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【MACWORLD Expo/Tokyo 2000 Vol.14】【INTERVIEW】スティーブ・ジョブズに“クラゲの交尾”と言わしめた斬新なデザイン、iMac用サブウーハー『iSUB』――ハーマンマルチメディア社長、ジム・ドラックリー氏に訊く

2000年02月21日 00時00分更新

文● 編集部 井上猛雄

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今回の“MACWORLD Expo/Tokyo 2000”のサウンド関係ブースにおいて、ひときわ異彩を放っていた斬新なデザインのサブウーハー『iSUB』。この製品は、iMac DVおよび iMac DV Special Edition 専用に作られたハーマンマルチメディアの力作である。出力20Wのアンプを備え、筐体(きょうたい)に収納された6インチのウーファーで、44Hz~280Hzの周波数レスポンスをカバーする。ハーマンマルチメディアの社長、ジム・ドラックリー氏に、その開発経緯などについて訊いた。

斬新なデザインのiMac用サブウーハー『iSUB』。たしかにクラゲのように見えるデザイン斬新なデザインのiMac用サブウーハー『iSUB』。たしかにクラゲのように見えるデザイン



北米では最大のシェアを誇るオーディオメーカー

――まず会社の概要について、教えてください

「親会社のハーマン・インターナショナルは、北米では最大のシェアを誇るオーディオメーカーです。競合メーカーにはBOSEがあります。事業としては3つの大きな柱があります。1つはプロフェッショナルグループ。ここではローリング・ストーンズやブルーススプリングスティーンなどのミュージシャンがツアーをするときに音楽器材を提供しています。世界で90パーセントの音楽スタジオが、私どものスピーカーやマイクロフォン、ミキシング機器、DSPなどを使っています」

「もう1つの柱はコンシューマーディビジョンです。これには、JBL、インフィニティ、ハーマンカードンなどの有名なブランドがあります。それから3つ目の柱としてOEM分野の製品があります。これに関しては、世界の主要なクルマメーカーのオーディオシステムのほとんどに供給しています。たとえば、関連会社まで含めると、トヨタ、クライスラー、三菱、BMW、ジャガー、サーブ、メルデセスベンツ、アウディなどに供給しているのです」

――数多くの関連企業の中で、ハーマンマルチメディアの位置づけは?

「ハーマンマルチメディアはOEMグループの傘下になります。ここは音楽、サウンドシステムのプロバイダーです。特に、コンピューター業界に関しては我々の役割になっています。コンパック、デルなどのメーカーのほか、最近ではアップルとの関係がとても深くなっています。特にアップルとの関係は我々にとってエキサイティングなものです」

「アップルとの最初のいきさつですが、最初のiMacのサウンドクオリティーが悪くて、ハーマンカードンのオーディオシステムを供給することになりました。2つの内蔵スピーカーをiMacに供給していますが、さらに今回、我々のシステムを使って、最良の品質のサウンドを提供するための新しいプロジェクトが始まったわけです」

ハーマンマルチメディア社長、ジム・ドラックリー氏。ドラックリー氏が抱えている『iSUB』は、100V電源用の貴重な日本仕様品ハーマンマルチメディア社長、ジム・ドラックリー氏。ドラックリー氏が抱えている『iSUB』は、100V電源用の貴重な日本仕様品



iMacのデザインをした有名なデザイナーが参加

――製品について教えてください。『iSUB』は、とても斬新なデザインですが、どういった発想から出てきたものなのでしょうか?

「“iSUB”は、去年の10月に米国でスティーブ・ジョブズが初めて発表したものです。ジョブズはこのデザインをいたく気に入ってくれて講演で紹介したのです。デザインに関しては、とても斬新な形に仕上がっていますが、そうは言っても基本的な音響的な要求事項は満たしています」

「まず最初に我々のほうから機械的な要求や音響的な要求を設計事項を入れ、最終的なデザイン設計に関してはアップルが担当しました。もともと、このプロジェクトの中にはジョナサン・アイブスという、iMacのデザインをした有名なデザイナーが参加しています」

――開発期間はどのくらい掛かりましたか?

「6ヵ月から7ヵ月といった期間でしょうか。米国では今月から出荷が始まったばかりです」

――上方から音が出ているようにも聞こえるますが、構造的にはどのようになっているのでしょうか?

「実際には、デザインを見ると上から音が出ているように見えますが、これはエアーフローになっています。ウーハーは下を向いています。低周波では44Hzから280Hzの音域をカバーしていますが、低周波では音の方向性はありません。それでも重厚なサウンドを醸し出すのは、ホームシアターなどのサウンドシステムでカウチに置いたりしても問題がないのと同じ理屈です。ただし、米国のユーザーからは、デザインがいいのでデスクトップに置きたいという感想もあります」

『iSUB』を下(写真右)と上(写真左)から見たところ。下にはウーハーが見えるのが分かる


音域のクロスオーバーを自動的にチューニング

――iMac専用ということですが、iMacに内蔵されているスピーカーと“iSUB”の組み合わせることによる相乗効果について、何か工夫をされた点はありますか?

「“iSUB”にはソフトが付いていて、iMacとうまくハーモナイズするようになっているのです。iMacに“iSUB”をプラグインすると、4秒後には自動的に内蔵スピーカーとサブウーハーの間で、音域のクロスオーバーを変更するようになっています」

「重要な点は、もともと内蔵されたiMacのスピーカーが低周域をカバーしようとすると負荷が掛かかりますが、iSUBを付ければ低音域に掛かる負荷を軽くできることです。これにより、内蔵スピーカーはより高い音域を出せるようになるわけです。具体的には、iMacの内蔵スピーカーの音域は100Hzからカバーします。iSUBの最も低い周波数は44Hzなので、音域のクロスオーバーが起こるのです。100Hzのクロスポイントを境にして、内蔵のスピーカーに対しては100Hz以上の音域を分担させ、できるだけ高音を出せるようにする。iMacとiSUBが音域を相互補完するような形になるわけです。これはアップルとの強力なパートナーシップのもとに同社にのみ提供している技術です」

――そうなると、たとえばアップル以外のメーカーに供給しているプロダクトの展開は、どのようになるのでしょうか?

「アップルとハーマンマルチメディアは非常に長い時間を掛けて、この“iSUB”を作り上げました。したがって、アップル社以外のメーカーには、この製品を出すという考えはありません。デル、コンパック、アイ・ビー・エムといったメーカーに対しては、まったく違ったコンフィギュレーション(構成)を提供することになると思います」

――日本での発売時期、価格、販社について教えてください

「販社については、いま複数の販売代理店と交渉中です。ですから日本においての最終的な販売価格について未定です。販売代理店が決まった段階で、市場調査を行ない、ほかのiMacの周辺機器との絡みも考えつつ価格を決めていきたいと思います。発売は日本仕様の電源の関係もあって、認可が下りるまでの2ヵ月か3ヵ月後に登場することになると思います。販売目標は公表できませんが、日本市場はMacユーザーが多く、大きなポテンシャルがありますから特に期待しています」

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