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【Robot-ism 1950-2000 Vol.3】富野由悠季氏らによる “ロボット・メカニズム”の進化論

2000年03月01日 00時00分更新

文● 編集部 伊藤咲子

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(財)画像情報教育振興協会(CG-ARTS協会)は28日、アニメ『機動戦士ガンダム』の監督として知られる富野由悠季氏らを招き、シンポジウム“Robot-ism メカニズム “ロボット・メカニズム”の進化論”を開催した。これは今月25日から3月2日まで、東京・赤坂の草月会館で開催されている文化庁メディア芸術祭企画展“Robot-ism 1950-2000~鉄腕アトムからAIBOまで~”の1プログラム。

同企画展では、ホンダの2足歩行ロボット『P3』など実際に稼動するロボットや、デジタルアートの作品を展示するほか、クリエーターや評論家、技術者を招いたシンポジウムを開催する。今回紹介するシンポジウムは、“Robot-ismシンポジウム”と名付けられたロボットをモチーフとしたシンポジウムの全6回の第4回にあたるもの。コーディネーターは東京大学大学院助教授の浜野保樹氏で、富野氏のほか、クリエーターとして現代美術家の村上隆氏が参加、富野氏のロボット観、ガンダムシリーズに込めたメッセージを中心に意見が交わされた。

アニメ『機動戦士ガンダム』などの監督を務める富野由悠季氏。今年で58歳になるという アニメ『機動戦士ガンダム』などの監督を務める富野由悠季氏。今年で58歳になるという



ガンダムはアトムのような“ロボット”ではない

(以下文中、敬称省)

富野「ガンダムは、いわゆる“ロボット”ではない。“ロボットアニメ”と1つに括られてしまうが、『鉄腕アトム』のアトムがパーソナリティを持つ“ロボット”であることに対し、ガンダムは“乗り物”であり、“道具”である」

村上「『鉄腕アトム』のアトムには“魂”があり、ガンダムにはそれがない。象徴的なのが、『機動戦士ガンダム』のラストシーン。ガンダムが頭が吹き飛ばされながらも、片足で直立し、敵を撃っているという姿だ。これを見た瞬間、ああ、ガンダムは魂のない、いわば道具なんだなと感じた」

「ガンダムは魂を獲得するための物語であり、でも結局最後まで、それは叶わない。富野先生は、ガンダムを通じて、日本人をリアルに書き出そうとしているのではないだろうか、と感じた」

現代美術家の村上隆氏 現代美術家の村上隆氏



富野「人間が自分自身のことを表現しようと思ったとき、自分のことだけを語っていては、表現しきれない。例えば「私がここにいる!」と言っても、誰も注目しないだろう。そこで、「オレは神を冒涜する! 」とか、存在しない“もの”にかけて、自分を表現することがある」

「この場合、その力を借りる“もの”は、魂のない道具のほうが、人形の形のほうが、自己投影しやすいだろう。パーソナリティが備わっているアトムは自分の口で自分の言葉をしゃべるけれども、ガンダムにはそれがないから自分を投影しやすい。アニメの巨大ロボットは、自己表現の役割を果たすために、存在しているのではないか」

科学技術論や現実認識論ではなく、人間の生死を描きたい

富野「僕自身、ロボット的なもの、機械的なもので好きなものは、飛行機だけ。最近、電脳社会というか、サイバーなものがもてはやされているが、こうしたものに全て置き換わるというのは、科学技術をもてあそんでいる人たちの世迷言だ」

「科学技術論や現実認識論ではなく、生きていく、死んでいく人間たちを描こうと考えている。僕は、絶対に人間を描こうと、ロボットは道具として描ききろうと思う。今日、会場には若い人たちが多く参加しているが、僕は君たちの子供に向けた作品を作りたい」

日本のアニメは、もっといやらしくて、アグレッシブで、ドグマが溢れていて

今回はコーディネーター役だった、東京大学大学院助教授の浜野保樹氏 今回はコーディネーター役だった、東京大学大学院助教授の浜野保樹氏



村上「確かに日本のアニメは海外で市民権を得ている。しかしこれは、日本人がプレゼンテーションを行なった結果ではない。アメリカ人が商売になるからと持ち込まれているだけで、クリエーターに還元されていないと思う」

「日本のアニメは、もっといやらしくて、アグレッシブで、ドグマが溢れていて--。僕は、アニメのキャラクターをモチーフとした作品を作っているが、主流はアニメやマンガであり、その芸術性を外から立証したいと思う」

富野氏は最後に、今回のシンポジウムについて「日本のお役所が、こうした形でアニメ関係を支援してくれたのは初めて」と評価。今後の予定については、「1年は休ませてほしい。しかし、今後の話が全くないわけではない」と、次回作品への意欲をのぞかせた。

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