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韓国のIT企業34社が来日--日韓ECサミット2000が開催

2000年04月10日 00時00分更新

文● 編集部 鹿毛正之

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東京・池袋のサンシャイン文化会館にて、“日韓ECサミット2000”が開催された。同サミットは、日本進出を予定する韓国のIT関連企業と、韓国への投資などを検討する日本企業の交流を目的として開かれたもの。韓国からは韓国インターネット企業協会に所属する企業など34社85名の関係者が来日し、日本側からはベンチャーキャピタルをはじめとする93社が出席した。

日韓ECサミットを主催したのは、日本側がアジア太平洋EC協会本部、韓国側が毎日経済新聞社。実際の運営は、日本側がNPO(非営利団体)のEC研究会、韓国側は同国を代表するインターネット企業である(株)ワァ コマースが主管として担当した。

日韓双方から政府関係者も出席した日韓ECサミット2000。韓国情報通信部のKim Dong-Sun次官が祝辞を述べた日韓双方から政府関係者も出席した日韓ECサミット2000。韓国情報通信部のKim Dong-Sun次官が祝辞を述べた



IT産業は経済の牽引力、政府関係者も出席

10日午前には、日韓双方から2人ずつのスピーカーが講演を行なうシンポジウムが開催された。韓国経済は'98年の経済危機を脱し、'99年には10パーセントを越す成長率を記録するなど、V字型の回復基調を見せている。その牽引力として注目されているのが、インターネット企業と呼ばれるITベンチャー企業だ。

今回のサミットはそのIT関連企業が主題とあって、日韓双方にて政府機関が後援を行なっている。シンポジウムでは冒頭、韓国情報通信部(郵政省に相当)のKim Dong-Sun次官が祝辞を述べ、韓国インターネット産業の現況を説明した。また、日本側からは通産省機械情報産業局の太田信一郎局長が挨拶に立ち、IT関連企業を中心に旺盛な設備投資と資金流入が行なわれている現状を説明した。

握手を交わす、通産省の太田局長(左)と韓国情報通信部の金次官握手を交わす、通産省の太田局長(左)と韓国情報通信部の金次官



日韓は“Non-PC”分野で高い競争力を期待できる--FrontLine.JPの藤元氏

日本側のトップバッターとして講演を行なったのは、(株)フロントライン・ドット・ジェーピーの代表取締役社長兼CEOを務める藤元健太郎氏。藤元氏は野村総研在職時代に、ショッピングモールの“サイバービジネスパーク”を設立した経験を持つ。

“日本型ECビジネスの発展と世界への貢献”と題した講演では、「米国一辺倒ではなく、アジアからも対抗してもらいたい」と、冒頭から日韓双方の関係者に檄を飛ばす発言が飛び出した。

フロントライン・ドット・ジェーピーの藤元CEO、「BSデジタルではBMLという言語を利用するため、放送とインターネットも接近する」フロントライン・ドット・ジェーピーの藤元CEO、「BSデジタルではBMLという言語を利用するため、放送とインターネットも接近する」



藤元氏によると、EC関連のショップサイトは日本に現在2万8000店舗ほど存在するが、ほとんどが小規模の上、黒字のサイトは数少ないという。また、ADSLが100万契約を突破した韓国に比べ、日本では高速回線が普及しておらず、インフラの面で問題があると指摘した。

その反面、iモードに代表される移動体通信で日本は世界をリードしており、モバイルコマースの分野で伸びが著しいと指摘。日本はほかにもゲーム機に強みを持ち、韓国も携帯電話の普及率が高いことから、いわゆる“Non-PC”の分野で日韓に世界的な競争力が期待できると藤元氏は強調した。

また藤元氏は、知的所有権の重要性を指摘。ビジネス特許で米国企業が先行しているとし、これに対抗するため、日韓で手を取り合ってイニシャチブを取っていくべきだと語って、講演を締めくくった。

