米Virata社は6日、都内で記者説明会を開催し、家庭向けインターネットアクセス機器用の通信用プロセッサー『Beryllium』(ベリリウム)と『Boron』(ボロン)を発表した。
国際セールス部門副社長、ダン・カー氏 |
Virataは、カリフォルニア州サンタバーバラに本社を置く、広帯域の通信装置向け半導体(通信プロセッサー)のメーカー。'93年にイタリアのOlivetti
Research Laboratory社から分離独立した企業で、'98年に米RSA Communications社、2000年1月に米D2
Technologies社を買収した。製造工場を持たないいわゆる“ファブレス”企業。
同社の国際セールス部門副社長ダン・カー(Dan Karr)氏によれば、通信プロセッサーと、その通信ソフトウェアをセットにして供給できる唯一の企業。現行のADSL用通信プロセッサー『Hydrogen』(ハイドロジェン:水素)と『Helium』(ヘリウム)は、スウェーデンのエリクソン社、米Next
Level Communications社、ドイツのシーメンス社といったDSLAM(DSLアクセス多重化装置)メーカーの製品を通じて、米US
West社やドイツのドイツテレコム社など、世界各国のキャリアーに納入されているという。
調査会社の米データクエスト社によると、*ADSL
CPE市場は、'99年に190万台が2000年には530万台、2001年には920万台と急激に伸びるとしている。ただ、この予測に対してVirataでは、「低く見積もりすぎている。今年は'99年の4倍にはなる」(同社製品管理部門ディレクター、デビッド・ムアハウス(David
Moorhouse)氏)と述べている。
ADSL CPE(Customer Premises Equipment):ユーザー側に設置されるADSLモデムなど。電話局側に設置する装置に対応する用語。
製品管理部門ディレクター、デビッド・ムアハウス氏 |
今回発表されたBerylliumとBoronは、現在レイヤー1(物理層)用チップと、レイヤー2(データリンク層)およびレイヤー3(ネットワーク層)の処理を行なうチップの、2チップで構成されているDSL装置に対して、レイヤー1から3までを1チップで行なうという製品。
レイヤー1チップはフランスのアルカテル社や米テキサス・インスツルメンツ社などが供給、レイヤー2と3の処理を行なうチップはVirataと米モトローラ社が供給しており、さらにそれぞれのソフトウェアが別の会社から供給されている状態という。BerylliumとBoronについては、ソフトウェアも含めて同社がセットで供給することで、最大40パーセントのコスト削減が見込めるとしている。
BoronはPCIとUSBインターフェース、V.90対応ファクスモデム機能を統合する、パソコン用のPCIカード型ADSLモデム向け製品。Berylliumは100Mbps
Ethernetインターフェースを備え、ADSLホームルーターとしての機能が1チップにまとめられている。現在サンプル出荷が開始されており、6月には量産出荷を開始予定。チップはいずれも台湾のUMC社の半導体工場で、0.25μmプロセスによって製造される。Boronとアナログフロントエンドチップ『Neon』と組み合わせた価格はおよそ25ドル(約2700円)、Beryllium+Neonでは30ドル(約3200円)としている。
日本担当セールスマネージャー田溶吉氏 |
日本担当セールスマネージャーの田溶吉氏によると、Virataは日本市場に対し、今後の国内ADSL市場の伸びと、世界市場への製品の供給元として非常に期待しているという。現在のところ日本のメーカーに直接チップを供給していないが、これから通信機器メーカーを狙ってセールス活動を行なっていきたいとする。
日本では、東西のNTTがISDNを強く推進してきたが、それについてどう考えているかという問いには、「日本と同じかあるいはそれ以上にISDNが広まっていたドイツを始めフランスやイタリアでも、ADSLへのシフトが急速に広まっており、日本においても同様にADSLへの流れが広まる」(ムアハウス氏)という考えを示した。
BoronやBerylliumを搭載した、ルーターや統合アクセス装置(Integrated
Access Device、IAD)やセットトップボックスといった製品は、まず台湾系のメーカーから登場するとしている。例えばBoronを搭載したPCIベースのADSLモデムでは、小売価格で100ドル(約1万700円)以下になるという見通しを明らかにした。