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cIDf、コンテンツIDに関する仕様書を公開--東大博物館で実証実験を開始

2000年03月14日 00時00分更新

文● 編集部 伊藤咲子

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産学共同プロジェクトのコンテンツIDフォーラム(cIDf)は13日、“cIDfオープンシンポジウム”を開催、コンテンツIDに関する仕様書“cIDf Specification 1.0”を公開した。cIDfは、市場で流通するデジタルコンテンツ(静止画/動画/音楽データなど)に対し、独自のIDコード“コンテンツID”を電子透かしやヘッダー方式で埋め込み、それによって著作権管理と流通のフレームワーク策定を目指す団体。

今回のシンポジウムは、都内のNTT武蔵野研究開発センタが会場。NTTはcIDf幹事企業の1つ。現在cIDfには、東京大学、NTTグループ、電気メーカー、出版・印刷業を中心に54の企業・団体が所属している
今回のシンポジウムは、都内のNTT武蔵野研究開発センタが会場。NTTはcIDf幹事企業の1つ。現在cIDfには、東京大学、NTTグループ、電気メーカー、出版・印刷業を中心に54の企業・団体が所属している



コンテンツの個体識別のメタ情報と、使用契約事項を識別子で記述

今回、仕様書の1.0として発表されたのは、(1)著作権に関する許諾契約や権利処理のシステム、(2)ID発行や登録に関するデータベースのシステム、(3)著作物登録や透かし埋め込みなどコンテンツ処理のシステム、(4)課金決済システム--、この4構造のシステムの構築と相互の連携に関するフレームワークの策定と、これらのシステムの前提となるユニークなID“コンテンツID”の設定に関するもの。

“コンテンツID”とは、作品を特定するメタ情報(識別子)で、“ユニークな番号”や内容概要、権利属性、といった情報から構成されるもの。コンテンツの個体を識別するための“ユニークな番号”は、コンテンツの背番号にあたる“IDセンタ番号”のこと。この番号付与のためのフォーマットは、Indecs(後述)が策定するフレームワークに準拠させる予定。

cIDfが考える“著作権を保護を前提とした流通フレームワーク”を実現するためには、このIDセンタ番号と、コンテンツ流通のための契約事項を記述した“Distributed Contents Descripter(流通コンテンツ記述子:DCD)”という2つのメタ情報の埋め込みが重要なポイントとなる。

これらメタ情報の記述には、普及・導入の度合いなどを加味してXMLを採用する。IDの埋め込み方法については、複数の透かし方式を認めるが、IDの埋め込みに使用した透かし技術の情報を認識させるための識別子を“メタ透かし”として別に埋め込む。

なお、仕様書1.0策定の時点でID埋め込みの対象となるメディアは、静止画のみ。

次に、コンテンツの不正利用の監視について、IDセンタ番号やDCDなど著作権情報を登録したデータベースを構築し、運用センターを設置する。このデータベースに蓄積された情報をもとに、ネットワーク上で流通するコンテンツの実透かしとメタ透かしに対し検索をかけることで、例えばDCDの消去/改ざんなど、コンテンツの不正利用を検知するという。

Indecsのフレームワークに基づき変換辞書とRDF/XML表現を規定


cIDf発起人であり、会長を務める東京大学先端科学技術研究センターの安田浩教授。コンテンツIDに関するプロジェクトは昨年8月に始まったばかり cIDf発起人であり、会長を務める東京大学先端科学技術研究センターの安田浩教授。コンテンツIDに関するプロジェクトは昨年8月に始まったばかり



cIDf同様、コンテンツ背番号の体系化作業をはじめた知的財産管理機構が世界にいくつかある。cIDf事務局によれば「欧州連合(EC)が主催するIndecsは、メタ情報の定義に関するフレームワークとそのXML/RDF表現に関する策定作業が最も進行している団体」という。cIDfは、すでにIndecsから'99年12月にAffiliate(提携団体)として認定を受けており、コンテンツIDの策定にあたってはIndecsに互換性を持たせる形で変換辞書やXML/RDF表現を採用する予定で。なお、Indecsは設立当事の規約で2000年3月に解散するが、組織を再編し継続して活動を行なう見込み。

Indecsを含め、事務局が外部協調団体として内外の8団体を列挙*した。そのうちの1つ、ISOの下部組織にあたる標準化団体MPEGに対しては、動画符号化形式の1つ“MPEG-21”におけるIPMP(Intellectual Property Management & Protection:知的財産管理と保護)に関して、技術提案を行なう予定。

*国内の団体として(財)画像情報教育振興協会、(社)デジタルメディア協会、(財)マルチメディアコンテンツ振興協会、任意団体のメディア・アーティスト協会を、国際団体としてIDF(International DOI Foundation)、MPEG(Moving Picture Experts Group)、TV-Anytime Forum。MPEGとの連携について、ascii24では、先にcIDf事務局に寄稿を依頼し記事を掲載している

2000年2月より実証実験を開始

今回発表された仕様書1.0では、(1)コンテンツID流通モデルのなかで、特許や肖像権といった他の知的財産権をどう扱うか、(2)PC/PDA/情報家電などユーザーのアクセス環境に左右されずコンテンツの流通を制御するシステムをいかに構築するか、(3)データベースの記述形式をどうするか--といった課題が残されたままになっている。

また、cIDfの法務検討ワーキンググループに参加する柳原敏夫弁護士は、cIDfの技術オリエンテッドの姿勢に苦言を呈している。「cIDfがクリエーター中心の場であったなら、確定申告締切り(3月15日)の直前に大事なお披露目を設定するわけがない。給与所得者である技術者の人たちの場であることを証明している」

このように、技術的課題はもとより、コンテンツホルダーに同プロジェクトの存在を広く認知させるためにも、同フォーラムでは実証実験をいくつか計画している。

その第1弾として、3月1日に始まった東京大学博物館の企画展“デジタルミュージアム2000”のデジタルアーカイブシステムの構築に協力。静止画データを対象に、仮のコンテンツIDを発行。電子透かし/メタ透かしを埋め込み、管理センターシステムや、コンテンツの利用状況を透かし情報を使って追跡する“ネットウオッチャー機能”を稼動させている。

“デジタルミュージアム2000”で公開する静止画にIDを付与。写真左の土器に、うっすらとIDが浮かんでいる
“デジタルミュージアム2000”で公開する静止画にIDを付与。写真左の土器に、うっすらとIDが浮かんでいる



そのほか、官民共同プロジェクトの京都デジタルアーカイブ推進機構や、渋谷のビット・バレーの企業数社、柳原敏夫弁護士事務所が中心となって行なっている“クリエーター勉強会”などと連携をとって、今年から2001年にかけてコンテンツIDの流通システムに関する実証実験行なわれる予定。2000年7月には、これら実験の結果を踏まえ、ID埋め込み対象のメディアを拡大した形で仕様書1.1を公開するとしている。

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