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【秋葉原TV 2 Vol.5】あの懐かしいパーソナルコンピューター“シンクレア”を使ったパフォーマンス! ノスタルジックな未来を演出した“新しい未来”

2000年03月28日 00時00分更新

文● 千葉英寿

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16日よりスタートした、世界最大の電気街・秋葉原を舞台としたビデオインスタレーション“秋葉原TV 2”。会期中はアーティストによるパフォーマンスなど、さまざまなスペシャルイベントが行なわれている。最終週を迎えた26日には、アレスデール・ダンカン氏(UK)によるミニライブパフォーマンス“The New Future II”と、クリスティン・ルーカス氏(USA)発案による街頭パフォーマンス“simulcast Mobile Kit #1”の2つのユニークなパフォーマンスが行なわれた。

ユーモラスでどこかノスタルジックな“過去に見た未来の夢”

今回、新キャラクターのヤクザアーティスト、“轟四郎”を登場させたロンドンのアーティスト、アレスデール・ダンカン氏は、昨年の秋葉原TVでは、過去のテクノロジーを駆使して、ちょっとノスタルジックな未来を演出した“新しい未来”を出品した。

SA-1で演奏するアレスデール・ダンカン氏。後ろのテレビに映っているのも氏の作品SA-1で演奏するアレスデール・ダンカン氏。後ろのテレビに映っているのも氏の作品



この“新しい未来”は、英国のパーソナルコンピューター“シンクレア・ZXスペクトラム48K”(*1)を使って制作したもの。脱力系のティファナサウンドに乗せて、カラフルなブロックが画面上を行き来する、初期のころのテレビゲームを思い起こさせるようなキュートなアニメーション作品だった。

ダンカン氏はこのSinclair The ZX Spectrumを使って作品を制作している
ダンカン氏はこのSinclair The ZX Spectrumを使って作品を制作している



注(*1): Sinclair The ZX Spectrum。英シンクレア社が'82年に発売したパーソナルコンピューター。本体とキーボード一体型のもので、ZX81のカラーモデル。搭載CPUは8ビットのCPU、ザイログ社のZ80だ。後ろに見えるINTERFACE1という拡張スロットにL型のインターフェースユニットを装着できる。キーボードはゴム製で当時はあまり評判は芳しくなかったらしいが、次機種はキーボードがプラスチックになってデザインも一新した

今回、秋葉原TVのために来日したダンカン氏(*2)は、ビデオ作品だけではなく、テーブルトーク“powow 21”に出席した。さらに26日は、たくさんの買い物客でにぎわう日曜日の昼下がりに、秋葉原電気街の一角にある西川無線DUTY FREE SHOPの店頭で、スペシャルゲストの眞島竜男氏を迎えて、ライブパフォーマンスを行なった。

パフォーマンスの中身は、“シンクレア・ZXスペクトラム48K”で作成したカラーロックとストライプが画面上を行き来するビデオ作品をモニターに写し出し、その前でカシオの“SA-1ミニキーボード”を使って、即興で“ファンクトラック”を演奏する、というもの。画面には、テレビの放映時間前に映し出されるカラー調整画面にも似た映像が展開される。

注(*2): '93年ロンドンのゴールドスミスカレッジ・ファインアートを卒業。去年の秋葉原TVでは、“美人丸”と“憩いの国”という2作を出品している。

電気店の店頭で突然のライブ。まさにパフォーマンス

ダンカン氏がまさに普通の電気屋さんの店頭に陣取り、ビデオ作品を後ろのテレビに映し出し、スタンバイしたころには、店頭には人垣ができてしまい、一時、通行できないほどに見物客が膨れあがった。

しかし、ダンカン氏はそんな状況は意に介さず、突然なんの前触れもなく、“SA-1ミニキーボード”を手にし、演奏を開始した。

キーまではミニサイズのSA-1
キーまではミニサイズのSA-1



演奏といっても、メロディラインらしきものは存在しない。眞島氏がラジカセにつないだミニマイクを通じて奏でる“口笛(!)”とのアドリブで演奏は続けられた。その眞島氏は“ゲームボーイ・カラー”を片手に持って、そのゲーム(どうやらポケモン系のものらしい)まじめにやりながら、口笛を吹いているのだ。

ライブパフォーマンスは実際にお客さんが出入りする店先で行なわれた。右が“口笛”で演奏する眞島竜男氏
ライブパフォーマンスは実際にお客さんが出入りする店先で行なわれた。右が“口笛”で演奏する眞島竜男氏



このような一種異様だが、どこか可笑しげなパフォーマンスがひとしきり続くと、突然、スタッフの手にした“目覚まし時計”がけたたましく鳴り響き、パフォーマンスは終了した。残念ながら、この“目覚まし時計”もパフォーマンスの一部なのかは、確認することができなかった。