2800万人がターゲットのモバイルインターネット--NTTドコモ山口氏

次に登場したのは、日本が世界をリードする“モバイルインターネット”分野を代表して、(株)NTTドコモでゲートウェイビジネス部のコンテンツ開拓課長を務める山口善輝氏が登壇。“広がるモバイルECの世界とiモードサービス”の題で講演を行なった。

山口氏はiモードの狙いとして「“インターネット”という言葉を知らなくても、インターネットを使ってもらう」ことが可能だと指摘。現在、インターネットユーザーの1割がiモードユーザーであるという数字を披露し、これが2000年度末には25パーセントに増える見通しだと紹介した。同社ではドコモユーザー2800万人、ひいては5000万人におよびであろう携帯電話ユーザーを、ターゲットとして想定しているという。

NTTドコモの山口氏、「4月10日現在で、iモードのユーザーは576万人。1日に1万人以上増加しています」NTTドコモの山口氏、「4月10日現在で、iモードのユーザーは576万人。1日に1万人以上増加しています」



山口氏によると、日本で1800万人と言われるインターネット人口のうち、自宅でパソコンを使って接続しているユーザーは500万人余りに過ぎないと、NTTドコモでは予測している。今後はコンテンツを拡充し、JavaのサブセットやMIDIのサブセットを利用できるようにすることで、プログラムを配信したりカラオケを楽しめるようにする仕組みを構築中だと語った。

また山口氏は、NTTドコモではあくまでプラットフォームを作ることに専念すると強調。他社にソフトを作ってもらうことでコンテンツの拡充を図るとし、今回のシンポジウムに参加した韓国企業に対しても、モバイルインターネット市場への参入を促した。

金融危機がインターネット企業には追い風に--MK Husdaq社のHwang Intai氏

韓国側の講演者として最初に登壇したのは、MK Husdaq社の代表取締役を務めるHwang Intai氏。MK Husdaq社は、毎日経済新聞社が主催する人材リクルートサイトの“ハロージョブ”と、ネット教育サイトの“ハローアカデミー”などを運営している。

Hwang氏は、毎日経済新聞社の論説委員も務めており、韓国経済に精通した人物だ。そのHwang氏は、“韓国経済とインターネット”という内容の講演を行なった。

Hwang氏によると、ソウル市郊外の高級住宅街にインターネット企業が集まっている地区があるという。そこでは'99年に税収が25パーセント上昇し、今年はさらに50パーセントの上昇が見込まれるなど、IT産業の隆盛振りが税収という形で現われているとのことだ。

MK Husdaq社のHwang Intai氏、「韓国の携帯電話人口は世界で5番目、インターネット人口は6番目で、人口比で考えると非常に高い」MK Husdaq社のHwang Intai氏、「韓国の携帯電話人口は世界で5番目、インターネット人口は6番目で、人口比で考えると非常に高い」



現在、韓国には5500社を越すインターネット企業があり、韓国の店頭株式市場であるコスダック(KOSDAQ)に上場を果たして資金調達を行なう企業も増えている。また、ベンチャーキャピタルも増加しており、約100社が総計5兆ウォン(約4800億円)の資金が投じていると、Hwang氏は報告した。

このようにKOSDAQ市場が盛りあがっていることから株式投資も過熱しており、実に株取引の50パーセントがインターネット経由で行なわれるなど、ある意味で「インターネットビジネスでは日本よりも先行している」(Hwang氏)とのことだ。

このインターネットビジネスブームの要因として、Hwang氏は意外にも、同国の金融危機が追い風になったという分析を見せた。俗にIMF危機と呼ばれた金融危機の中、政府は利下げ誘導を行ない、金利が10パーセント以下まで下落。これによりベンチャー企業の資金調達が容易になったという。また、不動産市場の安定化が図られたため、ダブついた資金がベンチャー企業への投資という形で流入したのも、IT産業にとっては幸運だったようだ。

