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ソニー、ネットマーケティングの新会社を設立――情報へのアクセスを容易にする新技術を活用

2000年03月22日 00時00分更新

文● 編集部 小林伸也

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ソニー(株)は22日、同社100パーセント出資の子会社“サイバージーンドットコム株式会社”を設立すると発表し、都内で記者発表を行なった。新会社ではベンチャー企業のヴィジョンアーツ(株)が開発した新技術“IP3”を利用。情報を埋め込んだ画像アイコンを使って、ユーザーの好みを直接反映したマーケティングを展開、多数の商品を集めたオンラインショッピングモールの運営などを行なう。3年程度で100億円の売上を目指す。

社長に就任する予定のソニーの佐藤裕氏、同社執行役員で上席常務の堀籠俊生氏、ヴィジョンアーツ開発部門代表の藤田岳史氏、同社社長の八田斉明氏
社長に就任する予定のソニーの佐藤裕氏、同社執行役員で上席常務の堀籠俊生氏、ヴィジョンアーツ開発部門代表の藤田岳史氏、同社社長の八田斉明氏



新会社は4月16日付けで設立される予定で資本金2億4000万円、オフィスは東京都品川区。社長にはソニーコミュニケーションシステムソリューションネットワークカンパニー・iカードシステムソリューション事業部副事業部長の佐藤裕氏が就任する。

新会社の事業の核となるのは、ヴィジョンアーツが開発した新技術であるIP3だ。この技術は、JPEG形式の画像にさまざまな情報やリンクを埋め込んで配布する技術。この技術では、まずウェブ上にアップされたある製品の画像を、ドラッグ&ドロップでクライアントソフトにダウンロードする。クライアントソフト上でアイコン化された画像をダブルクリックすると、製品説明が記されたPDFファイルが展開される。また右クリックすると“製品を購入する”などの独自メニューが現われ、クリックすればECサイトにジャンプできる。

ダブルクリック時の起動アプリケーションや右クリックメニューは制作者側で自由に変更でき、歌手の画像から音楽を試聴したり、映画の画像でムービーファイルを見たり、といったことも可能という。またデスクトップ上に表示された画像アイコンは自動的に更新されるため、最新の情報を常に配信できるという。IP3フォーマットの画像はJPEG形式と完全互換が保たれており、専用ツールを使って画像アイコンに情報を埋め込む。

IP3ではユーザーがドラッグ&ドラッグで自ら好みの情報を選ぶ上、検索エンジンを利用しなくても必要な情報への素早くアクセスできるため、より確実でダイレクトな広告効果が期待できるという。

新会社では、ヴィジョンアーツとIP3技術の独占ライセンス契約を締結。同技術を活用したマーケティングを主事業に据え、IP3フォーマットの画像アイコンを集めたショッピングモール“e-メッセ”を展開。また同技術を活用したプロモーションを開拓し、各企業に採用を呼び掛けていく。収入はショッピングモール出店の手数料や同技術のライセンス料などから得る方針だ。

「IP3をソニーのインターネットビジネスの核に」


新会社が開設を予定するショッピングモールのサンプル。ユーザーはデスクトップ上のクライアントソフトに画像アイコンをドラッグ&ドロップして情報を入手する
新会社が開設を予定するショッピングモールのサンプル。ユーザーはデスクトップ上のクライアントソフトに画像アイコンをドラッグ&ドロップして情報を入手する



同社の成否のカギはIP3の普及度。同社では6月下旬からクライアントソフトの無料配布を開始。ソニーグループ各社のサイトでも同技術を積極的に採用し、グループを挙げて普及に取り組む。4月には実験として、ソニーミュージックエンタテインメント(株)からデビューする女性アイドルグループ“WhiteBerry”のウェブプロモーションで活用を試みるほか、輸入雑貨専門店の(株)ソニープラザのサイトでも商品説明で実験利用を予定している。

新会社の社長に就任予定の佐藤裕氏
新会社の社長に就任予定の佐藤裕氏



社長に就任する予定の佐藤裕氏は発表会で、「ヴィジョンアーツのデモを見て、これは面白いと思ってビジネスを立ち上げた。IP3を世界中に普及させ、ユーザーと情報提供者の新しい出会いの場を創っていきたい」と意気込んだ。

ソニー執行役員で上席常務の堀籠俊生氏 ソニー執行役員で上席常務の堀籠俊生氏



ソニー執行役員で上席常務の堀籠俊生氏は、「ソニーのインターネットビジネスの中核としてIP3を位置づけたい」と同技術に込めた期待の大きさを表した。ソニーグループの“So-net”での事業化を選ばなかった理由については、「最初はSo-netで取り組む方針だったが、社長の出井(伸之氏)も『広く普及させたい』との考え。ワールドワイドに展開するために別会社で事業化することにした」と語った。

ヴィジョンアーツ社長の八田斉明氏 ヴィジョンアーツ社長の八田斉明氏



ヴィジョンアーツ社長の八田斉明氏は、「IP3は表現力が高い。情報へのアクセスがすべて画像の中に入っている。インターネット時代に新しい情報のパラダイム(Information Paradigm)だ」と自社で開発した技術に自信を見せた。同技術に対しては、米国の大手企業からもオファーがあったというが、「ソニーがスタッフ一同好きだった。ビジネスではまだまだ未熟な我々の弱点を、ソニーがぴったりと補ってくれた」とソニーをパートナーに選んだ理由を語った。

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