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子供が体感できるメディアアートを展示――“ICC子供週間 Media Park at ICC”より

2000年03月27日 00時00分更新

文● いちかわみほ

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東京・初台にあるNTTインターコミュニケーション・センター(略称ICC)では、子供を対象としたワークショップイベント“ICC子供週間 Media Park at ICC”を4月2日まで開催している。展示作品と参加型のワークショップがあり、このイベントは常設展示料金で参加できる。

“ICC子供週間 Media Park at ICC”は、メディアアートに触れるチャンスのない子供たちに向けて、コンピューターの表現の多様性と面白さを伝えることを目的としたイベント。コンピューターと人とのコミュニケーションも重要視し、体験型の作品を展示。マウスやキーボードの操作は極力避け、直接触れることでより理解を深められるようにしている。

3つの展示作品はこのイベントのために制作された新作である。見るだけでなく、手で触れ遊べるようになっている。ひとりではなく多人数で遊ぶことで、よりメディアアートを楽しめるように工夫されており、このことで隠れたテーマである“コミュニケーション”が表現されている。

今回のイベントをよく表わしているのが藤幡正樹氏、古川聖氏、ウォルフガング・ムンク氏、木原民雄氏による共同制作の“‘A Play with Small Fish’2000”である。公園の砂場を模した四角いフィールド内にいくつかのブロックが配置されており、ボックスをレーザーの玉に当てることでさまざまな音楽を奏でることができる。ブロックをレーザーの玉に当てるだけでなく、兄弟や友達同士で玉をブロックで囲ったり、追いかけたりとコミュニケーションも重要なポイントとなっている。

“‘A Play with Small Fish’2000”は赤外線レーザーをブロックで反射させるゲームタイプの展示
“‘A Play with Small Fish’2000”は赤外線レーザーをブロックで反射させるゲームタイプの展示



公園に見立てられた会場で、池と森に設置されているのが木原民雄氏制作の“Interium(インタリウム)”である。3面の大型スクリーンに空や森、街などの風景が映し出され、好きなところを指さすと、動画や画像を貼り付けられるというもの。子供時代に誰しもあこがれた、空に落書きする感覚を楽しめる。動画を貼り付けられるのが画期的な作品で、子供たちもジャンプする動画などを撮影してアニメーションを楽しんでいた。

魚眼レンズで撮影された背景に自由に落書きする“Interium(インタリウム)”
魚眼レンズで撮影された背景に自由に落書きする“Interium(インタリウム)”



“えんぴつとコンピュータが出会う小品集”は、岩井俊雄氏とばばかよ氏が制作したインタラクティブお絵かき。ペンタブレットを使い、画面に直接書き込むことでイラストを完成でき、動きに合わせた音楽を奏でられる。幅広い年齢層で楽しめ、会場では幼児や小学生が夢中で遊ぶ傍らで、操作に没頭する保護者の姿もあった。

ペンタブレットの操作でイラストが変わり、音楽が奏でられる“えんぴつとコンピュータが出会う小品集”。低年齢の子供が夢中になっていた
ペンタブレットの操作でイラストが変わり、音楽が奏でられる“えんぴつとコンピュータが出会う小品集”。低年齢の子供が夢中になっていた



新しいメディアに親しみ、個性を表現するためのワークショップも開催

同時に開催されたワークショップでは、コンピューターに親しみ、展示をより深く鑑賞できるよう手助けするのが目的である。“びっくりポン”と題したワークショップに集まったのは20人の小学生、中学生。自分のおでこに貼られたシールを友達に教えてもらうことで組分けが行なわれる。子供たちはここでコミュニケーションの大切さを体験する。自己紹介後に3組に分かれ、各組ごとに展示作品の制作過程を映したビデオを観てから作品に触れて鑑賞するというもの。

額にシールを貼った組分けの風景。組分けはおしゃべり禁止なので、身振りで相手の組を知らせる
額にシールを貼った組分けの風景。組分けはおしゃべり禁止なので、身振りで相手の組を知らせる



協力プレイが必要な“‘A Play with Small Fish'2000”を遊ぶころには、知らない同士もすっかり仲良くなり、遊びに夢中になっている。ほかの作品も観賞後、ペンタブレットと感圧式ディスプレーを使って自由に絵を描いたりと、知らず知らずのうちにコンピューターに慣れていけるようなカリキュラムになっている。

ペンタブレットの操作は初めての子供も多かったが、子供用に開発されたお絵かきソフト“脳の鏡”を使っているためか、ほとんどの子供がとまどうことなくお絵かきに没頭していた。お絵かき終了後には、紙のお絵かきとは違ったデジタルの利点を紹介し、デジタルイラストの制作過程も再生していた。

ペンタブレットと“脳の鏡”を使ってお絵かき。ペン先と画面の微妙なずれにちょっととまどう子供も
ペンタブレットと“脳の鏡”を使ってお絵かき。ペン先と画面の微妙なずれにちょっととまどう子供も



共通のテーマ“空”を描く。完成した作品は自分でタイトルを付けてポスターにする
共通のテーマ“空”を描く。完成した作品は自分でタイトルを付けてポスターにする



講師の苅宿俊文氏は、コンピューターやインターネットを活用した教育実践への取り組みで知られる人物。今回のワークショップはタイトルの通り、“驚きから発想が生まれる”という考えで開催された。

「今回のアーティストの展示作品も、見るだけでは分かりにくいもの。実際にいじってみると子供にも分かりやすくなる。デジタルの物を子供が感じるサポートをしたい」とワークショップの意義を語った。

また、今回ペイントソフト“脳の鏡”の履歴再生機能を使って、作品を制作した過程を自分で説明してもらうという試みも。「展示作品の制作過程を映したビデオを見てもらったのも、制作過程も表現になるという“プロセスの作品化”という考えを伝えたかったから。作品をつくるプロセスも大事にしてもらいたい」と、自己表現の大切さを語った。ワークショップは4月1日にも開催される。参加には事前申し込みが必要となっている。

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