ほかにも重要な点としてHwang氏は、大手財閥などの経営危機により、優秀な人材が大企業からベンチャー企業に流出したことを指摘した。現在では大手財閥系企業もインターネット分野に参入しており、隆盛な同分野において、日韓における手の取り合いが重要だと指摘した。

日韓が組むことで中国系企業に対抗すべき--PAXNet社のPark Changki氏

最後に講演を行なったのは、PAXNet社の代表取締役を務めるPark Changki氏。同社は証券・金融市場の情報サービスサイトを展開しており、開設から1年足らずで1日あたり2000万ページビュー(PV)という驚異的な人気を誇っているという。ちなみに韓国で最も人気のあるサイトはYahoo! Koreaで、1日3400万PVだということからも、韓国におけるネット証券取引の過熱振りが理解できよう。

同社では中国、台湾、シンガポールで合弁を進めており、Park氏は今回の来日における目的を、日本でPAXNetを共同運営できるパートナー探しであると明言。すでに大阪のネット関連企業と提携を果たすなど、日本進出に積極的な姿勢をアピールした。

PAXNet社のPark Changki氏、「中国は国土の広さから考えて、モバイルインターネットが普及するはず。この分野で日韓が手を結んで進出すべき」PAXNet社のPark Changki氏、「中国は国土の広さから考えて、モバイルインターネットが普及するはず。この分野で日韓が手を結んで進出すべき」



ここでPark氏はシンガポールでのエピソードを紹介。シンガポールで開催された交流会では出席者の半数が欧米人、残り半数が中国系で、英語で交流会が進む中、中国系ベンチャー企業の動きが活発だったという。

それを踏まえてPark氏は、インターネットが“ネットワーク”である以上、その利用人口がネットの価値を左右すると語り、世界最大の人口を擁する中国がインターネット分野で躍進する可能性を示唆。現状では先行している日本と韓国が、両国の技術を結びつけたうえで中国に進出すべきだと強調した。

このほかPark氏は、韓国で“PCルーム”と呼ばれるインターネットカフェが大流行していると紹介。韓国全土に約1万5000店舗のPCルームが普及しているとのことで、インターネットに高速回線で接続されたパソコンが10数台用意されているという。同国ではADSLなどが普及していることから広帯域を必要とするリッチコンテンツが発展しており、オンラインゲームも人気があるという。

Park氏は、このような高速回線技術で一日の長がある韓国と、モバイルインターネットで先行する日本が組むことで、米国や中国にインターネット分野で伍していけると強調した。

日韓両国がお互いに熱い期待を

今回のシンポジウムには、日本側から12社のベンチャーキャピタルが参加するなど、韓国のインターネット企業に対する日本側の熱い期待が会場からは感じられた。特別協力企業として日本オラクルやIBM・アジアパシフィックなどが名を連ねており、大企業からベンチャー企業まで、韓国ベンチャーに期待する日本企業は少なくない。

韓国側でも、人口4000万人と市場が限られている韓国から飛び出し、日本市場への進出を希望する企業が多い。言葉の壁や文化の違いなど越えるべき点は少なくないが、交流という意味では日韓の近さは大きなメリットでもある。また、会場では韓国企業の関係者同士が名刺交換を活発に行なうなど、インターネット企業が一同に会する意義は小さくないようだ。

両国の政府関係者が出席し、韓国からテレビ局の取材も入るなど、今回の日韓ECサミットは官民あげての一大イベントなった。これまで韓国のインターネットシーンが系統だって紹介されることは少なく、IT分野の面で韓国は近くて遠い国だった。今回のイベントを機に、改めて韓国企業に目を向ける日本企業が増えることは間違いないだろう。

今回のサミットで司会を務めた、EC研究会の土屋憲太郎代表。自ら韓国を訪問し、有望な企業をascii24のレポート記事などで紹介している今回のサミットで司会を務めた、EC研究会の土屋憲太郎代表。自ら韓国を訪問し、有望な企業をascii24のレポート記事などで紹介している

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