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【E-ビジネス・ストラテジー・フォーラム Vol.3】'99年の本田車の国内販売では、3パーセントがインターネットをきっかけにしている?

2000年03月03日 00時00分更新

文● 編集部 中野潔

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コンファレンス“E-ビジネス・ストラテジー・フォーラム”が、3月1日~2日、東京・恵比寿のウェスティンホテル東京で開かれた。世界41ヵ国でエグゼクティブを対象にしたイベントを催している英International Communications for Management Group社(ICM)の主催。本稿では、2日目午後の4人の講演のうち、本田技研工業(株)の広報部 NC・社内広報ブロック ブロック・リーダー、渡辺春樹氏とインターネットビジネス研究所の理事長、杉山勝行氏の講演について報告する。

将来はe-Brandingの段階に進んでいく

本田技研工業(株)の渡辺春樹氏は、同社のウェブによるNC (Network Communication)と、特にスポーツカー、『S2000』を巡る活動について説明した(下記は原則として、本田広報の公式見解ではない)。

本田は、'96年にウェブに取り組み始めた。ここではまず、新メディアとして位置づけている。その後、生産や販売の情報をユーザーと共有するインターネット広告、インターネットPRの段階に移行した。現時点は、e-CR (Customer Relationship)やワン・トゥー・ワン・コミュニケーションを双方向で育むインターネットセールス、インターネットマーケティングの段階である。今後、顧客ロイヤリティーの醸成に結び付けるe-Brandingの段階に進んでいく。

ウェブマスターのチームは専任で数名、各部門や社外スタッフでかかわっている人を含めると数十人。少しでもNCプロジェクトに関係している人を含めると数百人という所帯である。

ウェブの役割を、宣伝領域、マーケティング領域、CR領域に分けることができる。マーケティング領域では、インターネットで助けた車購入が、本田車の全購入の2~3パーセントという実績を上げている。CR領域では、約3万人との接触がある。

スポーツカーのような市場ではインターネットだけでビジネス成立か?

本田のウェブサイトへのアクセス総数は、現在、1日約30万ページビュー。マスメディア企業のサイトのうち、小さいところだと、この10倍程度である。テレビや新聞では、一般企業の試みなどマスメディア企業にまったくかなうわけがなかったが、ウェブでは、勝負になる感触を得ているという。

本田のウェブサイトの顧客満足度だが、満足している割合が97パーセント、再閲覧意向を示す割合が98パーセントと、きわめて高い。大手検索サイトに本田ウェブサイトのバナー広告を1日数十万円で出すと、数万人が本田ウェブサイトを訪れ、その結果、数百部のカタログ請求がなされる。カタログ請求数と購入数とでは、1桁違うので、数十万円のバナー広告が、数十人の購入に結びついたことになる。

ウェブなどでカタログ請求して、その後、購入した率は、'97年が大体11人に1人、'98年と'99年が大体8人に1人。一方、ウェブによるカタログ請求は、'97年が5万から10万件の間で5万件に近い方、'98年が10万から15万件の間で10万件に近い方、'99年が15万から20万件の間で20万件に近い方である。これに、購入率を掛けると台数が計算できる。'98年には、本田車の全販売の約2パーセントが、'99年には約3パーセントが、インターネットをきっかけにしていることになる。

渡辺氏は、このあと、スポーツカー『S2000』の電子メールマガジンについて、詳細な数字をあげて説明した。ここでは、詳細を省くが、『S2000』のように潜在顧客のセグメンテーションがはっきりしている市場では、マス媒体を使わず、インターネットだけで、広告とマーケティングのビジネスが成立しそうだ)と結論づけた。さらに21世紀には、インターネットが、10万人から50万人の固定した本田ユーザーを対象にして、小さなテレビほどの影響力を持った媒体になりうるとの予想を示した。

ウェブと口コミ電子メールで『オールド』を抜いたウイスキー

インターネットビジネス研究所の杉山勝行氏は、まず、インターネットマーケティングを成功させる方式として、7つのキーワードと実例をあげた。

(1)ウェブと口コミにより東京・六本木のセブンイレブンでサントリーのウイスキー『オールド』を上回る実績をあげたサントリーの『無頼派』を、バイラル(ウイルスのように電子メールの口コミで広がる)マーケティングの例として、(2)加入者(居住者)が個人サイトに広告バナーを貼り付け、それで売れた分のコミッションが加入者に入る三井物産のウェブコミュニティー“キュリオ・シティー”を、アフィリエート(ユーザーサイトでのコミッション型広告)マーケティングの例として、(3)8000人の会員をモニターとしているソニーのデジタルカメラ『サイバーショント倶楽部』をパーミッション(販促の対象となることを読者が容認する)マーケティングの例として、あげた。

さらに、(4)5人に対する5000万円の建築費支援で1300人の潜在顧客を集めた殖産住宅の木造注文住宅『ホーメスト』のウェブを、懸賞コーナー活用の例として、(5)本田の『S2000』の電子メールを、メールマガジン活用の例として、(6)競合メーカーを含めた“モバイル何でもリンク”で読者を集めているセイコーインスツルメンツの『ラピュータ』のウェブを、リンク機能活用の例として、(7)当選したら10万円の懸賞金を出すとともに、その企画したラーメンを商品化するという企画で注目を集めた日清食品の“ご当地ラーメン懸賞募集”を、商品企画への活用の例として、それぞれ指摘した。

そして、マスマーケティングの(1)市場の開拓、(2)市場創造が可能、(3)認知活動という特徴と、ワン・トゥー・ワン・マーケティングの(1)スピード、(2)インタラクティブ、(3)リアルタイムという特徴を組み合わせた、ハイパーマーケティングの概念を提唱した。

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