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衛星通信で米国国立医学図書館を結んだ高速データ通信実験を実施――“NORTH Internet Symposium 2000”より

2000年03月15日 00時00分更新

文● 尽田万策

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6日、7日の両日、インターネットの利用と技術研究を推進する北海道地域ネットワーク協議会(NORTH)は、札幌医科大学ホールにおいて“Internet Symposium2000”を開催した。

冒頭に、同協議会の辰巳治之会長(札幌医科大学教授)は、「今年の“NORTH”では、郵政省通信総研とNASAの協力を得て、衛星通信で米国国立医学図書館を結んだ高速データ通信実験を実施する(詳細は本文中で解説)。この試みは、情報G7のプロジェクトの1つとして位置付けられている」と、ネットワークを通じた積極的な活動計画について説明した。

北海道地域ネットワーク協議会の辰巳治之会長(札幌医科大学教授) 北海道地域ネットワーク協議会の辰巳治之会長(札幌医科大学教授)



学会形式で進められた同シンポジウムでは、次世代インターネットシステムの先進技術関連から、ネットワークによる地域コミュニティーの再編といったものまで、合計32の発表が活発に行なわれた。以下、その中からトピックスをピックアップして報告する。

コスト効果の高い“ネットワーク指紋照合システム”

初日はインターネットの新しいサービスアプリケーションをテーマとしたセッションが行なわれた。

シンクビジョン(有)と(株)エーディーが開発したのは、指紋照合を活用した消費者金融貸付管理やタイムカード管理をするネットワークシステム。従来の同種のシステムに比較してコスト効果が高く、指紋照合によるネットワーク個人認証の一般的な普及を期待させた。

日産のウェブでも進めている“日本語ドメインインデックスサービス”

(株)ネットマークスは、ウェブ(URL)を日本語で呼び出す“日本語ドメインインデックスサービス”を紹介した。

これは、ウェブ開設者が割り当てを希望する日本語名称(ドメイン名に割り当てる)をネットマークスが登録、管理することで、日本語ドメインでウェブにアクセスできるようになるもの。たとえば、http://www.netmarks.co.jpの場合なら、株式会社ネットマークス.jp.io、ねっとまーくす.jp.io、netmarks.jp.io と言った登録が可能になる。

今年5月から正式にサービスを開始するが、すでに日産では同サービスによって車種別のウェブを日本語対応化する試みが始まっている。

ネットマークスの安田寛彦氏ネットマークスの安田寛彦氏



無料で電報を打てる『ディジタル電報システムDids』

シーダースコミュニケーションズ(株)は、(株)ネクステックと共同で開発した『ディジタル電報システムDids』を発表した。このシステムは、NTTの電報サービスを介さずに、インターネット経由で式場やホテルのプリンターに慶祝電報を直接出力するもの。

披露宴や祝賀会の主催者は、招待状に『Dids』の入口になるウェブのURLを記載する。参加者はウェブにアクセスし、必要項目を記入したあとでメッセージを送信する。データはインターネットを経由してホテル、式場にセットしたプリンターから出力され、主催者に渡される。ここまでは既存の電報がユーザーにとって便利になっただけだが、このサービスのユニークさは、料金が無料であるという点。使用料金はホテルから費用を回収するという仕組みである。

同社はシステム構築にあたり、40ヵ所以上のホテルの聞き取り調査を行ない、全般的に顧客データの集積と活用がかなり遅れていることを突き止めた。そこでDidsの事業目的を、ホテル業界のユーザーデータの集積と、それを活用したダイレクトマーケティング代行やEC市場へのインターフェースとして位置付けている。

ネットワーク共同研究室プロジェクト ”Visible Human Anatomical Co-Laboratory”

2日目のNORTH辰巳会長による特別講演は、前述の”情報G7”や、衛星を利用した国際高速インターネット技術の応用実験についての発表である。

“情報G7”は、先進国首脳会議(G7)で決められたもので、先進7ヵ国が共同で高度情報化を推進するための組織。現在さまざまな情報プロジェクトが進められている。その中でNORTH、APAN、CRL(通信総合研究所)、NASAなどは、'86年に米国国立医学図書館が開始した“VHP”(Visible Human Project=成人男女の完全な立体デジタル画像ライブラリー構築プロジェクト)の遠隔利用の実現を目的として、日米間で高速なデータ通信実験を進めてきた。

医療画像データベースのネットワーク利用に対しては高いニーズがある反面、解剖学など実際の応用では高解像度データが必要なためにデータ容量が膨大となる。現況のインターネット環境下では利用出来ないというギャップに直面している。この実験では、次世代インターネット技術(NGI)を活用して、エンドユーザーのアプリケーションとネットワーク技術とのギャップを埋める取り組みをしている。

具体的には、米国国立医学図書館の膨大な人体画像データをネットワーク端末から利用するために、基礎となる“Viewer”を開発した。このViewerを使って、人体の任意のMRI断面図から輪郭を抽出していく。部位を詳細に特定した時点で、衛星により日米間で該当データを転送し、立体再生するシステムを構築するというもの。

辰巳会長は、「このシステムをさらに発展させ、解剖学のための、世界的なネットワーク共同研究室 “Visible Human Anatomical Co-Laboratory”を形成したい」と抱負を述べた。

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