【Robot-ism 1950-2000 Vol.2】子供のヒーローは“友達タイプ”と“機械タイプ”――“Robot-ism 1950-2000”シンポジウム
2000年02月29日 00時00分更新
25日から開催されている“文化庁メディア芸術祭”の企画展“Robot-ism
1950-2000~鉄腕アトムからAIBOまで~”にて、“ロボットがなぜ‘ヒーロー’になりえたのか”というテーマでシンポジウムが行なわれた。
26日、11時から東京・赤坂の草月会館で開催されたシンポジウムには、マンガ家の里中満智子氏、同じくマンガ家の安彦良和氏、映画評論家の石上三登志氏が登場。
最初に石上氏が、身近な映画やマンガなどでのロボットの描かれ方について、印象的な新作映画を見たとパンフレットを取り出した。ロボット小説の大家、アイザック・アシモフ氏の作品を映画化した『アンドリュー』のパンフレットで、「アメリカ映画でロボットが脇役ではなく、主人公として描かれたのは初めてではないか。画期的なことだ」と語った。
里中氏と安彦氏は同世代。石上氏もほとんど変わらないことから、共通の懐かしいアニメやマンガの話で盛り上がった |
鉄腕アトムのロボット像がAIBOと結び付いている
里中氏は「アメリカではロボットがずっと悪役だったが、日本人にとってロボットは常に主役だった。ロボットが日本に紹介されてから、ロボットには生命があるように扱ってきたような気がする。なかでも『鉄腕アトム』は女の子に人気がありました」と自らのヒーロー像を語った。ヒーロー視するロボットにも男女の差があったという少女時代の思い出に、シンポジウムは一気に話題が盛り上がった |
里中さんの少女時代にあったマンガ雑誌『少年』では、『鉄腕アトム』と『鉄人28号』の2本のロボットマンガが同時に掲載されていた。
「アトムはストーリーに人情味があって女の子に人気があったのですが、男の子はアトムを“かったるい”、“うっとうしい”と言って好きではなかった。『鉄人28号』の方が人気がありました」この意見には石上氏、安彦氏も懐かしそうに同意していた。
続けて里中氏は「鉄人28号は操縦者次第で善にも悪にも変わるただの機械。反してアトムは自らが考えて行動する“自立(自律)型”のロボット。モノなんだけどモノじゃない、“モノにも神が宿る”という価値観がAIBOにたどり着いたのでは?
AIBOを生み出したのは、鉄人アトムを生み出した日本人の感性だと思います」とAIBO誕生の素地に言及した。
手塚さんは実は機械が苦手だった!?
虫プロやサンライズというアニメプロダクションに長年所属してきた安彦氏。『機動戦士ガンダム』など、多くのロボットアニメにも携わってきた。“日本のアニメは鉄人型の系譜”と、日本のアニメ事情について語ったあと、アトムの生みの親、故手塚治虫氏のエピソードを披露。「手塚さんは実は機械が苦手だった」といった秘話に会場を訪れた参加者たちは、興味深そうに頷いていた。
手塚治虫氏と対談経験のある安彦氏は、隠れたエピソードを数多く披露。ユニークなエピソードも多く、会場は何度も笑いに包まれた |
その後、ロボット三原則や映画に登場するロボット、コンピューターの話がされ、映画『禁断の惑星』のロビーや、『2001年宇宙の旅』のHAL2000といったさまざまなヒーロー、ヒロイン像が語られた。
そしてロボットの行き着く先というのは1つではなく、1つは鉄腕アトムのような感情を持った、友達になりたいロボット、もう1つは鉄人28号やガンダムのような操縦者の支配する機械的なロボットではないか。この2つのロボットがいずれもヒーローたりえるのではないかとの結論でシンポジウムは幕を閉じた。