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個人投資家のためのオンライントレードの現状と可能性を探る――第4回iMedioサロンより

2000年03月23日 00時00分更新

文● 服部貴美子 

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17日、大阪・南港において、ソフト産業プラザ iMedio(イメディオ)の主催するiMedioサロンが開催された。iMedioは、さまざまなデジタル業界のトップランナーが業界の枠を超えて意見を交換する場所として、“iMedioサロン‘業界トップランナーのTalk&Party'”を年4回の予定で開催してきた。このイベントは、デジタルコンテンツやネットワーク技術を活用して、新しい商品やサービスを創り出していく“映像・情報通信関連ベンチャー”を支援するものである。

最終回となった今回は、日本オンライン証券(株)の臼田琢美氏が、インターネット上での株式取引について、サイトを立ち上げた時の思いや、日本オンライン証券の経緯などを語った。

会場は、大阪・南港WTC20Fにあるソフト産業プラザ。講演に先立ち、iMedioの中村香織氏が挨拶会場は、大阪・南港WTC20Fにあるソフト産業プラザ。講演に先立ち、iMedioの中村香織氏が挨拶



日本オンライン証券の経営戦略担当、臼田琢美氏。大阪の証券会社に勤務していた'96年に“かぶこ~ネット”をスタートさせた。その後、転職を経て、'99年に日本オンライン証券の設立に携わることに日本オンライン証券の経営戦略担当、臼田琢美氏。大阪の証券会社に勤務していた'96年に“かぶこ~ネット”をスタートさせた。その後、転職を経て、'99年に日本オンライン証券の設立に携わることに




国内唯一の“オンライン専用の証券会社”

日本オンライン証券は、国内唯一の“オンライン専用の証券会社”として、今年の2月25日より取引を開始した。この中心スタッフの1人である臼田氏は、証券会社の営業マンとして9年間働いた経歴を持つ。ちなみに、同社のドメイン“Kabu.com”は、大阪在住の一投資家が個人使用していたものを、会社の発足を機に譲り受けたものだそうだ。

「いままで、株取引というものは、どちらかというと資産のある高齢層だけの投資活動だったが、株式を長期保有することのメリットを考えれば、若い人たちにも勧めたい」と臼田氏は語る。また、投資家サイドだけでなく、上場企業についても「大企業が相場を引っぱる時代から、若い企業の伸びが注目される時代へと変わってきた」と指摘する。

実際、長引く低金利や株式市場の回復、また金融ビッグバンにより手数料の自由化や銀行窓口での投資信託の販売といった動きがあり、いままで株式には縁のなかった顧客層が開拓されてきた。

個人が株式投資をする環境が整い始めている

臼田氏が運営している“かぶこーネット”は、“個人投資家の意識改革のために立ち上げたホームページ”である。これまでの個人投資家は、株式相場に関わる情報を得ようにも、経済系の新聞に頼る程度しか方法がなく、また投資家同士や専門家と意見を交わすことのできるコミュニティーを持つことができなかった。加えて、証券業界のノルマ営業や横並び意識なども、投資環境を育てることの妨げとなっていた。

インターネットの普及と金融ビッグバンの流れによって、徐々に個人が株式投資をする環境が整い始めている。かぶこーネットは、'96年2月の開設以来、順調にアクセス数を伸ばし、累計訪問者数は約600万人(2000年3月現在)、1日平均1万7000人から1万8000人もの訪問者を獲得している。初心者の質問に、上級者が答えるQ&Aコーナーや、ソニーやソフトバンクなどの人気銘柄について討論する掲示板、オンライントレードに関する話題に特化した掲示板など、インターネットの双方向性を生かしたコンテンツが人気の秘密だ。

ノートパソコンの画面を見ながら、講演に耳を傾ける人も。常に利用する側の気持ちを考えて構築した日本オンライン証券のシステムには、伊藤忠商事、朝日生命などのほか、マイクロソフトも出資している
ノートパソコンの画面を見ながら、講演に耳を傾ける人も。常に利用する側の気持ちを考えて構築した日本オンライン証券のシステムには、伊藤忠商事、朝日生命などのほか、マイクロソフトも出資している




オンライントレードは、まだ第一段階だが……

一方、オンライントレードはというと、実施証券の増加と、相次ぐ手数料の値下げにより、利用者数が急増。しかし、トラブルの発生も多く聞かれる上、「実店舗では、当たり前にできることが、システムの遅れによって実現できていないというケースが多々ある」のが実情だ。

証券会社のシステムによって多少の差はあるが、当日買いつけた株を、即日売却できないこと、訂正注文は電話でしか対応できないことなどが、その一例である。「オンライントレードは、まだ第一段階までしかきていない。証券会社はシステムの弱さを改善していかねばならない」と臼田氏は述べ、その弱点であるシステムで他社にない強みをもつのが日本オンライン証券であると自信をみせた。

同社のシステムは、オンライン取引専用として一から開発されており、24時間マルチチャネル(FAXや携帯電話にも対応)、売買の結果通知や銀行からの送金状態の確認などにおいても、高いリアルタイム性を実現している。また、たとえば「株価が500円に下がったら発注する」といった“条件注文”、「株価が下がれば売り、上がれば買う」という“逆指値”など、価格変動リスクを抑えるための投資手法も取り入れた。

ザウルスやWindowsCEマシンでも取引が可能に

さらに、電子メールなどで株価動向を知らせる“カブ・コール”や、投資家にはお馴染みのQUICKに機能を付加した“QUICK for kabu.com”など「投資家は若干の手数料の差よりも、サービス内容を重視すると考えて、差別化を図った」。さらに、ザウルスやWindowsCEマシンでも使いやすいよう、軽くて見やすい画面構成にした“Kabu.com Light wersion”もスタートしたばかりだ。

講演の最後に、臼田氏は「投資信託や信用取引などの取扱いも、将来的には考えていきたいが、まず株式投資の土台をしっかりと作り上げたい。たとえば、外国株式などは、ナスダックジャパンのような新市場が発展することによって、ベストの選択でなくなる可能性があるので、しばらくは状況をみたい」と今後の抱負を語った。

従来のiMedioサロンは、クリエイター側からの参加が多いが、この日は株式投資にネットを利用しているユーザーの姿が目立った
従来のiMedioサロンは、クリエイター側からの参加が多いが、この日は株式投資にネットを利用しているユーザーの姿が目立った

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