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【次世代ディスプレイはこうなる! PART1 レポート Vol.1】次世代LCD開発の現状

2000年02月28日 00時00分更新

文● ケイズプロダクション 岡田 靖

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24日に、半導体産業新聞によりセミナー“次世代ディスプレイはこうなる! PART1――強誘電性/反強誘電性液晶の可能性――”が開催された。半導体産業新聞は、半導体産業の専門誌で、(有)産業タイムス社が発行している。

高速応答、広視野角を実現する次世代液晶の研究

液晶業界では、かつてFLC(Ferroelectric Liquid Crystal:強誘電性液晶)やAFLC(Antiferroelectric Liquid Crystal:反強誘電性液晶)に注目が集まった時期があった。広く用いられているTN(Twisted Nematic)液晶にくらべて高速応答、広視野角などの特徴があり、高く評価されたのだ。しかしさまざまな問題があって実用化が遅れ、TNタイプのディスプレイが発展したため忘れ去られていた。そして、昨年あたりから再び注目されつつある。
24日に開催された半導体産業新聞主催のセミナー、“次世代ディスプレイはこうなる! PART1――強誘電性/反強誘電性液晶の可能性――”では、これらの液晶に関する最新動向を、大学や液晶メーカー各社の研究者たちが講師となって発表した。非常に濃い内容であったため、まずは簡単に概略を説明する。もう少し詳細な記事を、近日中にお届けする予定だ。

非常に扱いにくかったFLC/AFLC

さて、本題にはいる前に、液晶についておさらいしておこう。
液晶は、“液状でありながら結晶のような性質をもつ物質”で、その多くは結晶と同じように光学異方性(結晶方向に応じた偏光軸をもち、入射した光を偏光させて通す性質)がある。液晶パネルは、この液晶を薄いガラス板の間に閉じこめ、上下を偏光板で挟んだ構造が一般的だ。液晶に電圧をかけると、偏光軸がねじれて偏光板との角度が変わるため、光を通す/通さないというスイッチになるのだ。これにカラーフィルターを装備し、光の3原色を平面的に分解して出力するようになっている。
繰り返しになるが、FLC/AFLCは、TN液晶より高速応答、広視野角で、また高分解能という特徴をもつ。今まで動画に向かないとされていた液晶だが、これらによって動画への対応が可能になると期待されている。また、バックライトを高速で3原色に発光させ、そのタイミングに応じて液晶を制御、時間的に分解して出力する、“フィールドシーケンシャル方式”のカラー表示も可能となる。
多くの長所をもちながら、今までFLC/AFLCが不遇であったのは、簡単にいうと「扱いにくい」からであった。きちんとした表示をするためには、分子方向が正確にそろっている必要があるのだが、これらはTN液晶とは違って繊細で、製造時に欠陥が出やすい。しかも、ちょっとした衝撃で崩れてしまい、ディスプレイとして役に立たなくなってしまうのだ。また、ディスプレイとして必須の、中間調表示も難しかった。それだけでなく、液晶を封じ込めるセルを薄くする必要があり、液晶材料を注入するのに時間がかかるため、生産性が著しく劣っていた。

現実のものになりつつあるFLCD

現在では、研究者たちの地道な開発によってそれらの欠点が改良されつつあり、一部では実際に製品化の動きもある。
山口東京理科大学基礎工学部電子基礎工学科教授で液晶研究所所長の小林駿介氏は、「次世代ディスプレイに必要な条件とは?」と題した基調講演に続いて、具体的にFLC/AFLC研究の現状を説明する講演「超高速応答・広コントラスト比強誘電性液晶ディスプレイ」まで、2時間にわたって精力的に語った。小林教授は、液晶材料やセル内面構造の改良により、FLCの欠陥をなくし、均一なディスプレイができるようになったことを示した。また実際に、フィールドシーケンシャル表示のデモ機を用意し、カラー表示を見せてくれた。中間調表示も、新たな液晶材料で現実のものとしている。
そして、そのフィールドシーケンシャル表示で実際にディスプレイを作成した報告が、富士通研究所ディスプレイ研究部吉原敏明氏の講演“フィールドシーケンシャル方式による高精細・フルカラービデオレートFLCDの開発”だ。開発されたFLCDは、1/60秒の1フレームを1/3に分割した1/180秒で、どのように液晶をスイッチさせるかを研究した。それを応用した対角3.2インチ、640×480画素(254ppi:Pixel Per Inch)のディスプレイを作成し、実際にDVD画像を表示させている。中間調表示が可能な液晶材料と、3色LEDバックライトを用いることで、高い色純度を達成したという。

