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文部省、通産省、郵政省、自治省の代表が考える教育改革とは?――21世紀の情報教育(後編)より

2000年03月23日 00時00分更新

文● 狭間太一郎

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15日に開催された、(社)日本教育工業振興会主催の第16回情報教育政策セミナー“21世紀への情報教育”。本稿では、バーチャルエージェンシーにおける教育の情報化プロジェクトに参加している文部省、通産省、郵政省、自治省による第2部パネルディスカッションの模様を報告する。

パネルディスカッションは、メディア教育開発センターの所長、坂本昴氏をコーディネーターに、文部省の生涯学習局学習情報課長、岡本薫氏、通商産業省の機械情報産業局情報処理振興課長補佐、萩原嵩弘氏、郵政省の電気通信局電気通信事業部高度通信網振興課長、田中謙治氏、自治省の財政局調整室課長補佐、稲岡伸哉氏の4氏が登場した。

パネルディスカッションの模様
パネルディスカッションの模様




着実に整備されつつある情報教育環境

まず通商産業省の萩原氏が登壇し、情報教育に関する標準化の動向について解説した。欧米は個人ベース、大学中心のシステムであり、小学校からステップアップしていく日本とは違うと指摘し、日本型のシステムを主張するアクションを起こしていく、と述べた。また、文部省の岡本氏は、小中学校教育のあり方について、日本の子供に良いものは良いというのが同省の見解である、と述べた。

続いて、各省庁の各氏が教育環境整備の状況を説明した。岡本氏は、文部省ではコンテンツについて予算を計上していることなどを説明。自治省の稲岡氏は導入されるコンピューターの台数は、目安として2000年度で121万台という数字を挙げた。また交付税により導入された機器の更新も交付税で賄えるよう努力したいとし、台数は導入が決まれば一気に増えるのでは?という見解を示した。

郵政省の田中氏は光ファイバーなどの回線状況について語った。光ファイバーについては“FTTH”(Fiber to the Home)の目標を当初の2010年から2005年に早めたこと、局から家庭への途中までの回線は広がっていることを説明。現在、高い料金を安く定額にしていきたいと述べた。また“xDSL”に関しては、サービス可能な距離の延伸に限界があると指摘した。

田中氏は複合アクセス網について、“1050校を結ぶイントラネット”であると説明。1.5Mbpsの回線では20台くらいまでサポートできること、学校間の接続はすでに完了しており、22日に事例発表会が行なわれると報告した。

教科書会社とIT関連の企業、放送局が三位一体となり、利用者本位のコンテンツを

岡本氏はコンテンツの問題について、道具は目的を変えない、授業は変わるが教育は変わらないということを強調。パソコンで平易なソフトを使うことを“くだらない”と思うことが普及を阻害しているし、企業側も現状は利用者本位の製品を作っていない、とした。

教科書の目次に沿ってサムネイルがあり、それぞれの項目に複数の素材を用意しているコンテンツなら、学習内容によって選択できる“使えるコンテンツ”となる。制作にあたっては教員の意見を聞いて作ること、たとえば市全員の教師を集めるような方式で一般の教員の意見を聞くことが重要である。このようなコンテンツ作成には、教科書会社とIT関連の企業、放送局などのメディアという3者の連携が必要であるという見解を示した。

萩原氏は「コンテンツなんてごめんだ」という人が使えるものこそ必要であると述べた。検索でコンテンツそのものに飛べるような仕組みや、子供が興味を持つゲームのようなタイトルが必要であり、ナショナルセンター*ではその見せ方を研究する、と述べた。また産業界に対しては、ウェブに利用できるようなコンテンツがないとの指摘も。

*ナショナルセンター:文部省ニュース、バーチャル・エージェンシー“教育の情報化プロジェクトに係る総理への報告について”によれば、 ナショナルセンターは各都道府県の教育センターなどを結ぶ全国的な情報通信ネットワークの拠点として捉えられている。“バーチャル先端教育研究センター”の研究成果を活用し、各学校における情報化の推進、情報教育の充実を支援するため、ナショナルセンター的機能を有する“教育情報ナショナルセンター”を整備する、としている。このセンターは、教育の情報化を推進する団体の役割の整理にも配慮しながら、民間団体、企業などを活用しつつ、各種のプロジェクトをコーディネート、必要に応じて支援、助言などを行ない、全国的な視野から教育の情報化を推進する。 http://www.monbu.go.jp/news/00000356/p09.htm

また岡本氏は国の役割として、ナショナルセンターで情報の提供を企画していると説明した。質疑応答の時間には、教材の著作権に関する質問が出たが、これについては現行の法律はコピーが簡単にできるような状況を想定していないと指摘。実情に合う法改正に向けて、「みんなで考えて、主張、提案すべき」とした。

閉会の挨拶には、教育新聞社の取締役業務局長、宇田理夫氏が登壇し、“現場の認識がカギである”と語り、セミナーを締めくくった。

教育新聞社の取締役業務局長、宇田理夫氏
教育新聞社の取締役業務局長、宇田理夫氏

    【関連記事】文部省、通産省、郵政省、自治省が集結!!パソコンによる2005年の教育現場を考える――“21世紀への情報教育”(前編)より

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