展覧会場でこの卒展の総合マネージャーをしている高橋裕行氏に話しを伺うことができた。高橋氏自身もイアマス第3期生であり、会場で論文を発表している。メディアアートのキュレーターを目指している高橋さんに、今回の卒展全体の印象やこれからのイアマスについて語ってもらった。
卒展委員として展覧会をマネージメントしてきた高橋裕行氏 |
――総合的に見てきてどのような印象ですか
「今回の卒展は、1回目や2回目のものと比べて、地元に馴染んだものになった。今まではともすると、東京を意識し過ぎていたように思います。このように自分自身を掘り下げた作品が多くなったのは、作家が等身大で作品作りに取り組んできたためでしょう。技術先行ではなく、作品に対しての深い理解の末にできている。つまり、自分をきちんと分泌できている作品が増えたのだと思います」
――会場には、コンピューターを使っていないインスタレーションもありましたね
「コンピューターやネットワークを使うことが重要なのではないのです。あくまでもそれらは、表現のための手段です。佐々木君の『The World is Mine』にしても大石君の『極小農園』にしても、今までのメディアで作っても十分に面白い。それをコンピューターを使ってインタラクティブにすることで、もっと面白くなるし、別の人も見てくれる」
『極小農園』(大石暁規 作)で遊ぶ子供 |
――イアマスの2年間をどのようにとらえていますか?
「イアマスに来る人たちの多くは、それ以前にすでに何かを掴(つか)んでいるか、掴みかけた人たちです。その人たちにとってイアマスは、ターニングポイントになっていると思います。コンピューターという表現手段を得て、それによって掴んでいた何を消化し、自分に取り込んだ人たちの作品は、技術面が目立ったものではありません。イアマスに来て、イアマスを出るとき、それまでとは異なった道が見えるのです。イアマスはインターチェンジと言えるでしょう」
――平成13年度には、大学院大学が新設されますね。イアマスは変わるでしょうか?
「これからもさまざまの分野を経験した人たちが集まり、イアマスで相互に影響していくでしょうね。ただし、大学院大学が新設されれば入口が狭くなるでしょう。出口の可能性は開かれるでしょうが」
「2年間で感じたことですが、まだ、イアマスは技術修得に偏重していると思います。イアマスでは、ほかの同系の学校に対するアドバンテージを強調すべきだと思います」
今回のパンフレットにあるように、これからもイアマスは、“知性や感性、技術と表現、地域と世界といった異なった軸を結び付ける1つの核として”の人材育成を目指すのだろう。2年間のそのような教育を修了して社会に出るには、今の日本はあまりにも厳しい情勢だ。若いメディアクリエーターやアーチスト、起業家たちの活躍を見守りたいと思う。
また、イアマスが自ら修正し、提議し、実践しなければならない教育課程や教育方法、特に大学院大学新設には注目が集まっている。パイオニアとしての責任は、さらに重くなったと言える。
なお、今回の卒展に展示された作品の一部は3月7日から、東京・青山スパイラルで公開される予定。連絡先はhyt98@iamas.ac.jp (高橋)