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アニメ、マンガが日本を救うか? 総合サイト『MANGA ZOO』オープン

2000年03月01日 00時00分更新

文● 福冨忠和

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日本から世界に向けて発信できるキラーコンテンツ

インターネットが地球を覆い、衛星放送の同じ番組が世界中で観られるようになったこの時代、日本から世界に向けて発信できるキラーコンテンツはなんだろうか。国内でしか通用しないiMODEだとか、随分遅ればせながらのインターネットでの証券取引? どうも違う。もっと世界に通用するコンテントが日本にはあるのに、産業界の人たちは、それを見て見ぬふりをしている(敬称の省略具合は筆者、福冨忠和氏の流儀のままとした)。

米国でも『ポケモン』が大ブレイクしたことで分かるように、日本には世界最高水準のゲームの文化があり、アニメがあり、マンガがある。最近は欧米でも日本のアニメ、マンガのファンが増え、宮崎駿、大友克洋、押井守のように世界中で作品が待望されるケースも増えてきた。今や世界中で、日本語で“ANIME”とか“MANGA”と言えばそのまま通用するようになっている。

それなら、マンガやアニメをそのままインターネット経由で世界に発信したら、大きなビジネスになるはず、と考えるのが普通だと思うけれど、それが奇特な一部の動きに限られていたのは、たぶん新しいデジタルメディアを使わなくても、マンガ家やアニメ作家が十分にビジネスになっていたせいもあるだろう。しかし、米国のIT部門の活況、そしてインターネットの拡大の中、日本での相変わらずの不況感。なんでこんな儲け話を放っておいたんだ、という気にもなる。

口コミ段階で、すでに608万2504ヒットを飛ばした『MANGA ZOO』

(株)コミックウェーブという会社が始めた『MANGA ZOO』(http://www.mangazoo.com/)というマンガとアニメのウェブサイトの発表(2月22日)を聞いて、思ったのはこんなことだ。すでに去年の12月から試験運用されているこのサイトは、一部のアニメやマンガのファンにはすでにお馴染み。発表前の何もPRしない口コミ段階の2月までで、すでに608万2504ヒット、58万7494ページビュー、メールマガジン登録者が1万3984名、『MZ COMMUNITY』という会員サイトへの登録者が2618人、ごく一般的なサイトと比較しても数倍のレスポンスになっている。

しかし、伊藤忠商事のような商社から、スペースシャワーネットワークまでの出資を集めてこれを事業化しようとしている竹内宏彰・代表に言わせれば、これはごくほんの序の口だ。なにしろ現状の国内のマンガ産業の市場規模だけで5680億円、アニメ産業が1550億円、関連するキャラクター産業が1兆2126億円。これを音楽産業の4329億円、アニメを除く映画産業の1835億円と比べてみると、その規模が分かる。ここから考えれば、世界中のアニメ、マンガの市場規模は10兆3000億円になるはず、というのが竹内氏が算出した数字。口コミで達成したヒット数は、そのほんの皮切りというわけだ。

データベース、ネット放送局、オンラインショップなど、今後の予定も目白押し

試験公開されているのは『MZ MAGAZINE』というマンガ、アニメ情報ウェブマガジンと、2月から公開されたファン同士の交流の場である『MZ COMMUNITY』。前者ではマンガ、アニメの最新情報、売り上げチャート、新作スケジュールのほか、アイドルの撮りおろしグラビアなどの目玉企画、別冊特集としてコミックマーケットや同人誌情報、少女コミック情報、日本マンガの歴史情報などが提供されている。またCOMMUNITYの方では、登録ユーザーが自己PR可能なMY PAGEを中心に、ユーザー間のコミュニケーションが演出される。

春からスタートする『MZ DB』はアニメ、マンガの膨大なデータベース。巨匠から人気作家までのオリジナル作家データベースは1000名以上、作品タイトルは1万件という基礎データに、関連サイトからや新作が順次拡張される。

また夏にスタートするマンガ、アニメ専門ネット放送局『MZ TV』では、未公開・復刻などパッケージ化が困難な作品や、世界の情報、ニュース、新作レビューなどを放送予定。『MZ STUDIO』は著名作家のウェブ制作ほか、デジタル表現を支援するラボとなっている。もちろんここを発信地にした商品企画や復刻復活販売などの企画も『MZ PROJECT』の名で今秋開始を目指して準備されている。さらにビジネスのコアとなるオンライン販売も、オンラインショップである『MZ EC』やオークション形式の『MZ AUCTION』が同じく今秋始動予定となっている。

発表会には、さまざまな業界人が横断的に列席

メディア業界ではもともとプレゼンターとして知られた人物である竹内氏の企画に、伊藤忠を中心とする資本のバックアップがあり、広大なマーケットが見えているとなると、当然賛同者の質も違ってくる。デジタル業界人、出版業界人、広告関係者が横断的に集い、普段はあまりない組み合わせとなった2月22日のレセプションパーティー。

望月三起也の乾杯の音頭にはじまり、桑田二郎、つのだじろう、楳図かずお、故・谷岡ヤスジ夫人、久住昌之、押井守、森本晃司、吉野紗香、エサカマミなどの著名人の挨拶を、千葉麗子、モーリー・ロバートソンのコンビが司会として仕切り、さらに、ビックリマンのイラストレーター、エサカマサミによるライブペインティングを目玉に、各賛同作家の作品映像が流されるなど、豪華かつ盛りだくさんのイベントとなった。

つのだじろう氏の挨拶。癒し、除霊をテーマにしたコンテンツを企画中つのだじろう氏の挨拶。癒し、除霊をテーマにしたコンテンツを企画中



森本晃司監督。『永久家族』のストリーミング配信も森本晃司監督。『永久家族』のストリーミング配信も



故・谷岡ヤスジ氏夫人、谷岡まち子氏も。ヤスジ氏原作のフルCGアニメも配信される故・谷岡ヤスジ氏夫人、谷岡まち子氏も。ヤスジ氏原作のフルCGアニメも配信される



エサカマサミ氏によるライブペインティングの模様エサカマサミ氏によるライブペインティングの模様



加えて、このMANGA ZOOのトレードマークとして採用されたのは、かの手塚治虫の『ヒョータンツギ』。果たして、こんなに盛り上がっていいのだろうか、という気もしないではないが、竹内氏の顔からは、微塵の不安感も読み取れなかった。

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