このページの本文へ

民主党、情報化社会推進へ提言を発表――IT革命シンポジウムを開催

2000年03月15日 00時00分更新

文● 編集部 小林伸也

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

民主党の“高度情報化社会プロジェクト”は15日、情報化社会推進への政策案をまとめた提言を発表した。ベンチャー支援や税制改革といった経済的支援に加え、情報教育の拡充やデジタルデバイドの解消などが盛り込まれている。民主党は同日、“IT革命シンポジウム”を都内で開催。代表の鳩山由起夫氏は日本のIT産業育成と社会の情報化推進について、重要項目として積極的に取り組む姿勢を改めて強調した。

都内で開かれた民主党のシンポジウム
都内で開かれた民主党のシンポジウム



提言は“人間中心の情報化社会を目指して”と題され、7項目にわたって具体的な目標を掲げた。基本姿勢として、情報化は民間主導が望ましいとするものの、自由放任ではなく、情報化社会の進展で顕在化しつつある諸問題の解決にも取り組む必要があるとしている。

提言ではIT産業支援を重視し、ベンチャー企業への支援やエンジェル税制を拡充し、IT投資については初年度全額償却を認めるなどの優遇策を打ち出している。また電子政府の実現に向け、2005年までにすべての行政手続きを24時間利用可能できるようにオンライン化するなど、具体的にタイムスケジュールを定めた。

また全小中学校の児童生徒全員にパソコンとインターネットへのアクセス環境を提供。デジタルデバイドの解消を目指し、政府調達の電子機器については身障者対応のものに限定し、開発の促進を図っていくという。さらに個人情報保護法の制定や、ネット時代に対応した知的所有権制度の確立といった法整備、通信と放送の融合を図り、両者の相互参入を認めることも盛り込まれた。

菅直人氏は「もうあいさつ要員にされてしまった。パネリスト側にまわりたい」 菅直人氏は「もうあいさつ要員にされてしまった。パネリスト側にまわりたい」



シンポジウムでは、まず同党政調会長の菅直人氏があいさつ。「社会も技術も変化するが、その足を引っ張るのが行政と政治かもしれない。政治なんてふっとばせ、というパワーを期待したい」とパネリストへ盛んな議論を求めた。

左から慶應義塾大学経営大学院教授の千本倖生氏、(株)サイバーエージェント社長の藤田晋氏、衆議院議員の小沢鋭仁氏
左から慶應義塾大学経営大学院教授の千本倖生氏、(株)サイバーエージェント社長の藤田晋氏、衆議院議員の小沢鋭仁氏



パネリストは、(株)インフォシーク会長の伊藤穣一氏、同党“ネクストキャビネット”の情報通信担当大臣で衆議院議員の小沢鋭仁氏、慶応義塾大学経営大学院教授の千本倖生氏、マイクロソフト(株)社長の成毛真氏、(株)サイバーエージェント社長の藤田晋氏の5人。

左から(株)インフォシーク会長の伊藤穣一氏、マイクロソフト(株)社長の成毛真氏
左から(株)インフォシーク会長の伊藤穣一氏、マイクロソフト(株)社長の成毛真氏



千本氏は今年のダボス会議に出席した経験をふまえ、「今年のポイントは3つだ。まず世界経済は明るい方向に変わっているということ、それは大量生産の製造業からネットワークエコノミーが支えているということ、それを担っているのはベンチャー企業のアントレプレナーシップであるということだ」と議論の口火を切った。

これに対し成毛氏は、「米国の好景気は8パーセントのIT産業が支えているといわれている。だがIT産業だけでなく、残り92パーセントの企業もIT化で生産性を向上させている」とし、IT業界が産業界全体の底上げに役立っていると指摘した。また「アントレプレナーシップがもてはやされているが、米マイクロソフトのビル・ゲイツがここに至るまで25年かかっている。数年でゲイツになろうとする風潮は心外だ」と苦笑した。

藤田氏は教育問題について触れ、「大学では経営学部にいたが、ほとんど出席しなかったし、学んだことも役に立っていない。いい大学に入っていい企業に入った者が勝ちという認識を改めないと、実力のある人材は育たないだろう」と述べた。

伊藤氏はこれに対し、「私のアドバンテージは日本の教育を受けていないこと。今の日本の教育は製造業中心の大企業に人を送り込むためのフィルタリングに過ぎない」と応じた。また伊藤氏は政治家について、「今はIT業界に金が集まっているから、金をばらまくことは考えなくていい。それよりも金をどこにばらまけばいいのか、米国の政治家のように勉強してもらいたい」と注文を付けた。

小沢氏は民主党の代表として、「民主党は党代表自らが呼び掛けて情報化に取り組んでいる点がほかの政党と違う」と同党の姿勢を強調。また「経済だけでなく社会も創っていきたい。自民党が企業中心なら、民主党は市民の側からの発想だ」として、あくまで自民党と異なる路線から改革を進めていく方針を示した。

民主党幹事長の羽田孜氏は、「自民党の平均年齢は64歳と先進国の政権党の中でもっとも高い。若手中心の民主党はIT革命のために突っ張っていきたい」と語った。羽田氏は64歳 民主党幹事長の羽田孜氏は、「自民党の平均年齢は64歳と先進国の政権党の中でもっとも高い。若手中心の民主党はIT革命のために突っ張っていきたい」と語った。羽田氏は64歳



最後にあいさつした同党代表の鳩山由起夫氏は、「忘れがちな問題だが、スーパーコンピューティングの世界もしっかり位置づけたい。この分野を軽視すれば、ヒトゲノム分析など巨大な科学技術の分野でも後れをとってしまう」と事情通ぶりを披露。さらに「IT革命推進の方向は国も民主党も同じ。しかし民主党は“影”の部分に識見を示していきたい」と語り、経済にかたよらず、党のカラーである市民派路線をIT分野でも忘れずに追求していく姿勢を示し、シンポジウムを締めくくった。

「私はシャノンの情報理論に憧れて米国にわたった世代」と語る鳩山氏 「私はシャノンの情報理論に憧れて米国にわたった世代」と語る鳩山氏

カテゴリートップへ

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン