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「ビル・ゲイツも自閉症? 」--“第13回TORNイネーブルウェア研究会例会”

2000年03月15日 00時00分更新

文● 若菜麻里

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東京大学の坂村健教授らが進める産学共同のプロジェクトTRONプロジェクトの研究部会のひとつである“TRONイネーブルウェア研究会”は11日、オープンシンポジウム“第13回TRONイネーブルウェア研究会例会 自閉症と情報ネットワークの役割”を都内で開催した。

TRON(トロン:The Real-time Operating system Nucleus)Projectは、'83年に提出された(社)日本電子工業振興協会(JEIDA)の国内のコンピューター開発ビジョンに関する報告書を受け、'84年に東京大学教授の坂村健氏らが中心となり発足した産学共同のプロジェクトである。(社)TRON協会は、同プロジェクトの推進に関する中核機関として'88年に設立された

TRONプロジェクトでは、障害者への対応を1つの研究テーマとして挙げている。TRONイネーブルウェア研究会では、コンピューターや電子機器を、障害者の生活向上、社会参加のサポートの目的に利用するための技術研究を行ない、こうしたオープンな例会を年に数回開催し、肢体障害や聴覚障害といったテーマを取り上げてきた。

今回のテーマである“自閉症”は、知的障害であり、一見健常に見えるため、周囲からはその不自由さが周囲にわかりずらい。また自閉症にかかっている本人も、言葉が自由にあやつれないため、どのように困っているか説明できないことがある。専門家ですら誤解や間違ったアドバイスをすることがあるなど、社会的に広く理解されていない病気という。

今回の例会では、医師や養護学校教諭などを招いて、自閉症とは何かから始まり、サイバーカンファレンスやパソコン通信を利用した活動などについて報告がなされた。

会場には自閉症児を持つ父兄などがつめかけた
会場には自閉症児を持つ父兄などがつめかけた



ビル・ゲイツも自閉症? 理工系に多く見られる軽度の症状

ここでは、『自閉症治療スペクトラム』('97年 金剛出版)など自閉症に関する多数の著書を持ち、横浜で発達障害クリニックを開設している医師の内山登紀夫氏の講演を紹介する。

内山氏によれば、自閉症は脳の認知機能の障害であり、アメリカの精神学者レオ・カナーの研究によると、自閉症には、情緒的接触の重度の欠如や、反復的ルーチン、魅力的で知的な外見といった特徴があるとされているという。

「一人遊びが好きで言葉を全く発しない、または独り言が多い。駅のアナウンスをずっと繰り返したり、マンガのキャラクターになりきって一人遊びをする。また、自分なりのパターンが決まっていて、旅行に行っても必ず決まった番組を見たがったり、朝起きてトイレに行き、歯を13回磨いた後に、もう一回トイレに行き、水が流れているのを確認したりする、といった決まった行動をとる」

「視覚や記憶力に突出した能力がある。たとえば、映画『レインマン』でダスティン・ホフマンが演じた自閉症の主人公は、カードゲームのカ―ドをすべて覚えていたり、航空会社が何年に事故を起こしたか全部覚えていたりという、特異な能力の持ち主」

同氏によれば、さらに「容姿がいい」のも特徴だという。

大妻女子大学人間関係学部助教授/よこはま発達クリニック・医師の内山登紀夫氏
大妻女子大学人間関係学部助教授/よこはま発達クリニック・医師の内山登紀夫氏



またオーストリアの小児科医、ハンス・アスペルガーが提唱したアスペルガ―症候群は、カナーのそれに近いが、症状は軽度で、ぱっと見には常識が欠如しているだけに感じられる場合も多い。この2人の学説を合わせて、“社会性”、“コミュニケーション”、“想像力・こだわり”の3つの要素が混じり合ったものを“自閉症のスペクトラム”と呼ぶ。想像力が強いだけなら、強迫神経症だが、社会性やコミュニケーションに障害があると、自閉症ということになる。イギリスでは、約0.8パーセントの人が自閉症で、アスペルガータイプなら、実際の社会生活を送っている人にも多く当てはまるという。

「例えば、ケンブリッジ大学やオックスフォード大学などで研究生活を送る人に、そういう傾向の人が多い。私自身は会ったことはないが、音楽家のエリック・サティ氏や、マイクロソフトのビル・ゲイツ氏が、研究者のティンプル氏によれば、アスペルガータイプと言われている」

「精神学者バロン・コーエン氏の研究では、自閉症の人の家族の学歴を調べると、工学部やエンジニア系にアスペルガータイプが多かったことから、理科系の才能と、自閉症のポジティブな関係を調査している」

内山氏はさらに、「日本で前述の“自閉症のスペクトラム”が知られたのはここ4~5年のことで、やはり人口の1割弱を占めるだろう」と推定する。

ウェブで国際会議を開催、参加者にとってまだまだ難しいインターネットの利用方法

イギリスでは、自閉症の子を持つ親が'62年に設立した“NAS(National Autistic Society:全英自閉症協会)”という民間のチャリティ団体があり、自閉症者のための学校運営や、啓蒙活動やクリニックなどの活動を行なっている。会員数は6000人、年間予算は約2400万ポンド(約57億円)という活動規模だ。1999年にNASが中心となり、ウェブサイトで、サイバーカンファレンス“Autism 99”を開催した。

Autism 99では、イギリスのほか、アメリカ、ニュージーランド、シンガポール、クウェートなどから、研究者や自閉症者本人、またその親などが参加して、ウェブ上で論文発表や、議論を行なった。このカンファレンスで内山氏は、日本の世話人として、パソコン通信のNIFTY SERVE(現在はインターネット総合サービスの@nifty)やメーリングリストを通じて、関係者に参加を呼びかけた。

内山氏は、その経験を踏まえて、サイバーカンファレンスの利点として、「無償で、世界中から、誰でも気軽に参加できる。英国まで出向かなくてもいい。また半永久的に記録を残せる」ということを挙げた。

問題点として、「インターネットは、難しいという人が多い。ファイル転送のトラブルや、送付したWordやExcelのファイルが開けないため、結局最後はFAXや電話でやりとりした、といったこともあった。ディスカッションする人と、いっしょにお酒や食事ができないことも残念だ。また英語のハードルは高いので、もっと使える翻訳ソフトが必要だ」と語った。

「日本では、約0.8パーセントの人が自閉症であるとはいえ、その理解は進んでいない。そんな中で、サイバーカンファレンスは、強力な啓発ツールだ。今後は、コンピューターのエキスパートや、スポンサーの金銭的な支援が得られれば、さらに効果的なカンファレンスが可能だろう」として、講演を締めくくった。

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