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東大博物館、企画展“デジタルミュージアム2000”を開催--東大が誇る縄文コレクションをデジタル・アナログで一挙公開

2000年03月01日 00時00分更新

文● 編集部 伊藤咲子

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東京大学の学術資料研究機関である東京大学博物館は2月29日、企画展“デジタルミュージアム2000”の一般公開に先立ち、報道関係者を対象に会場を公開した。同展は縄文をテーマに、同博物館が保管するアーカイブ化された学術資料のデータベースと、土偶や土器といった出土品・学術資料そのものを、一般に公開するというもの。また、他地域の博物館にあるデータベースサーバーと連携した仮想展示や、携帯端末ガイドシステムなど、デジタル展示技術を体験できる。

場所は、東京・本郷の東京大学敷地内。会期は3月1日から4月28日までで、入場は無料。一部の展示については、ウェブブラウザーを通じてどこからでも楽しむことができる。

展示室より、縄文人の埋葬骨。出土状態を立体再現し、展示している
展示室より、縄文人の埋葬骨。出土状態を立体再現し、展示している



同博物館はこれまで、知的財産(この場合は学術資料)をデジタルデータ化し、データベースを構築して保存・活用するという“デジタルアーカイブ”の考え方に基づき、その実現のための研究を行なってきた。今展示会はその成果の発表であると同時に、「要素技術の提示とそれを組み合わせてどのようなデジタルミュージアムを目指すか」という狙いを持っているという。

展示物の説明などの難易度は、大学生・研究者向けとなっている。「本物に接するということを第一に、最先端の学術資料を包み隠さず展示した。もちろん、興味がある人なら、小中学生でも楽しめますよ」と、実行委員会委員長を務める東京大学総合研究博物館教授の坂村健教授はその意図について語った。

今回、実行委員会委員長を務める坂村健教授。ascii24ではTRONプロジェクトでおなじみ
今回、実行委員会委員長を務める坂村健教授。ascii24ではTRONプロジェクトでおなじみ



デジタル展示と要素技術のみどころ--分散ミュージアム構想

今回公開された学術資料のデータベースとは、東大創立(1877年)以来収集された学術資料のうち、縄文時代の土偶・土製品、東アジア・ミクロネシア古写真、植物標本など7分野、計1万5000点の学術資料をデジタル化したデータベースと、特別展や研究レポートなど動画を含めたデータベース計10万項目。博物館はこれらを一般公開するために、展示会開催期間中に特別サイトを開き、ウェブブラウザーを通じて閲覧する“仮想展示”の環境を作成した。

展示会場には、閲覧用のパソコンが数台置かれている。展示会場のクライアントマシンのOSは、全てBTRONの『超漢字』。東京大学の坂村研究室が開発したBTRONや、その多言語開発環境、TAD(TRONコード)呼ばれるデータ標準形式が利用されている。


データベースサイトの画面例。『超漢字』については、こちらを見てほしい

また博物館は、もうひとつの仮想展示の環境“MMMUD:MultiMedia Multi User Dungeon”を公開。パソコンとジョイスティックを使い、会場と同様の展示物が展示されている仮想の3次元空間の中で、自由に動き回ることができる。さらに、高速回線(6Mbps)を使って千葉県・佐倉の国立民族博物館のデータベースサーバーと接続。2つの博物館を模した仮想空間をシームレスに往復できるほか、チャットも楽しめる。

なお、国立民族博物館では、“縄文の記憶展”を同時期に開催している。主催者側では、この実験を“分散ミュージアム構想”と名付け、「デジタルミュージアムの発展系」と期待を寄せている。

MMMUDシステムも坂村研究室が開発したもの。写真は、高速回線を利用して、国立民族博物館と対話を行なっているところ。仮想的な連携だけでなく、ミニシンポジウムなど、リアルなコミュニケーションも行なう予定
MMMUDシステムも坂村研究室が開発したもの。写真は、高速回線を利用して、国立民族博物館と対話を行なっているところ。仮想的な連携だけでなく、ミニシンポジウムなど、リアルなコミュニケーションも行なう予定



そのほか、携帯端末などを使った、いくつかのデモンストレーションを実施。これらは、写真とともに紹介する。

“ミュージアムグラス”。透過性のヘッドマウント型ディスプレーと、小型CCDカメラを使用。展示品の下に付けられたマークとカメラ、会場に設置されたアンテナとで位置情報を認識、展示物の説明がヘッドマウント型ディスプレーに映る
“ミュージアムグラス”。透過性のヘッドマウント型ディスプレーと、小型CCDカメラを使用。展示品の下に付けられたマークとカメラ、会場に設置されたアンテナとで位置情報を認識、展示物の説明がヘッドマウント型ディスプレーに映る



“Point it”。展示品の付近に置かれたセンサーに、レーザーポインターの光を当てると、ヘッドホンからその説明が流れる
“Point it”。展示品の付近に置かれたセンサーに、レーザーポインターの光を当てると、ヘッドホンからその説明が流れる



“パーソナルミュージアム”。ITRONのチップを組み込んだICカードに、来館者1人1人のIDとパスワードを記録。会場には、ICカードリーダーが接続されたパソコンが設置されており、来館者は気に入った情報をチェック。博物館のサーバーが、ID・パスワードと共に、これらの“お気に入りの情報”を記憶する。来館者は帰宅後、展示会サイトに接続しID・パスワードを入力、来館時にチェックした項目の情報を見ることができる
“パーソナルミュージアム”。ITRONのチップを組み込んだICカードに、来館者1人1人のIDとパスワードを記録。会場には、ICカードリーダーが接続されたパソコンが設置されており、来館者は気に入った情報をチェック。博物館のサーバーが、ID・パスワードと共に、これらの“お気に入りの情報”を記憶する。来館者は帰宅後、展示会サイトに接続しID・パスワードを入力、来館時にチェックした項目の情報を見ることができる



アナログ展示のみどころ--東大が誇る縄文コレクション

同展示会では、デジタルデータのほか、“モース大森貝塚コレクション”265点、“山内(清男)コレクション”125点をはじめ、重要文化財クラスの出土品が展示されている。坂村教授は、「人は記号化された情報でも知的興奮を楽しめるが、動物的な、本物と向き合ったときの感動は仮想の展示では難しい。本物の持っている不思議なオーラを体験してほしい」と語った。

モース大森貝塚コレクションを一度に公開するのは、今回が初めてという モース大森貝塚コレクションを一度に公開するのは、今回が初めてという



この展示室は、縄文時代を他の時代や、同時代の他地域と比べられるような構成になっている。展示物にあたるライトは、一部の資料を除いて、非常に明るく保たれている
この展示室は、縄文時代を他の時代や、同時代の他地域と比べられるような構成になっている。展示物にあたるライトは、一部の資料を除いて、非常に明るく保たれている

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