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エコマネーは“エコミュニティー”を実現するための1つの手段――“関西エコマネーグループ発足会(仮称)”が開催

2000年02月23日 00時00分更新

文● 塚田俊郎

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14日、大阪市北区にある梅田スカイビル・タワーイースト9階会議室で、“関西エコマネーグループ発足会(仮称)”が開催された。新聞をはじめとする各マスコミで、このところにわかに注目を集めているエコマネー。

当日はこの言葉の紹介者であり、自らが積極的に推進役を務めている通産省のサービス産業課長、加藤敏春氏が来阪。会場は早くから多くの参加者の熱気であふれていた。関西での“エコマネー”のより一層の普及と認知度の向上、そして支部設立への弾みを付けるべく開かれたこの会合の模様を紹介する。

関西での活動は少ないが、関心は高い“エコマネー”

大手ハウスメーカーの街づくり事業推進室で業務をこなすかたわら、独自のスタンスで地域コミュニティーの活性化を図るため、NPO活動“倶楽部都市”を推進するY2塾メンバー、山本好希氏。氏の呼びかけにより、この日会場に集まった参加者は軽く50名を超えた。

NPO活動“倶楽部都市”を推進するY2塾メンバー、山本好希氏が今回の集いをコーディネートした人物NPO活動“倶楽部都市”を推進するY2塾メンバー、山本好希氏が今回の集いをコーディネートした人物



関西を拠点にする一流企業、地域政策、経済、環境、あるいは余暇開発などの研究機関、各種NPO組織、電鉄会社、出版社、大学、マスコミ各社など、参加者の顔ぶれは多岐にわたり、幅広い分野からのエコマネーに対する関心の高さがうかがえた。

まず、エコマネーネットワークの事務局長、中山昌也氏が、昨年5月にスタートした同ネットワークの主旨と活動状況を説明した。そこで中山氏は「北海道、富山、愛媛、高知などではすでに研究会などが活発に動いているが、関西ではまだ活動は少ない。しかし、気運の高まりはメールでの問い合わせなどの多さによって、肌で感じており、エコマネーへの期待度の高さを実感している。今日の集まりが今後の進展への起爆剤になれば」と抱負を述べた。

エコマネーネットワークの事務局長、中山昌也氏による主旨説明と近況報告からスタートしたエコマネーネットワークの事務局長、中山昌也氏による主旨説明と近況報告からスタートした



“エコミュニティー”というキーワード

続いて、今日の主役である加藤敏春氏によるレクチャーが行なわれた。加藤氏はここで、エコマネーの概要と近況などについて語ったが、その中で1つのキーワードを提示した。それが“エコミュニティー”という言葉だ。

ざっくばらんな雰囲気でエコマネーについて語る通産省サービス産業課長の加藤敏春氏。「新しい形のコミュニティー、街づくりのためにエコマネーを普及させたい」ざっくばらんな雰囲気でエコマネーについて語る通産省サービス産業課長の加藤敏春氏。「新しい形のコミュニティー、街づくりのためにエコマネーを普及させたい」



加藤氏は、通産省という場に身を置く中で、昨今の経済偏重の社会のあり方につねづね疑問を感じていたという。21世紀を睨んだよりよい地域社会、あるいは街づくりにおいては、もっと違った視点での経済の捉え方があるのではないかという。例えば、“経済活動”と“コミュニティー”と“自然環境”とが無理なく融和したような、いわば人に優しい社会環境の構築が求められているのではないか、と。

これまで10年あまり、新しい形のコミュニティー、街づくりのための方法論を模索しながら、その実現に向けさまざまな研究を重ねてきており、それを自らのライフワークにしてきた。やがて、1つの考え方として生まれたのが、この“エコミュニティー”という発想。そして、これを実現するための手段の1つがエコマネーである。

エコマネーは仕掛け。目的はコミュニティーと街づくり

「したがって、エコマネーを目的のように捉えては欲しくない。あくまでもそれは道具であり仕掛けであって、目標はよりよいコミュニティーと街づくりにある」と強調した。と、同時に、「エコマネーをある完成されたものとして受けとめるのではなく、Linux(OS)のように、それを使う市民や生活者が積極的に参加して手を加えることで、進化発展させていきたい」とも述べた。

エコマネーに関しては、'97年くらいから具体的な活動を開始しているが、実質的には昨年の11月に開いた大規模なセミナーを契機に、すでに第2段階に入ったとのこと。最近では具体的なプロジェクトも進みつつあり、現時点で実際にエコマネーが使われている地域は全国で3ヵ所。

中でも、北海道の栗山町では、たいへん活発な動きとなっており、地元では子供からお年寄りまでが違和感なくエコマネーを受けとめている。また、千葉に続いて昨年の6月にエコマネー『おうみ』をスタートさせ、着実に成果をあげつつある滋賀県・草津市の事例も紹介され、参加者にはかなり身近なものとして捉えられたようだ。

生活弱者に対するエコマネーの使い方や使われ方も議論

会の後半では、その草津市でエコマネーの普及に尽力しているNPO政策研究所の内山博史氏が登場した。実際に使われているエコマネーを参加者に見せながら、現在の活動状況や問題点について意見を交換した。

NPO政策研究所の内山氏。草津市で『おうみ』と呼ばれるエコマネーの普及や拡大に熱心に取り組んでいるNPO政策研究所の内山氏。草津市で『おうみ』と呼ばれるエコマネーの普及や拡大に熱心に取り組んでいる



また、(株)R&Dアソシエイツ代表取締役の小山雄二氏は、西成地区における街づくり事業を通して得た自らの体験談をもとに、生活弱者に対するエコマネーの使い方や使われ方についての意見を述べた。終了予定時刻が大幅に越えたものの、意義のある討論が行なわれ、参加者は満足気な様子で会場をあとにした。

自身の街づくり体験をまじえながら生活弱者に対するエコマネーについて意見を述べた小山氏自身の街づくり体験をまじえながら生活弱者に対するエコマネーについて意見を述べた小山氏



中山昌也氏(左)、加藤敏春氏(右)。この2人がエコマネー推進のキーパーソン中山昌也氏(左)、加藤敏春氏(右)。この2人がエコマネー推進のキーパーソン

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