LCDの限界を超えられるか

しかし、続いて壇上に上がったNEC機能デバイス研究所ディスプレイ・デバイス研究部高取憲一氏は、“次世代液晶ディスプレイと自発分極液晶”と題した講演のなかで、液晶とCRT、映画の表示方法を比較し、高速応答の液晶でも画像のボケが生じることを示した。CRTは一瞬だけ光り、次の画面まで暗いままの“インパルス型”で、映画もフレーム間を暗くする“シャッタ型”なので、いずれも人間の脳が補間することで自然な動きとして見ることができる。だが液晶では、表示させた画面を次の画面まで表示させておく“ホールド型”であり、すこし高速にした程度では画面の切り替え時にブレが生じるというのだ。超高速応答の自発分極液晶(FLC/AFLC)ならば、画面切り替え時に意図的に暗転時間を設けるなどして解決できるとしている。また、その際の画面輝度やコントラストなども、実験や数値シミュレーションなどから解決できるという。
一方、中間調表示ができないかわりに超高速応答という特徴を利用し、完全デジタル表示のディスプレイを試作した研究者も存在する。その状況を、“小型超高精細共有電液晶マイクロディスプレイの開発”という題で、ソニーホームネットワークカンパニー開発本部マイクロディスプレイ開発部の橋本俊一氏が発表した。少し型遅れとなった半導体生産ラインを利用して、対角わずか0.9インチの表示部に1920×1200画素を詰め込んだ反射型LCDを試作している。HDTV(1920×1080画素)とUXGA(1600×1200画素)の両方に対応できる画素数だ。反射型だが、こちらも3色LEDを光源に用いており、色純度も高い。液晶そのものは明/暗の1ビットしか表現しないが、10ビットの表現能力を得るために、時分割でPWM(Pulse Width Modulation)と光量制御制御を併用している。1フレームをさらに30以上のサブフレームに分割しているため、液晶の画面切り替えをわずか150マイクロ秒という短時間に行なっている。まさに超高速液晶ならではの解決策だ。フィールドシーケンシャル表示で問題となりがちな“色割れ”(動きのある画像で、輪郭に存在しない色が見えてしまう現象)も生じないという。

V字状スイッチングAFLCの開発と応用

カシオ計算機八王子研究所デバイス事業部研究所吉田哲志氏の講演“フルカラー反強誘電性液晶ディスプレイの開発”では、AFLC材料の改良により、電圧に比例した階調を表現できるようになったという。AFLCでは“3状態間スイッチング”といって、ある一定の電圧で透過率が大きく変化し、段階的な変化のないのが普通だった。また、電圧を0に戻す際に、行きとは違う電圧でスイッチする“ヒステリシス”現象もある。吉田氏は、AFLCでありながら、通常のTN液晶と同じように、電圧に比例して明暗を変化させられ、ヒステリシスのない液晶材料を開発し、それによる試作パネルを制作している。液晶注入工程に数倍の時間がかかるというが、試作パネルの性能は視野角、明るさ、応答速度、予想されるコストパフォーマンスのすべてにおいて従来のLCDを上回り、CRTに匹敵するという。
電圧に比例する明暗の変化は、V字状スイッチングと呼ばれている。“マルチメディアネットワークのための21世紀型液晶”という講演では、東京工業大学大学院理工学研究科有機・高分子物質専攻教授の竹添秀男氏が、そのメカニズムの研究成果を語った。
液晶セルの内壁には、液晶分子を整列させるための配向膜が設けられている。配向膜に近い部分の液晶は、内部の液晶が均一に並んでいるのに対し、“ねじれた”状態になっているという。ところがその界面部分は、測定した結果、従来考えられていたよりもねじれが小さく、これによって高いコントラストを実現したと推測している。

技術者たちの“遠い目標”

基調講演の中で、小林教授は「研究者をフォローする立場としては、目標をきっちり立てて進ませる必要がある。方向さえ明確なら、どんなに遠い目標でも、きっと辿り着く」と語った。FLC/AFLCがここまで脚光を浴びるようになったのは、「CRTを超えるLCDを作りたい」という技術者たちの想いがあったからこそ、なのかもしれない。

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