千葉・幕張メッセにおいて、1日から3日まで開催中の“IBM総合フェア2000”では、同社が世界各地の研究所で取り組んでいる最新のR&Dに関する展示も行なわれている。液晶や半導体、HDD、データ解析、ウェアラブルコンピューターなど幅広い分野の成果が公開された。
多くの人が足を止めた高精細液晶ディスプレーパネルの展示 |
来場者の注目を浴びていたのは、20.8インチのQXGA TFT液晶パネル。同社がこれまで取り組んできた高精細パネルの最新版で、解像度はQXGA(2048×1536ドット:315万画素)、A4サイズを2ページ見開きで完全に表示できるもの。フルカラーモデルとモノクロモデルが展示され、モノクロ表示の場合では通常の4倍にあたる1024階調を表現できる。カラーモデルはCAD/CAM、地図情報システム、出版システムなどに、モノクロモデルは医療診断やレントゲンモニター、新聞紙面表示などへの利用が想定されている。現在のサンプル価格(デバイスのみ)は25万円で、夏に量産が開始されれば25万円ほどになるとしている。
モノクロモデルでは、1024階調の表現が可能で、微妙な濃淡も読み取ることができる。表示されているのはX線断層撮影装置のデータ |
ストレージ部門では同社が積極的に取り組んでいるSAN(Strage Area
Network)やNAS(Network Attached Storage)、新しいテープドライブ装置などが展示された。また、コンパクトフラッシュサイズのHDD『MicroDrive』や最新のHDD製品に混じって、5枚ディスクで75GBという3.5インチHDDも参考出品されていた。これは現行製品の2倍近い容量を実現したものだ。HDDについてはセミナーも開催され、将来の大容量ドライブを実現する技術や、現在の磁気記録方式に代わる技術などが紹介された。
手前が参考出品された毎分7200回転で75GBのHDD。1枚あたり15GBの容量を持つプラッター(ディスク)を5枚内蔵する |
HDDのセミナーではIBMが製造した最初のHDDである、50枚プラッターで容量5MBという初期のHDDの映像も公開された |
こちらは将来の高密度化技術。マイクロマシニング技術で作り込まれた、くしの歯状のアクチュエータで、ヘッドの先端の微少な動きを制御する。互い違いに重なり合った歯が振動するしくみ。歯1枚の長さは約20μm |
『PONG』(ポン)は同社としては珍しい『動く展示』だ。人間の感情を理解するコンピューターを目指す目的で研究されている“Blue
Eyes”プロジェクトの成果であるこのメカは、人の視線を画像センサーで検知して対応、表情を分析することで対象者が怒っているのか笑っているのかといった感情を推測することができる。センサー付きのマウスから発汗情報などを取り入れることも可能という。
会場でのデモはなかったが、会話による応対機能も備えている。ただし、IBMがロボットを開発しようというわけではなく、マンマシンインターフェースの一手段として応用されるという。
人間の視線と感情を認識する『PONG』。目や眉毛はサーボモータで制御され、表情を作ることができる |
ポンの制御画面。人の顔や動くものを認識する。右側は表情をマニュアルで作るためのツール |
このほかに、ハイエンドサーバーを使った気象予測や油田探査シミュレーション、大量のデータからある一定のパターンを高速に抽出する“テレアシス”、文書の傾向や構造を把握するテキスト解析ソフト、ビデオ映像の中から一定の動きを高速に抽出するダイジェスト作成アルゴリズム、最新の高密度実装基板や半導体パッケージなどの展示もあった。
Bluetoothと従来の無線LANによる比較デモも行なわれていた |
IBMがオリンパス光学工業と開発し、昨年11月に試作機を公開した、ウェアラブルコンピューターの体験コーナーは列ができる人気だった |
(右から)銅配線、SOI(Silicon On Insulator)、シリコンゲルマニウムの各ウエハー。銅配線やSOIは『PowerPC』チップに採用されている高速・省電力化技術。シリコンゲルマニウムは1GHzを超える高速動作を実現するもの |
同社が誇る高密度実装基板技術の展示。左が『ThinkPad』のマザーボード基盤、中央が3.5インチHDD基板、右がMicroDriveの基板 |
同社が積極的に取り組んでいる“アクセシビリティー”のコーナーには地雷探知機も展示されていた。コンピューター部分をIBMが担当した |