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eマーケティングで勝つ3つの法則――BtoBインターネットマーケティングセミナーより

2000年04月10日 00時00分更新

文● 正月孝広 

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6日、大阪市と(財)大阪市都市型産業振興センター、ソフト産業プラザiMedio主催によるビジネスセミナーが開催された。会場は大阪市住之江区南港にあるWTC20FのMADOプレゼンルーム。

今回のセミナーは『BtoBインターネットマーケティングセミナー~インターネットでビジネスはどう変わる~』と題し、BtoBビジネスに特化した形で開催された。国内でも話題の中心を担う講師を招聘したこともあってか、定員200名のところ3倍の600名以上の応募があり、その関心の高さがうかがえた。

会場となったMADOの受付。多数の参加者でごったがえした会場となったMADOの受付。多数の参加者でごったがえした



WTC20Fのセミナー会場。当日は定員の3倍にのぼる600名もの応募があったWTC20Fのセミナー会場。当日は定員の3倍にのぼる600名もの応募があった



その講師は、昨年よりブームになっている『パーミション・マーケティング』の訳者、Palmtree Inc. CEO、阪本啓一氏。BtoBビジネスモデルの構築に成功した(株)ニーツ代表取締役社長、朝沼辰郎氏。国内インターネットビジネスの頂点に立つ、ヤフー(株)取締役、有馬誠氏の3名である。

インターネットは“下駄”のように近隣を散策するツール

“eマーケティングで勝つ~お祭り型市場の出現~”と題し、Palmtree Inc. CEO、阪本啓一氏のセッションがまず行なわれた。eマーケティングで勝つための結論は“下駄”を設計しよう。“成功のトライポッド”を築こう。“KTB”を押さえよう。という3つが大切であるという。では具体的にその3項目を見ていく。

Palmtree Inc. CEO、阪本啓一氏Palmtree Inc. CEO、阪本啓一氏



パーミションマーケティングでは顧客にメッセージを正しく伝えて、理解し納得してもらうことが重要となる。そのためには、これまでのような画一的で一方的なマーケティングの手法では通用しない。相手に適切かつパーソナルなメッセージを届ける必要がある。インターネットは飛行機のようにどこまでも一気に飛んでいけるツールではなく、下駄のように近くを散策するようなものであるという。つまり“下駄”を設計しようとは、遠くまで行けないことを理解して、何をすべきか、またすべきでないかを見極めることをいう。

ターゲットの見極めの次はシステムの設計である。“成功のトライポッド”とはcontents(中身)、context(顧客との関係性)、delivery(運び方)である。この3つの柱のどれか1つが弱くてもeマーケティングは成功しない。

そして最終的に押さえるポイントが“KTB”である。“KTB”とはK:決済を押さえる、T:対価を決める、B:ブランドを築く、から来ている。Kの成功例としてi-modeを挙げた。利用者に電話代として違和感なく確実に決済できるシステムは、素晴らしいという。Tの対価とは、ビジネス評価と実際の収益とを結ぶ仕組みである。ネットビジネスの場合、一般の評価は良いがなかなか収益に結びつかない例が多いという。評価が良ければ収益も良いと漠然に考えるのではなく、具体的にその2つを結びつけるパイプを探らなくてはならない。B:はイメージではなく、信頼というブランドを築くことが大切であるという。

2000年4月19日に発売になる阪本氏の書籍。『パーミションマーケティングセミナー』会場で先行販売された2000年4月19日に発売になる阪本氏の書籍。『パーミションマーケティングセミナー』会場で先行販売された



阪本氏独自の言葉を多用しながら紹介された今回のセッション。パーミションマーケティングという哲学の中で、eマーケティングの方向性を示唆したものと言える。

貿易のINとOUTをつなぐ『INWF』

次に(株)ニーツ代表取締役社長、朝沼辰郎氏のセッションが行なわれた。タイトルは“インターネットで創造する貿易革命”。(株)ニーツでは『INWF』(インファ:InterNet World Factory)という貿易のINとOUTをつなぐウェブサイトを、構築・運営している。今回はそのBtoBに特化したビジネスモデルを紹介した。

ニーツの代表取締役社長、朝沼辰郎氏ニーツの代表取締役社長、朝沼辰郎氏



まず、地域価格差の現状が紹介された。当日配布された、ノベルティーボールペンとシャープペン。日本ではそれぞれ150円と50円の価格だか、生産現地ではなんと14円と4円だという。貿易には多くの中間業者を介しているので、流通・情報の複雑化、遅延が発生している。INWFはインターネットを活用し、この複雑な貿易の入口を出口を直接つなぐ画期的なシステムである。

まず入口では、各国の工場に直接現地スタッフが取材を行なっている。工場の所在地、窓口となる担当者、連絡先、製品のクオリティーなど地道だが正確かつ鮮度の高い情報を収集し、画像を含めデータベースを構築。出口となる日本の各企業は、INWFにアクセスし、取引先の詳細なデータと輸入にかかわる経費試算(4月中旬よりサービス開始予定)を得る。これにより、これまでのような、時間的、費用的不安材料を除けるようになる。

ウェブビジネスの要は“時間と情報”だと朝沼氏は強調した。言い古された流通革命という言葉だが、具体的なビジネスモデルを目の当たりにすると革命に触ったような実感がある。

1人当たりの広告費がネットでも2万円になれば、市場規模は1兆円に

最後に“ネット大国 Yahoo!JAPANの戦略”と題し、ヤフー(株)の取締役、有馬誠氏のセッションへと移った。'94年4月に米国でサービスが始まったYahoo!は、2年後の'96年4月に日本国内でのサービスが始まった。配布された市場分析の資料の中での注目点をいくつかご紹介する。

ヤフーの取締役、有馬誠氏ヤフーの取締役、有馬誠氏



インターネットの国内利用者数は1500万人前後と推測されているが、将来的には5000万人規模まで利用者が見込める。現在の広告メディアの価値として、テレビ、新聞、雑誌の市場規模を発行部数/普及率で割った、1人当たりの広告費は2万円強というのが現在の日本の状態だという。

しかしインターネット広告の場合、市場を利用者数で割った1人当たりの広告費は2000円にも満たない。まだ認識されていないのが現状である。今後、前記のように利用者数が増加し、インターネット広告が市民権を得て1人当たりの広告費が2万円規模まで拡大すると、実に1兆円にものぼる産業へ化けることも十分に考えられるという。

また、具体的な事業戦略として“インターネット業界における圧倒的No.1の維持”を挙げ、そのためには単なるポータル(玄関口)でなく、デスティネーション(目的地)を目指すという。またグローバル的な視野に立ち、タイムマシン経営の実践を強化していくという。米国での成功したビジネスモデルを時間的に遅延のある日本で展開していく方法である。

最後に、よく質問を受けるi-modeへの対応については「どのサービスから行なうかはまだ言えませんがやります」と有馬氏は述べた。しかし単にi-modeという選択ではなく、デバイスの多様化において多くの端末に対応していく中での1つであるとした。

BtoBはこれからのビジネスではなく、既にいくつもの成功事例がある。インターネットを利用した全く新しいサービスも直に立ち上がる。グローバルな視野での時間と情報は、これまで以上に重要なキーワードになっていくであろう。

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