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【アクセス向上委員会通信特約】“もうひとつのURL”--好き勝手にURLが付けられる?

2000年03月02日 00時00分更新

文● アクセス向上委員会 

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電子メールマガジン『アクセス向上委員会通信』から、発行者であり著者である橋本大也氏の許諾を得て、転載する。用字用語、文体は、原文のまま。見出しの文責は、ascii24編集部。見出しの用字用語は、ascii24編集部の流儀。

http2って?

ドメイン名が100万ドル単位で売買される時代になりました。国内の大手オークションサイトである、YAHOO!オークションでも、

 ・YAHOO! オークション → コンピュータ → ドメイン名
 http://auctions.yahoo.co.jp/jp/27751-category-leaf.html

というコーナーが出来て正々堂々とドメイン名の競売が行われていたりします。日本での小規模な個人間売買は他愛も無い方で、海外では専門の業者も存在していて、

 ・Afternic
 http://www.afternic.com/
 ・URLMerchant
 http://www.urlmerchant.com/

など大規模に取引されています。

ドメイン名は公共性のある有限リソースであることを考えると、地上げのような目的で、投資目的の業者によって、先行取得されてしまうのは、残念な気もしてきます。

アクセス向上委員会のURLは http://www.access.or.jp/ ですが、よくよく考えると、URLにはプロトコル名が含まれています。http://という部分です。この部分に目をつけた人が展開しているのがhttp2というサービスです。

 ・http2
 http://www.http2.com/

http2とは本来、http://であるところをhttp2//に変えてしまい、それ以下には現在のドメインネーム空間とは別に自由に名前を取得できるようにしようという無料サービスなのです。専用のプラグインソフトをインストールすることで、MSIEでアクセスすることが出来るようになります。

http2では、従来のcom, .net, .orgというドメインだけでなく、新しいトップレベルドメインのart, .firm, .info, .rec, .store, .webも使えますし、従来のドメイン名の形式にこだわる必要さえありません。例えば私の名前はdaiyaですが、http2//daiya/ というURLも使えます。

正体はレジストリー書き換えファイル

さて、この怪しげなhttp2プラグインですが、調べてみると、厳密にはブラウザのプラグインソフトではなく、レジストリ書き換えファイルでした。内容は、[HKEY_LOCAL_MACHINE\SOFTWARE\Microsoft\Windows\CurrentVersion\URL\Prefixes] "http2//"="www.http2.com/"というブラウザの設定書き換え指示をOSのレジストリへ送っています。

http2//というプレフィクス(文字列)がMSIEのURLロケーション欄に入力されたら、その部分を www.http2.com/と読み替えてアクセスするように変更しています。

その後の処理は恐らく、このwww.http2.comという名前のWebサーバが通常のhttpのドメイン名とhttp2のドメイン名のデータベースの変換を行っているようです。

検証してみました。

例えば、私はhttp2//daiya/というアドレスをアクセス向上委員会のアドレスである、http://www.access.or.jp/へ、http2の登録フォームで割り当ててもらいました。

 http2//daiya/

と入力すると、プラグインの処理によって、"http2://"は"www.http2.com/"に変換され"www.http2.com/daiya/"という結果を得ます。その後、 MSIE自体によって"http://"はユーザによって省略されたものとみなされ、自動補完されてしまうので、実際にアクセスされるのは、

 http://www.http2.com/daiya/

というURLになります。実際、上記のURLはアクセス向上委員会へと転送されました。私の憶測は当たっているようです。

これってなかなかアイデアだなあと思いました。この調子で私もhttp3を作ってみようかな、と思ったのですが、次の日にhttp4を誰かが立ち上げる予感がするので止めておくことにしておきます。

上記はジョークのようなソフトではありますが、ドメイン名というアドレス空間の現状に対する問題提起にもなっています。主張のあるソフトだなと思いました。

携帯電話向けウェブで同様のサービス

さて、国内の携帯電話Webアクセス向けサービスとして、最近ふたつの似たようなサービスがリリースされました。予め割り当てた番号によって、モバイル向けコンテンツにアクセスさせるというものです。携帯電話では番号の方が入力しやすいですから、

  Gigaコード

ひとつはGigaコードです。

 ・Gigaコード
 http://www.gigahz.net/

 ・メーリングリスト ギガヘルツ
 http://www.gigahz.net/ml/

コード利用のガイドを見ると
  「
  ・利用は無料です。
  ・取得も無料です。
  ・印刷媒体での掲載、転載も一切無料です。
  」

とあって、個人レベルでも取得利用しやすいので、個人ページ作者の登録が多くなるかもしれません。携帯電話コンテンツクリエーターのためのパワフルなメーリングリスト「ギガヘルツ」が運営していることもあって、コンテンツ作者サイドをうまく取り込むことが出来れば、人気サービスになるかもしれません。

 

あちゃらコード

・あちゃらコード
 http://www.acaragate.com/

こちらは、Webに番号を割り当てるという点では先駆者のリクルートあちゃらによるサービスです。こちらも登録無料のようですが、登録開始は3月下旬、サービス開始は4月28日となっていて詳細は不明な部分があります。リクルートの紙媒体やポータルサイトISIZEとの連携の可能性を考えるとGigaコードと同じように可能性を感じます。

現状のURL/URIを拡張する規格、仕組みは多数発表されていますが、アドレス空間の広さと、ひとつひとつのURL/URIの覚えやすさは常に反比例してしまう。標準と独自拡張のメリット・デメリットも相克します。誰にでも直感的に分かりやすく、精確に特定のリソースを指すだけでなく、市場に対して公平である必要もあります。例えば現在のドメイン名のように早い者勝ちのルールは公平さという点で問題があるかもしれません。

ここで問題にあっているのは、精確さの問題、分かりやすさの問題、公平さの問題の3つと私は考えます。

私の名前やあなたの名前。同姓同名の人間は世界に大勢います。それは限定された行動範囲や人間関係の中では通用しても、よほどの有名人でもない限り、グローバルなコミュニケーションの場ではそれが誰を指しているのか、万人に直感的に理解してもらうのは難しいものです。

次世代のインターネットプロトコルIPv6のように実用上無限に近いアドレス空間を使って無機的な番号を割り当てる手法では、精確さの問題をクリアできても、分かりやすさの問題をクリア出来ません。http2のように新しいアドレス体系を作っても、標準化や移行に際して公平さの問題が発生することでしょう。

もうひとつのURLをめぐる問題は、インターネットと言う、グローバルな社会の中での極めて人間的な、悩ましい問題と言えそうです。

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