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【MACWORLD Expo/Tokyo 2000 Vol.11】音楽分野ではソニーにも働き掛けていく。スティーブ・ジョブズ氏Q&Aセッションから

2000年02月21日 00時00分更新

文● 月刊アスキー 櫨田智男

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16日の基調講演後にアップル重役が勢揃いし、プレスの質問に答えた“Q&Aセッション”が行なわれた。出席者はCEOのスティーブ・ジョブス氏、ソフトウェアエンジニアリング担当アビ・テバニアン氏、ハードウェアエンジニアリング担当ジョン・ルービンシュタイン氏、財務担当フレッド・アンダーソン氏、ワールドワイドプロダクトマーケティング担当フィル・シラー氏ら。これらアップル重役が一同にプレスの前に姿を現わすのは、米国で行なわれるMACWORLD Expoでも珍しく、日本では初めてである。寄稿者は月刊アスキー編集部、 櫨田(うつぎだ)智男氏。

PDAを製品群に追加する予定はない

――グラファイトのiBookはプロ向けのモデルなのか?

スティーブ・ジョブズ氏(以下ジョブズ氏)「iBookはノートパソコンの中でも最高のプロダクトと言えるだろう。特にSpecial EditionはCPUも高速でメモリーの搭載量も多く、すばらしいプロダクトだ。だが、我々のプロシューマー向けモデルとしてはPowerBook G3がある。PowerBookは500MHzのPowerPC G3プロセッサーと大型液晶ディスプレーを搭載しているし、さらにFireWireも装備している。よってデスクトップビデオの編集などの用途にも使えるモデルだ」

――iMacに装備されているRGB出力やFireWire出力が、新しいiBookに装備されなかったのはなぜか?

ジョブズ氏「コストだよ!(笑)。それらのデバイスのコストが安くなれば、当然付けるだろうね。だがコストを重視するiBookには付けられないんだ。一方、iMacではDVの編集が容易にできるようになっている。DVの編集には広いディスプレイーが必要となることが分かるだろう? iBookの液晶ディスプレイーは、その用途には狭いんだ」

――現在のアップルには4つのセグメントに分けられた製品群があるが、これを拡張する予定はないのか? また、PDAを製品群に追加する予定はないのか?

ジョブズ氏「セグメントが4つだって? PowerMac G4には3種類あるし、PowerBookだって2種類ある。しかも、そのいずれもがApple Storeでカスタマイズできる。プロセッサーやメモリー、ハードディスクなどをApple Storeでカスタマイズすれば、その種類は2万種類以上にもなるんだよ! 決して4つのセグメントだけじゃない。ちなみにiMacは日米両国で最も売れているパソコンだ。PDAについてだが、予定はないよ」

スティーブ・ジョブス氏。暫定CEOから正式なCEOになって今回が初めての来日スティーブ・ジョブス氏。暫定CEOから正式なCEOになって今回が初めての来日



Mac OS Xは、OSの言語モードによりアプリの言語も切り替わる

――Mac OS 9は、今後も開発を続けるのか。それともMac OS Xが発表された今、開発は止めるのか?

アビ・テバニアン氏(以下テバニアン氏)「OS 9の開発は継続する予定だ。それはバグフィックスなどによるアップデートとなるだろう。また、OS 9からOS Xへの移行期間中もアップデートする予定だ。さらにバグフィックスだけでなく、新機能の追加もあり得るだろう」

――Mac OS Xの発表により、Mac OS X Serverはなくなるのか?

テバニアン氏「Mac OS Xではサーバーバージョンも展開する予定だ。ただしMacOS Xのリリースよりは遅くなるかも知れない。だが、出すのは間違いないだろう」

――Mac OS Xは複数の言語をサポートするシステムだが、アプリケーションの言語サポートはどうなるのか?

テバニアン氏「Mac OS Xは英語だけでなく日本語やフランス語など複数の言語を1つのバイナリーでサポートするシステムだ。その上で動作するアプリケーションも多言語対応となる。たとえばOS XのユーザーがOSの言語モードに日本語を選択していたとすると、アプリケーションも日本語で動作する。言語には、最初に日本語、次に英語、その次はフランス語という具合にユーザーごとに任意の優先順位が設定できるようになっているので、あるユーザーが英語で使用していたアプリも、別のユーザーでは日本語に切り替わるようになっている。つまり、OSの言語モードによりアプリの言語も切り替わる」

――アップルのシェアがどれぐらいにまで高まれば、サードパーティーの開発意欲が高まると考えているか?

ジョブズ氏「100パーセントさ!(笑) コンシューマーや医療、デザイン、パブリッシングの分野でのアップルのシェアは十分高い。我々の製品は,これらの分野で十分なシェアを持っている。一方、エンタープライズ向け製品のシェアは低いのも事実だ。だが、それ以外の分野では十分だ」

――Mac OS Xはマルチリンガル、シングルバイナリーOSだが、OS自身に自動翻訳機能は備わっているのか?

ジョブズ氏「それはないし、予定もない」

PlayStation2は、iMacやiBookと競合することはない

――インターネットに関する今後の戦略は? また、インターネットバブルと呼ばれている現在、アップル株も高騰しているが、それをどのように捉えているか?

ジョブズ氏「AOLとタイムワーナーを買収したいね(笑)。それは冗談だが、iBookとiMacはインターネットデバイスとして定着したと言えるだろう。そのためにデザインされたのだから当然と言える。すでにiToolsやiDiskなどのサービスが始まっているが、それらのサービスを日本語化して提供したいと考えている」

「インターネットバブルについてだが、今のアップルはパソコン産業の中ではナンバーワンの伸び率だ。あのデルコンピュータよりも高い伸びを示している。つまり強い会社だから伸び率も高いと言えるだろう。強い会社は今後も強い、もっとアップル株は上がっていいはずだ(笑)」

――アップルは音楽分野でも強いわけだが、現在は逆転しているように思える。たとえばインターネットを利用した音楽配信ではソニーが先行しているが、その音楽配信ツールはWindowsのみだ。また日本ではメモリースティックウォークマンが売れ筋の商品だが、これもWindows版しかない。打つ手はあるか?

ジョブズ氏「たしかに音楽分野はアップルが得意としている分野だ。ソニーを説得してMac版も出すように働き掛けたい。メモリースティックだが、これは別の問題だろう。つまりメモリースティックが標準となるかもしれないし、そのほかのデバイスが標準となるかもしれない。どちらにしろアップルはスタンダードとなったデバイスに対応するだろう」

――Macを売ることにより、結果としてジョブズ氏は何を行ないたいのか?

ジョブズ氏「iMacやiBookに似た製品が他社から発表されていることから分かるように、アップル以外の会社にはイノベーションがない。だからこそイノベーションのあるアップルにはチャンスがある」

――PlayStation2についてどう思うか? 高性能なプロセッサーを内蔵したPlayStation2がiMacやiBookに取って代わることはないのか?

ジョブズ氏「PlayStation2は、しばらく前に見た。テレビにつなぐPlayStation2は、iMacやiBookと競合することはないだろう。なぜなら、テレビとコンピューターはまったく別のデバイスだからだ。つまりPlayStation2のゲームをプレーするにはクリエーティブである必要はない。だがコンピューターを使うにはクリエーティブで有る必要がある。何も考えたくないときにはゲームをするが、何かを作り出すにはクリエーティブな環境を与えてくれるコンピューターに向かうだろう? だからPlayStation2とiMacやiBookが競合することはないんだ」

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