムビート出身のミュージシャン”が出ると、一番嬉しいですね」

「不正コピーできるほうが使い勝手が良い」

--ダウンロードサイトのオープン時に発表した、販売するコンテンツをソニー(株)の『メモリースティックウォークマン』に対応させるという計画は?

「ここで販売する楽曲データに対し、OpenMG*に対応したATRAC 3データに変換するためのソフトを用意したいと思います。ソニー側と検討を行なっている段階です」

*インターネットからダウンロードした音楽や、音楽CDのコンテンツを、パソコン上で管理する著作権保護技術。音楽コンテンツをHDDに暗号化して記録し、そのパソコン上で音楽の再生が行なえる。MGメモリースティックなどMagicGate対応機器および記録メディアにコンテンツを記録できる

--著作権保護の機能を充実させた携帯型プレーヤーに対し、値段や操作性の問題などから、抵抗を感じる消費者も多い。エム研で、著作権保護技術を開発する立場から、どのように考えるか

「クリエーターやコンテンツ流通ビジネス従事者にとって、著作権の保護は重要なポイントとなります。ですが、消費者から見ると、不正コピーできるほうが使い勝手が良いわけです」

「例えばSDMIで、不正コピー防止システムの標準化を行なうにしても、その値段や手間のコストを消費者側にかぶせたら、絶対にはやらない。コンテンツホルダー側がある程度かぶって、コンシューマーにもっと安い値段で、携帯型プレーヤーを売らなければならない。現状で受け入れられていないのは、当然でしょう」

音楽データの次は“ショートフィルム”--エムビート

--エムビートの事業として、音楽データなど、携帯電話向けにコンテンツを配信する予定はあるのか

「携帯向けのワイドバンド通信は“W-CDMA”に、世界的に統一されていく動きですので、これに向けて音楽だけでなく、動画像をストリームで配信しようと考えています。2001年3月の開始予定です」

--ここで言う動画像とは何を指すか

「“ショートフィルム”といって5~6分、長くても30分くらいの実写やアニメの映画です。これらを配給する権利を持つ、海外の企業と共同で立ち上げる予定です」

「例えば、携帯電話を使ったメールですが、あんな面倒な操作で誰がするかと思われていました。ところが現在、電車の中で皆ピッピピッピやっています。あの姿を見ていると、携帯電話の使い方はどんどん進化しているなと感じます。次世代の携帯電話は、カラーの液晶が主流になるでしょうし、液晶が大きいですし、通信速度も速いですし、動画像を見るには十分でしょう」

「例えば電車に乗っているときとか、相手としゃべるのは“うるさいからダメ”ですが、画像を見るぶんには静かですから。需要は多いと思います」

「音楽配信はパッケージ流通と並行して相互補完的に行なわれていくのでしょうが、携帯電話での動画配信は一気に爆発する可能性が高いと睨んでいます。従量制の通信コストがもっと安くなると良いのですが--」

最後に2社の株式上場の可能性について聞いたところ、「収益が上がった後でしょう」との答え。

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