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全国16モールと手を結んだ“地域モール連合”を構築--名古屋商工会議所らが主催のe-businessセミナー

2000年03月17日 00時00分更新

文● デイズ・水野誠志朗

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名古屋商工会議所と、300社以上の地元企業がメンバーの中部ニュービジネス協議会は16日、“産業文化セミナー・ECからe-businessへ”を名古屋市の商工会議所で開催した。今回、商工会議所のメンバーに対するe-ビジネス(電子商取引)の講演会という趣のセミナーであったが、無料で一般にも公開され、会場は300人近い入場者であふれた。

インターネットにより首都圏と地方とのビジネス的な格差はなくなるといわれて久しいが、現実には様々なインターネットの話題は首都圏を中心に展開している。中部圏の企業にとってe-ビジネスを実現することは、首都圏にいるより難しいのはまちがいない。今回のセミナーでは、中部圏でのe-ビジネス“成功者”の声を聞けたことが大きな魅力といえるだろう。

セミナー会場
セミナー会場



e-ビジネスの成功にはコミュニティーの策定が不可欠--アーサーアンダーセンの基調講演


セミナーは3部構成で、始めに基調講演としてアーサーアンダーセンの牧野正之氏が演壇に立った。ECの定義、e-ビジネスの具体例とポイントといった一般的な知識をおさらいしたあと、この日のセミナーの大きなテーマとなる“コミュニティーの生成と戦略の策定”について説明した。e-ビジネスを成功に導くためには、ウェブ上でコミュニティーを作って適切に運営していく必要があるという論調である。これに関してはすでに多く述べられていることではあるが、集まった人々には、それなりの確認と再認識になったようだ。

  “日本市”として新たにスタートする地域ショッピングモール連合

この基調講演のあとは、今回のセミナーの主役ともいえる(株)名古屋情報センターが展開しているメディアポート日本(MPN)に関する報告があった。名古屋情報センターという会社は20年ほど前、『キャプテンシステム』という“ニューメディア”が立ち上がった時にできた組織で、現在はこのMPNに取り組んでいる。

名古屋情報センターの第一営業部長、井上順氏
名古屋情報センターの第一営業部長、井上順氏



MPNは電子決済システムに優れたショッピングモールである。百貨店など名古屋の財界が肝いりで始めた仕組みだが、ご多分にもれず苦戦してきた。そうはいっても昨年あたりからは好調に推移しており、店舗数400以上、商品数約2万8000という大型ショッピングモールに成長している。

MPNは自らをショッピングモールのASP(アプリケーション・サービス・プロバイダー)と規定し、1ヵ月1万円という安い料金で地域の企業にEC環境を提供している。その結果ここまで出店数を伸ばしてきたが、アクセスや売り上げは思ったほど伸びないことが悩み。収益が少ないゆえ知名度アップのための広告予算を持てないことも、その大きな原因だろう。

とはいえ、昨年7月からは全国各地の地元ショッピングモールと手を結び“地域モール連合”を構築。共通の商品データベースをMPNが提供することで、地域のショッピングモールからでも全国の商品の検索が自在にできる仕組みである。地域のサイトでなければ見つけられない特産品を全国へ販売する手段としてはなかなか有効。地方に密着しているサイト同士が手を組み全国規模の展開をするというのは、地方におけるこれからのe-ビジネスの1つのパターンとなりそうだ。

そしてアクセスを増やすために4月からは、全国の16モール(予定)が集まって“日本市”というブランドで再スタートする。これによって26県をカバーする地元密着型ながら全国展開が可能なショッピングコミュニティーができあがる。ECモールシステムを持つASPとしてのMPNがやっと実を結び始めたというわけだ。課題は首都圏での知名度アップ。そのため総額100万円のプレゼント展開をするというが、このプレゼント金額を見ても、内実の苦しさは理解できるだろう。

地方在住でもウェブでコミュニティーを成立させれば成功はある。しかし今後は……

第3部は“e-Business最前線~中部地区の成功事例を探る~”として、オーダーカーテン専門店インテリアクレールから篠田亨至氏、生活雑貨店マイルームから渡辺剛道氏、 栗和菓子専門店新杵堂から田口和寿氏の、3名のECショップオーナーが招かれ、パネルディスカッションが行なわれた。

パネルディスカッションより
パネルディスカッションより



3名のうち2名は20代後半という点を強調して、年輩の参加者を挑発するのはe-ビジネス講演の常套手段だ。この3者に共通するのは、ECで初めて現行ビジネスを始めたのではなく、既存ビジネスをショッピングモールに参加させることからスタートしたこと。それぞれの仕事は現実世界でプロであるということだ。

現在の成功(といってもインターネットだけで食えているのはカーテンだけだが)の原因は、豊富な専門知識を生かした、会員コミュニティーを成立させたこと。和菓子などは1万人の会員を持っているという。こうした会員をベースとしたメールの対応によって売り上げを得ているが、その内容は店頭で客に対して接するのと同じ、丹念な接客作業だ。現在はこうした手法がうけて各社とも昨年は2000万円以上を売り上げた。

記者が疑問に感じたのは、今はまだそうした店が少ないだけにビジネスになっているが、今後そうした店が増え、大手が進出してくることで、果たして対抗できるかということである。「24時間注文メールに対応できるのは個人商店だからこそで大企業では無理」という発言もあったが、大手がシステマチックに24時間体制をとるのは決して不可能ではないはず。とはいえ、地方在住でも同じ土俵で勝負できるBtoCのe-ビジネスのメリットは、こうした特殊な商品の物販でこそ生きるということが、今回のセミナー参加者にはよく理解できただろう。

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