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イアマス・イズ・インターチェンジ。イアマスを出るとき、それまでとは異なった道が見える――IAMAS第3期生卒業制作展から(前編)

2000年02月21日 00時00分更新

文● 野田ゆうき

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18日、岐阜県大垣市のソフトピアジャパン(*1)で、イアマス(IAMAS:International Academy of Media Arts and Sciences)(*2)第3期生卒展が開幕した。会場で展示、実演された作品を紹介する(作者の敬称略)。

会場となったソフトピアジャパン内のソフトピアホール会場となったソフトピアジャパン内のソフトピアホール



(*1)“高度情報基地ぎふ(情場)”づくりの中核拠点となるべく大垣市に作られた情報産業団地。 岐阜県版シリコンバレーを目指す。イアマスは、“ソフトピアで働く人材育成のための教育機関”と行政は考えている

(*2)'96年4月に開校した岐阜県立国際情報科学芸術アカデミーの略称。現在、求められている情報産業や新しい文化に寄与できる人材育成を目的としている

イアマス3回目の卒展は?

その開校当時、高遠な理想とユニークな実践によって、多方面から注目を集めたイアマスも今年の4月からは開校5年目に入る。

大学を出た学生や社会人に対しても十分に対応できる情報エリート養成機関として、イアマスは日本でのパイオニアの役割を果たしてきた。この4年間でも内外のメディアアート展などで高い評価を得る作品を生み出している。反面、岐阜県が目指しているようなIT産業への寄与は大きいとは言えない。

このところ、イアマスのようなメディア系スクールの開校が全国で相次いでいる。地理的には決して有利とは言えないイアマスが、この先も”トップランナー”でいられるのか。また、これからのメディア産業、文化の担い手たちは今、何を考えて、何を創ろうとしているのか。

本稿では、3回目の卒展の中から、いくつかの作品を紹介する。

The World is Mine

佐々木準

高校卒業後にイアマスに入学した佐々木準は、高校時代からずっと“絵本”を作り続けている。その作品にはよく少年が登場する。今回の作品の主人公も佐々木準自身であるのだろう。

(彼によると)この作品はデジタルインタラクティブ絵本である。主人公が都会の中を独り歩いていく途中で、“何か”と遭遇する。彼は魔法でその“何か”を変えてみせる。魔法を使うのは、コンピューターを操作している“わたし”だが、魔法は佐々木準のものである。いつのまにか、わたしは彼の魔法に掛かってしまっていた。

魔法が使える少年の物語に没入する体験者魔法が使える少年の物語に没入する体験者



reisui.voice

坂井レイシュウ

声楽出身のレイシュウは、自分の声をデータベースにした。50音を基本とした自分自身の音声を、それそれ音程を変えて数種類のデータとし、ウェブ上に公開した。それをどのように利用するかは、利用者に任されている。このデータベース、4月にはCD化される予定だという。それまでは、ウェブからダウンロード可能。

会場でデモンストレーションをする坂井レイシュウ会場でデモンストレーションをする坂井レイシュウ



私ちゃん~inflate+deflate~

上山朋子 

上山は音を視覚化した服を創作し、それを着用してパフォーマンスを行なった。体に取り付けられた音センサーが街頭のさまざまな音を関知すると、胸や腰に取り付けられた風船が膨らむというものだ。音を感じる日常を表現したい、音の日常を視覚的に表現したい、という上山の夢は擬似的に作られた都会の音空間の中でいっぱいに膨らんでいった。

パフォーマンスステージの上山パフォーマンスステージの上山



Spannung

内田晴子

内田は愛知県下の芸大を卒業後、イアマスにやってきた。古典絵画構成に関心のあった内田がイアマスで取り組んだきたのは、平面構成のための支援ツールの開発だった。この作品では、描いたモノと余白の部分の関係性によって新しいモノが自動的に描画される。新しいモノが描かれる場所や大きさは、プログラム化された関数によって決定され、さらに全体の構成を再構築して描画される。(http://www.iamas.ac.jp/~hal98/)

作品のデモンストレーションをしてくれた作者作品のデモンストレーションをしてくれた作者



Tele Tangible Dots

村上泰介

会社を退職してイアマスに入学した村上は、ネットワークを介した触覚の伝達やウェラブルコンピューターの研究を続けている。この作品は、地理的な距離と触覚というコミュニケーション手段との関係を考えさせるインスタレーションになっている。村上はすでにソフトピアのインキュベートルームに入室し、学生ベンチャー代表としての顔も持っている。

触覚伝達のインスタレーションを体験する触覚伝達のインスタレーションを体験する



cent folia #3

石崎奈緒子

化粧机の前に腰掛け、鏡の中に自分の顔を眺める。しばらくして、美しい薔薇(ばら)の花が鏡台の中に咲き始め、そのうちに自分の顔を覆ってくる。自分自身の容姿に対するコンプレックスと、自己陶酔との狭間に割り込むように現われる薔薇の花。体験者はそのとき内面にアイデンティティの危機を感じるかもしれない。

薔薇の花に囲まれていく顔を見つめる作者薔薇の花に囲まれていく顔を見つめる作者

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