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アップル、サーバーソフトウェアの最新バージョン『MacOS X Server 1.2』のパッケージ版を発表。NetBoot機能で一元的な管理を可能に

2000年03月09日 00時00分更新

文● 野々下裕子

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2日、アップルよりサーバーソフトウェアの最新バージョン『MacOS X Server 1.2』のパッケージ版が発表された。今回のバージョンはアップルの最高機種、Power Mac G4マシンとOS 9に対応したもので、運営面でもいくつかの改良がなされている。Mac OS X Server 1.2のパッケージ版は『Network Assistant 4』とバックアップソフト『Omni Backup』がバンドルされて、価格は5万9000円。

3月16日からThe Apple Storeをはじめ、NTTアドバンステクノロジ(株)、(株)大塚商会、キヤノン販売(株)、(株)サイバー・ラボ、(株)ステラクラフト、(株)Tooから販売される。

またアップルは、ネットワーク管理者を対象にしたMac OS X Serverの有償のトレーニングコースを4月から行なうと発表しており、その普及へ本格的に力を入れていく予定だ。

さらに、同社のアプリケーションサーバソフト『WebObjects 4.5』も同時に発表されており、今月下旬に発売が予定されている『Machintosh Server G4シリーズ』と合わせて、トータルなサーバー開発環境が整ったことになる。

ストリーミングサーバーやNetBoot機能も提供

今回の発売先駆けて、“MACWORLD Expo/Tokyo 2000”のコンファレンスプログラムの1つとして“MacOS X Server徹底活用術”と題するプログラムが催され、MacOS X Serverを使ったデモ発表が行なわれた。以下、本稿では、そのコンファレンスの模様を報告する。

講師は、プログラムタイトルと同じ著書を共同で執筆した(株)ステラクラフトの佐藤徹氏が務めた。基本的な構造説明から“NetBoot”実験まで、トータルで実践的な内容となっており、会場もほぼ満席状態であった。

講師役であるステラクラフトの佐藤徹氏は、『MacOS X Serverの徹底活用術』の著者の1人であり、NeXTコミュニティーでも活躍する人物。Mac OS Xの展開にあたり、NeXTの技術が多く含まれている点にも注目している
講師役であるステラクラフトの佐藤徹氏は、『MacOS X Serverの徹底活用術』の著者の1人であり、NeXTコミュニティーでも活躍する人物。Mac OS Xの展開にあたり、NeXTの技術が多く含まれている点にも注目している



MacOS X Serverの画面
MacOS X Serverの画面



MacOS X Serverはビジネス市場向けだが、ストリーミングに対応

佐藤氏は、まず最初にMacOS X Serverの位置付けについて、アップルでは数少ないビジネス市場向けの商品であると説明した。iReviewのようなダイナミックパブリッシングに対応し、リアルオーディオに対抗するQuickTimeストリーミングサーバーとして運用できるとした(*)。

(*)ファイルサーバー、プリントサーバー、ウェブサーバーといった通常のサーバー機能に加え、インターネット上で高品質な動画の配信を実現するQuickTime ストリーミングサーバーを提供。ミュージッククリップの配信、ライブ中継、インターネット上のラジオ放送など動画や音声の配信に活用できる

構造については、核となる部分がオープンソースとなっており、“Mach”という中心のマイクロカーネルを取り巻くように、“Java”、“FileShare”、“NetBoot”といった6つの機能で構成されている。それぞれが仮想メモリーで動くのでワイアダウンせず、またアプリケーションに影響されず動作する。

MacOS X Serverの構造を示す図式。中心のMachコアを取り囲むように6つの機能で構成されている
MacOS X Serverの構造を示す図式。中心のMachコアを取り囲むように6つの機能で構成されている



たとえば、複数のソフトを動かすと、それぞれの処理スピードは落ちるが、サーバーがリクエストを受け付けている時に処理側がバグで止まっていても、受け付け部分そのものが止まることはない。その点ではEC向けソフトにも向いている。製品版にはあらかじめ開発環境を含み、オプションで課金や認証などのモジュールを追加できる。

