日本AMD(株)は、東京・新宿のホテルで1GHz動作『AMD Athlonプロセッサ』の記者発表会を開催した。
昨日の米AMD社の発表は、米東部標準時の月曜日午前0時というのも異例だったが、通常数日は余裕のある発表会の案内が、各メディアに送られたのも昨日になってから。さらに発表会場のホテルも、日本AMDが通常の発表会で利用するホテルとは別のホテルで、ぎりぎりまで情報を公開しない姿勢とも、最後まで発表日を悩んだともとれるものだった(後述)。
「またAMDが勝ってしまった」――堺社長
日本AMDの堺和夫代表取締役社長 |
発表会の席上、挨拶に立った日本AMDの堺和夫代表取締役社長は「またAMDが勝ってしまったということですね」と切り出した。「特に今回はキリの良い“1GHz”のプロセッサーをAMDが先に出したということに意味がある。競争をするからにはやはり勝たなくてはいけない。総合的な力を示し、将来の発展を担うという意味で、(競争に勝つということは)大変重要だ」と、マイルストーンとなる1GHzを米インテル社に先駆けて発表できたことを強調した。
「AMDのプロセッサーは、ゲートウェイ、日本電気、富士通などのメーカーにも採用され、さらにまだまだいろいろなメーカーからもAMD搭載PCが発売される。家庭向けとしては大成功だ」「これからは企業向けにも力を入れていきたい。そしてさらには、ワークステーション市場にも参入したい。コンペティターにあまり甘い汁を吸わせずに、頑張って行きたい」と、今後は企業向けパソコンや、ハイエンド市場へ注力することを示した。
「1GHzはペーパーローンチではない」――吉澤取締役
日本AMDの吉澤俊介取締役 |
続いて吉澤俊介取締役が、AMDの今後の戦略について簡単に説明した。吉澤氏はその中で、インテルとAMDの競争を駅伝に例え「インテルの走者はまだ第6走者。AMDはすでに第7走者で、まだ2次キャッシュを統合したりしてどんどん速くなる。さらに控えの第8走者もいる」とインテルとの競争に自信を見せた。
ビジネス戦略としては「Athlonの投入以後、K6シリーズとあわせ、パソコンマーケットで上から下まで対応できるようになった。これを企業系へも売っていきたい」とし、技術的には「銅配線技術を使ったプロセッサーを第2四半期の終わりまでには市場投入する。来年に投入予定の、第8世代プロセッサー“SledgeHammer”(スレッジハンマー)も着々と準備が進んでいる」とした。
さらに「AMDが創立されて31年、日本AMDは25年になる。ここまでやってこれた条件は3つ。1つめはプロセッサーの優秀なデザインができること、2つめはプロセステクノロジー(と工場)を自前で持っていること、3つめは需要に応じる生産能力があること」と前置きした後、今回のAthlon-1GHzについて、「強調したいのは、これはペーパーローンチではないということ。すでにコンパック、ゲートウェイに対してプロセッサーの出荷を開始している」と、実際に製品が出荷されていることをアピールした。
『K6-2+』、『K6-III+』はモバイル向けのみ――ローガン氏
日本AMDのローガン氏 |
次に、北アジアCPGマーケティング部部長代理のサミュエル・ローガン(Samuel
Rogan)氏がAMDのCPUコアのロードマップを示して説明した。
それによると、今年投入予定の“Thunderbird”(現在のAthlonの後継となる新Athlon)は、現在コアの動作クロックの3分の1(1GHzバージョンの場合では333MHz)でしかアクセスできない2次キャッシュを、オンダイにすることでフルスピードアクセスできるようにしたもので、インテルの高クロックのPentium
IIIおよびWillametteに対抗する製品とした。“Spitfire”は、Thunderbirdと同じくフルスピードの2次キャッシュ(ただし容量はThunderbirdより少ない)と、200MHzのFSBを持ち、浮動小数点演算性能に優れたプロセッサーで、Intel
Celeronに対向する製品と位置づけている。
また、デスクトップに投入予定とされていた『K6-2+』(オンダイ2次キャッシュを持つK6-2)は、モバイル用としてのみ投入されることが確認された。
AMDのCPUコアのロードマップ (クリックで拡大表示します)
今後の高クロック(900MHz以上の)Athlonの出荷量については、「数10万個と見ており、そのうちの多くは1GHz。1GHzのものは、3月末まではすべてコンパックとゲートウェイに供給する」(吉澤取締役)とコメントされた。
先週木曜日に発表日を最終決定
なお、Athlon-1GHzの発表日が決定したのがいつかということに関しては、「米国で先週の木曜日(現地時間)に決定した」(ローガン氏)と、かなり急だったことが本誌の調べでわかった。インテルが8日にPentium III-1GHz発表するという噂がながれており、それを聞いて、急遽前倒しにしたのでは、という質問も記者からあがったが、「前々から準備してきたこと。その証拠に搭載パソコンも発表されたし、プロセッサーも現実に出荷されている」(吉澤取締役)とした。
海外のメディアや業界の噂などを総合して推測すると、おそらくAMDは複数の発表日を想定して準備しており、インテルよりも先に1GHzプロセッサーの発表をするため、インテルの動向を見て最終決定した、というのが真相に近いと思われる。
記者発表の最後に挨拶した、日本ゲートウェイ(株)のロジャー・ヨーダー(Roger Yoder)氏。「今朝の9時に発売開始したが、9時半には最初の1台の注文を受けた」という |
『Gateway Select 1000』 |