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【E-ビジネス・ストラテジー・フォーラム Vol.4】化粧品のサンプル申込者をフォローしたウェブでは、積極的参加者の半数近くが購入した

2000年03月06日 00時00分更新

文● 編集部 中野潔

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コンファレンス“E-ビジネス・ストラテジー・フォーラム”が、3月1日~2日、東京・恵比寿のウェスティンホテル東京で開かれた。世界41ヵ国でエグゼクティブを対象にしたイベントを催している英International Communication for Management Group社(ICM)の主催。本稿では、2日目午後の鐘紡(株)のカネボウ化粧品本部 化粧品販売促進グループ マネージャー、松田一仁氏、バリュークリックジャパン(株)の取締役メディア部長、原野守弘氏の両氏の講演について報告する。

マス広告の前にウェブだけで1万人のモニターが

鐘紡(株)の松田一仁氏は、マスメディア発表の2ヵ月前にウェブによるプロモーションを始めた化粧品ブランド『Freya(フレイア)』を例に、プロモーションと顧客サポートにおけるウェブ活用について説明した。

松田氏は、化粧品の中でも、カウンセリング化粧品という、対面販売を前提としたカテゴリーを担当している。『Freya』は、肌タイプの診断、サンプル請求、使用方法の説明において、電話、ダイレクトメール(DM)、ハガキでなく、ウェブと電子メールを用いることで対話を継続し、新たなユーザーを取り込めないか--という目論見を抱き、2年前に開始した。実際の購入には、既存の流通チャネルを使ってもらう。

まず、'98年8月に、女性向けウェブサイトにバナー広告を出し、『Freya』のオンライン肌タイプ診断ページに誘導した。診断結果に基づき、4種類の肌タイプに分類し、その肌タイプに合ったサンプルを申し込んでもらう。オンラインで、サンプルモニターが2週間で1万人集まった。

'98年9月にマス媒体での広告、店頭サンプル配付を開始。オンライン申込者には、サンプルを郵送で送った。モニターになった人は、ウェブの日めくりアドバイスに従い、肌の手入れを7日間、続ける。毎日、診断項目に答えると、1週間後に、カルテが完成する。同時に、終了後のアンケートに回答してもらう。

日めくり完了者の半分近くが実際に購入

7日間の手入れを完了した(日めくり完了者と呼ぶ)ユーザーには、毎週、電子メールを送ってサポートし、1ヵ月後、3ヵ月後にウェブでのいろいろな回答なども見て肌の変化を診断する。実際に、商品が店頭に並んだのは、'98年10月である。

同社では、サンプル請求したうち、実際に購入した割合を24パーセントと推計している。購入率は、サンプルを受領しただけの人では、7パーセント、日めくりを始めたが未完了の人では、15パーセント。これに対し、日めくり完了者の購入率は、46パーセントに達した。また、日めくり完了者3400人のうち、1800人がアンケートの自由回答欄に記入してきた。

『Freya(フレイア)』のウェブサイトは、'99年3月末でいったん閉じた。しかし、再開の要望が強いため、'99年7月にフレイヤクラブのページとして再開した。

“マーケティング”は死んだ

バリュークリックジャパン(株)の原野守弘氏は、インターネットで広告やプロモーションがどう変わるかについて、自分自身が大手広告代理店にいたときの扱い事例をあげながら、説明した。まず、企業にとってのインターネットが、5つの世代を経て変遷していると述べた。(1)'94年からの広報的活用では、パンフレットの公開の場として、(2)'95年からの広告的活用では、まさしく広告として、(3)'97年からの営業利用ではカタログ請求などの手段として、(4)'98年からのEC開始では、楽天市場に代表されるように電子商取引の場として、利用されている。第5世代では、CRM (Customer Relationship Management)などのために全社対応で用いる時代に入った。

インターネット革命を革命というからには、勝利者がいたはずである。勝利者は、消費者であり、インターネットは完全な“消費者優位”状態を生み出した。その第1の例は、告発系サイトへの世の中の注目である。また、興味を引っ張り、かつ、映画を見た後の余韻を再確認する、優れたウェブを駆使して、ネットによる周知に成功した映画『ブレアウィッチプロジェクト』も、その例である。この映画は、制作費350万円で、140億円の興業収入をあげた。

第3の例は、ネットだけで広告し、購入者だけにウェブのパスワードを渡すという手法で、コンビニエンスストアのベスト10入りしたサントリーのウイスキー『無頼派』である。

これらの例が示すように、供給者発想で組み立てられた、かっこ付きの“マーケティング”は、死んだ。“告知”するのでは、だめで、消費者に“発見していただく”道を探らねばならない。

“Value Click”と“mobile Click”

インターネット広告の例として、(1)バナー広告、(2)電子メール広告、(3)編集タイアップともいえるスポンサーシップ、(4)販売成果により掲載料を支払う、アフィリエートプログラム--の4つをあげた。(1)には、露出保証型、期間保証型、バリュークリックが開拓したクリック保証型などがある。携帯電話上のインターネット利用も広がっており、バリュークリックは、“Mobile Click”方式を投入している。

また、米国を中心に、マスメディアや屋外広告でURLを告知して、インターネットに誘導するパターンが増えている。そして、ウェブに誘導したあとは、再び選択してもらい、継続してもらうために、電子メールなどでフォローする必要がある。これらの最適な組み合わせが競争力の源泉になる。

インターネット広告では、クリック、資料請求、成約などの効果が白日のもとにさらされる。このため、広告主の関心は、読者の質に移っていく。一方で、短期の数字の上がり下がりに一喜一憂するのは、得策でない。ライフタイムバリュー、すなわち、その顧客の生涯購買額におけるシェアをどれだけ獲得できたかを考えるべきである。

“ネットエスクペリエンス”の向上に合わせる

消費者の“ネットエクスペリエンス”が向上するので、その発想に立つことが必要である。広告、プロモーションといったネット広告と、販売、ロジスティックス、CS (Customer's Satisfaction)といったネットビジネスとは、不可分になる。入り口から出口まで、“バナーから始まるストーリー”をいかに作り上げるかが大切である。

これまでのマスメディアは、放送免許が前提のテレビや宅配網が前提の新聞など、流通支配力によって成立していた。インターネットメディアは、雑誌に近いモデルであり、消費者に選択されなければ成立しない。しかし、“習慣”に組み込まれれば強い。

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