デベロッパー向けのトランザクションは50TPMで、20名ぐらいのスケジュール管理なら十分に対応する。

ネットワーク上の複数のMacを一元的に管理できるNetBoot機能

カンファレンスの目玉となったNetBoot実験では、MacOS X ServerがインストールされたG4マシンにつながれた端末から、それぞれ設定された環境に応じたシステムを立ち上げたり、ソフトを利用したりといった操作が行なわれた。NetBoot機能を使って端末を立ち上げるとログイン画面が現われ、利用者はIDとパスワードを入れるだけで環境を設定できる(*)。たとえば、あるユーザーはファイルの書き換えはできるが、ソフトの初期設定は変えられないなど、クライアントに応じた細かい設定も可能。さらに設定はMacユーザーにとってはおなじみの共有設定と似ているので、違和感なく操作できる。

(*)それぞれのユーザーのプリファレンスは、ユーザーのログオンに1対1で対応しているので、ネットワーク上のどのマシンからログインしても、ユーザーがカスタマイズしたデスクトップを利用できる

MacOS X Serverのクライアント設定画面。Macユーザーにはお馴染みの“共有設定”画面と似ているので、Mac OSに慣れていれば直感的に設定できる
MacOS X Serverのクライアント設定画面。Macユーザーにはお馴染みの“共有設定”画面と似ているので、Mac OSに慣れていれば直感的に設定できる



NetBoot実験の様子。iMac DVからNetBootでMac OS9を立ち上げているところ。その際には端末側のマシンパワーを使うので、Server側にほとんど負担がかからず、安定して運用できる
NetBoot実験の様子。iMac DVからNetBootでMac OS9を立ち上げているところ。その際には端末側のマシンパワーを使うので、Server側にほとんど負担がかからず、安定して運用できる



NetBootした際のログイン画面。ここでIDとパスワードを入れると、端末に関係なく設定通りの環境が用意される
NetBootした際のログイン画面。ここでIDとパスワードを入れると、端末に関係なく設定通りの環境が用意される



「最近、教育市場からMacOS X Serverの発注が増えているが、それはアップルが教師への徹底したヒアリングによってX Serverを開発しているから。IPアドレスの自動認識など、誰でも使いやすくすることでサーバー管理といった人的資源を削減してくれる。さらにNetBoot機能はマシンに依存せず、どんな端末からでも簡単にそれぞれの環境を設定できるので、マシンのコストの削減にもつながる」と佐藤氏。

「ログイン名は日本語も使えるし、デスクトップ画面を固定設定できるAt Easeのようなソフトとの併用もできる。コンピューターリテラシー教育にも適した教材になる」。また、学校向け以外にもオフィスでのトータルハンドリングに向いていると佐藤氏は付け加えた。

オープンソース戦略で、設定ツール関連の製品も

バージョン1.2では、過去2回に配布されたパッチの内容が総合的にまとめられていて、信頼性と安定性が向上している。SCSIカードやEthernetカードにも対応し、Mac OS9ではマルチユーザー設定と連携。Apple Share 3.8.6が必要だが、クライアント側のメモリーが6MBあればNetBoot機能が使える。

一方、現段階で不足しているのはApach DNS、ServerMail、MLサーバーなどの設定ツール。これらはサードパーティーで開発が進んでいて、すでに発売されているものもある。それ以外では、Windowsとの共有ができない、ソリューションプロバイダーがないといった点がある。これらは近い将来には解決されていくだろう。

その理由として佐藤氏は、アップルがオープンソース戦略として“Apple Public Source Lisnece”を進めていることを挙げている。並行して“Darwinプロジェクト”も進行しており、いずれもLinuxコミュニティーのように誰でも参加できるので、今後こうした場所から新製品が生まれる可能性も高くなる。現在は日本語への対応はないが、興味がある人は積極的に参加してほしい、と佐藤氏はコメントした。

OS X Serverを補完するツール(25)や、オープンソース戦略についての解説(26)も
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