この後、当初の予定にはなかった追加のミニライブパフォーマンスが4時すぎから、ギャラリー/インフォメーションセンターがあるアキバハウス前のベンチで行なわれた。

アキバハウス前のライブパフォーマンス。ベンチに座っての演奏は、本来なら一体何をやっているのか、普通にベンチに座っているのと見分けが付かないだろう
アキバハウス前のライブパフォーマンス。ベンチに座っての演奏は、本来なら一体何をやっているのか、普通にベンチに座っているのと見分けが付かないだろう



眞島氏は、アキバハウスでのパフォーマンスではラジカセではなく、おもちゃのラジカセを使って演奏した
眞島氏は、アキバハウスでのパフォーマンスではラジカセではなく、おもちゃのラジカセを使って演奏した



今度はなんの告知もなかった。そのため、当初はギャラリーへの来場者が中心だった。しかし、周囲のパソコンショップで買い物をしている通行人がひとりふたりと立ち止まり、また瞬く間に人垣ができてしまった。その後、寒風吹きすさぶ中、ふたりによる演奏は続き、寒さで見物人がいなくなるまで、続けられた。

サイバーなサイマルキャストも同時進行で街頭パフォーマンス

時を同じくして、秋葉原の駅前にはアンテナ付きヘルメットにオレンジのツナギという不思議な出で立ちの3人組が現われた。彼女たちは、ニューヨークのアーティスト、クリスティン・ルーカス氏が差し向けた“サイマルキャスターズ”だ。このサイマルキャスターズが、小さなカプセルに入ったポータブルなキット“Simulcast Mobile Kit#1(サイマルキャスト・モバイルキット)”を秋葉原を行く人々に配る、という街頭パフォーマンスだ。  

これが問題のサイマルキャスト・モバイルキット。大きめのガチャガチャカプセル(左下)に丸められたアルミホイルにモールコードがくくりつけられた簡単な構造。これを携帯電話などにくくりつけるだけで、あなたもサイマルキャスターになれる?これが問題のサイマルキャスト・モバイルキット。大きめのガチャガチャカプセル(左下)に丸められたアルミホイルにモールコードがくくりつけられた簡単な構造。これを携帯電話などにくくりつけるだけで、あなたもサイマルキャスターになれる?



クリスティン・ルーカス氏のパフォーマンス“Simulcast(サイマルキャスト)”は、段ボールでできたハリボテのBSアンテナを背負い、アルミホイルを手にして、公共空間や人の集まるところへ出向く。社会に溢れる情報を拾い集め、人々に話す、というものである。今回の秋葉原TVにはこのサイマルキャストが登場する作品を出品している。

白いヘルメットにアンテナ。オレンジのツナギにキットの入った網袋を抱えて、秋葉原の街中に現れたさいまるサイマルキャスター白いヘルメットにアンテナ。オレンジのツナギにキットの入った網袋を抱えて、秋葉原の街中に現れたさいまるサイマルキャスター



ルーカス氏は、このようにテクノロジーの見えない怖さや与える影響をテーマとしたメディア系の作品を手掛けながらも、その作風はどこかアナログなものを感じさせる。

今回、来日できなかった彼女が発案したのが、この“Simulcast MobileKit #1”というわけだ。Simulcast Mobile Kitは、大きめのガチャガチャカプセルにモールコードがくくりつけられた、丸められたアルミホイルが入っているだけだ。このアルミホイルをモールコードで携帯電話のアンテナ部分などにくくりつけて使うという。

キットの取扱説明書には、“サイマルキャストは電化製品から出る放射物と時空の物理的変異によって生み出される、競合し衝突するエネルギーの流れを和らげる製品の先駆け”と紹介している。

サイマルキャスト・モバイルキットには、丁寧な取扱説明書がついていた。これは英語だが、裏面には日本語も記載されているサイマルキャスト・モバイルキットには、丁寧な取扱説明書がついていた。これは英語だが、裏面には日本語も記載されている



もちろん、この構造で技術的にそのような効果はない。これはこのキットを多くの人に配ることで、電化製品を多用したコミュニケーションのあり方に一石を投じているのではないだろうか。また、これを装着することで新しいコミュニケーションが生まれることも期待できるのかもしれない。

サイマルキャスターズは元気な3人組のボランティアスタッフ。「1人に手渡したら、四方八方から手が伸びてきて、あっという間にカラになってしまいました。気が付いたら、袋の網も破られていました。秋葉原はコワイ」と語ってくれたサイマルキャスターズは元気な3人組のボランティアスタッフ。「1人に手渡したら、四方八方から手が伸びてきて、あっという間にカラになってしまいました。気が付いたら、袋の網も破られていました。秋葉原はコワイ」と語ってくれた

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