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大企業とビジネスのコラボレーションができる時代、中小企業基本法改正も追い風――“女性SOHOサミット”より(前編)

2000年03月06日 00時00分更新

文● 船木万里

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2日、幕張メッセで開催された“IBM総合フェア”のプログラムの一環として、“女性SOHOサミット――広がる女性SOHO市場とビジネスの可能性”と題した自主企画シンポジウムが催された。主催は女性SOHOサミット企画委員会。インターネットやパソコンの普及により、SOHOというビジネススタイルが女性に社会参加のチャンスをもたらしている。各分野で活躍するパネリスト5名が、SOHOの現状と今後の展望について、各自の立場から意見を語った。

シンポジウムのパネリストは、日本アイ・ビー・エム(株)の取締役、内永ゆか子氏、通商産業省の関東通商産業局産業振興部指導課長 久野美和子氏、弁護士(野田・相原・石黒法律事務所)の相原佳子氏、日経BP社の日経PCビギナーズ21副編集長、大塚葉氏、(株)エイガアルの代表取締役兼W-SOHO代表、伊藤淳子氏の5名。(有)クリスタルリンクの代表取締役、戸田江理子氏が、コーディネーターを務めた。

コーディネーターを務める、クリスタルリンクの戸田江理子氏コーディネーターを務める、クリスタルリンクの戸田江理子氏



日本でのネットビジネスは今年にも急成長

まず、戸田氏が「エイガアルの伊藤さんが'97年に、インターネットなどを利用した女性のSOHOを支援するホームページを立ち上げた。それから3年経って、ネットビジネスに関わる女性たちもレベルアップしてきた。パワーのある女性がたくさんいて、ビジネスに関わっているということを、さまざまな人に知ってほしい、アピールしたいということでこの企画を実行することになった。日本アイ・ビー・エムと日経BP社の協力を得て本日を迎えることができた」と、今回のシンポジウム開催の経緯を簡単に紹介した。

日本アイ・ビー・エム(株)の内永氏は、「日本は現在、インターネット普及率が18パーセントで、米国の3年前の状況と同じ。こうした新しいメディアは、15パーセントを変曲点として爆発的に普及するものなので、今後いっそう普及のスピードが早まると思われる。今は、eコマースが既存のビジネスに取って変わろうとする状態だが、もう少し進めば、ネット上での仲介業など、新しいビジネスの形も生まれてくるはず。今後は100兆円ビジネスとも言われるネットビジネスだが、日本の場合は携帯電話の普及率が大きいため、3年といわずもっと早い段階で米国の状況に追いつき、大きく立ち上がるのではないかと考えている」と、日本でのネットビジネスが今年にも急成長することを示唆した。

日本アイビーエム、内永ゆか子氏日本アイビーエム、内永ゆか子氏



「今までは、ビジネスを始めるには資産や人が必要だったが、これからはネットを利用して身軽に始められる。ネットは男女差のまったくない世界で、女性にとってバリアが取り払われている。アイ・ビー・エムでも、在宅勤務制度を取り入れるなど、働き方を柔軟に捉え始めている。自己実現のための環境が整ってきた今、女性の能力を十分に生かしていって欲しいし、我々自身でも実践していきたいと考えている」と述べた。

中小企業基本法を改正。省庁でも積極的にSOHOを支援

通産省の久野氏は、これまでの日本経済の構造について「2、3年前までは、日本の産業構造は閉鎖的な横並び社会だった。しかし、経済がグローバル化している状況で、このような産業構造では日本は生き残れない。通産省では、クリエーティブな社会に向けての一大改革として中小企業基本法を改正した。個人の企業化を助け、一人ひとりの創造性、やる気を伸ばすためのツールを整備していこうとしている。省庁は本来は国民に対するサービス業なのだから、どんどん利用していっていただきたい」と、省庁でも積極的にSOHO支援を行なうことを表明し、今後の個人の持つビジネス力に期待を寄せた。

通商産業省、久野美和子氏通商産業省、久野美和子氏



  弁護士の相原氏は「保守的な考え方かも知れないが、事業を継続させるためにはアイデア、創造性だけでは不安。やはり資金調達や人材育成など、バックアップが必要なのでは。頼りになる人材を見極めて、ネットワークを広げていくべき」と述べ、ビジネスの危険性について警告した。また「パソコンが苦手で、ビジネスパワーの流れから置いてきぼりになっている、とあせりを感じる女性たちがいるのも事実。情報があふれている現在、どれを選択するか自分の目で見極め、自己責任で情報を把握していく必要がある」と語った。

弁護士(野田・相原・石黒法律事務所)、相原佳子氏弁護士(野田・相原・石黒法律事務所)、相原佳子氏



ネットワークの力で、自分たちのやりたい事業を企業と一緒に

日経BP社の大塚氏は「以前のパソコン誌は、何が書いてあるかまったく分からないようなものだった。私はビギナーとパワーユーザーの橋渡しをするような媒体を作りたいと考え、初心者や女性向けのパソコン誌をいくつか立ち上げてきた。ライターやカメラマンなど、フリーランスで仕事をする人たちと関わって仕事をしてきたが、その中でも、さまざまなポイントで力になってくれたのはパワフルな女性たち。SOHOという事業形態だと、取引先に信用してもらえないという悩みも聞くが、小回りのきく個人企業と、人とお金を掛けられる大企業、それぞれの良さを生かしながらビジネスをコラボレーションしていければ、より良い結果を生み出せると思う。インターネットの利用により、全国のどこにいても支障なく仕事ができる今、女性ももっと社会に進出して、活動を広げていって欲しい」と語った。

日経BP社、大塚葉氏日経BP社、大塚葉氏



他会場での講演を終え、駆け付けてきたエイガアルの伊藤氏は「今、ビジネスに積極的な女性のパワーを表現したい、という私の“思いつき3秒”で、このシンポジウム企画を始まったが、さまざまな人の尽力によって今日を迎えられた。運営スタッフのメーリングリストなど、1日1000通を超えるメールで多くの人とコンタクトを取り、企画が具体化していった。アイ・ビー・エム、日経BP社をはじめ、多くの企業にも快く協力していただき、感謝の気持ちでいっぱい。今回は、インターネットのネットワークをうまく活用したからこそ、実現したと考えている。ネットワークの力で、自分たちのもの、やりたいことを企業と一緒に実現できる社会になってきた。今後は皆で一緒に、新しい市場を創出していきたいと考えている」と、今回のイベント実現の経緯を語った。

エイガアル、W-SOHO代表、伊藤淳子氏エイガアル、W-SOHO代表、伊藤淳子氏



また自社の契約SOHOスタッフについて「ネットワークを利用しているといっても、ずっと家にいっぱなしでは同じ会社という共有感覚を持ちづらいのも事実。月に何回かは顔を合わせる機会を作り、コミュニケーションを図っている」と述べ、同じビジネス空間を共有するという“face to face”でのコミュニケーションのためには、フットワークの軽さも重要なポイントであると語った。

最後に「SOHOといっても、全員が企業の社長になるべきだとは思わない。今は、企業内でのサテライトオフィスや、家内制手工業のようなネットショップビジネスなど、1人ひとりに合った仕事の形を選択できる時代。こうした中で、さまざまなチャンスを生かしていって欲しい。今回のイベントを機に、1人ひとりは個性的でありながらも、全体では大きなパワーを持てるような、ゆるやかなネットワークを作っていければと願っている」と結んだ。

パネリストはそれぞれ各自の立場から、ネットワーク社会におけるSOHOの可能性を語った
パネリストはそれぞれ各自の立場から、ネットワーク社会におけるSOHOの可能性を語った

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