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日本のEC普及には通信料金の低廉化と官民挙げた取り組みが必要――EIAJ、調査結果を報告

2000年04月07日 00時00分更新

文● 編集部 小林伸也

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(社)日本電子機械工業会(EIAJ)は7日、講演会“電子商取引関連電子機器産業の将来動向”を都内で開いた。米国と比べ成長に伸び悩む日本経済の構造的な課題を指摘する一方、iモードに代表される日本独自のECも拡大しつつある現状を分析。EC普及に向け、通信料金の低額化やベンチャー育成など10項目の提言を行なっている。またEC関連機器についての需要予測も行ない、2000年の2兆7700億円に対し、2010年には8兆1000億円と3倍弱に拡大するとの予測を発表した。

講演する白井均氏 講演する白井均氏



講演会は、EIAJのEC調査委員会が'99年度事業として実施した調査・分析の結果を報告するもの。調査に当たった(株)日立総合計画研究所の主管研究員、白井均氏が発表を行なった。

構造不況脱出はECがカギ

調査報告ではまず、空前の好景気が続く米国経済と停滞から抜けきれない日本との比較を行ない、日本経済の構造的な課題を指摘した。米国は'90年代から戦後最長の好景気にわいているが、「これは何らかの構造的な変化が起こったと考えざるをえない」(白井氏)。政府が国家戦略に基づき情報通信産業を積極的に育成する政策をとった点や、民間においては重厚長大産業からITへ投資先を転換、さらにBPR(Business Process Reengineering)により業務刷新を図るなど、官民挙げてIT関連技術を経済活動に取り入れ、産業や雇用の構造を変化させてきたという。

これに対し日本では、政府は従来型の公共投資を繰り返すことで景気低迷のてこ入れを図ったが、民需の低迷は改善せず、結果として巨額の供給過剰を抱え込んでしまった。さらに設備の生産性低下や高い労働コスト、効率化が進まない行政機構などが要因となり、構造的な長期不況から抜け出せない状況が続く。だが調査報告では、「ECが普及すれば民間需要も増大し、IT投資も促進される。構造的課題を克服し、競争力回復につなげられる可能性はある」として、ECが停滞する経済への処方せんになりうるとの見方を示した。

現状では、日本でもパソコンや書籍、CD、自動車などのオンラインショッピングや、株取引などで普及の兆しが見えている。さらに携帯電話によるインターネット接続サービスでは世界でも主導的な位置を占めている。さらに日本の“社会インフラ”ともいえるコンビニエンスストアを拠点としたECも立ち上がりつつある。両者は日本独自のECインフラとして、今後も大きな役割を果たすと見られる。

課題は通信料金の低額化

だが課題も山積みだ。まず通信料金の内外格差。日米では通林料金が平均で3倍以上の開きがあるとされ、日本の通信料金の高さはインターネット普及の阻害要因となっている。また教育機関におけるインターネット接続環境が米国に比べて低いなど、情報リテラシーの向上も必要になる。ECの主役となるベンチャー企業を育成する環境もようやく整備が始まったばかりだ。さらに個人情報の保護や不正アクセスの防止、消費者保護など国際的に共通な課題も残っている。

そこで調査報告では、(1)インフラ整備の促進と通信料金の低廉化、(2)安心してECに参加できる法整備、(3)電子政府実現で官による民間のリード、(4)税制改革などによるベンチャー企業の育成――など10項目にわたる提言を行なって報告を締めくくっている。

またECに利用されるパソコンやモバイル情報端末などの関連電子機器について、2010年までの需要予測結果も発表した。これによると、2000年の総需要は2兆7723億円だが、年平均17.1パーセントの割合で増加を続け、2010年には8兆1000億円と約3倍に達する見込み。米国についての予測も同時に行ない、2010年の総需要は日本の2倍に当たる1670億ドル(約17兆5400億円)、年平均伸び率は11.5パーセントとした。

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