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デジタル放送の双方向サービスを公開実験

2000年02月17日 00時00分更新

文● 浅野純也

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17日、東京中央区築地の(株)電通本社において、デジタルテレビ放送における双方向サービスの公開実験が行なわれた。これは地上波デジタル放送に関する技術検証や実験を行なう“東京パイロット実験実施協議会”という組織の1グループである“双方向サービス実験TG(Task Group)”が主催したもの。地上波デジタル放送は、現行の地上波放送をデジタル化するもので、今年12月から始まる衛星デジタル放送と同様、高品質、データ放送、双方向性などが特徴。2003年ごろから大都市での実験放送が予定されている。

デジタル放送では、通常の映像や音声以外にデータ専用の帯域が設けられており、テキストやグラフィックスを始め動画や音声のデータも送ることが可能。電子番組表(EPG)や番組中の関連情報を流したり、視聴者参加型の番組制作、オンラインショッピングなどの使い方が想定されている(データ放送の枠内での動画放送やラジオ放送なども考えられている)。

この日の実験はそれらを実際に放送/受信するというもの。東京タワーからデジタル放送の電波を送信、データ帯域を使ったインタラクティブCMや双方向のテレビショッピングのデモを行なった。TGのリーダーである(株)アスキーの藤井尚夫氏は今回の実験について、「実際に家庭に双方向のデータ放送を入れるためにどう取り組んだらいいのか」というソフト面が目的であると語った。

公開実験の趣旨について話すグループリーダーの藤井尚夫氏(アスキー)公開実験の趣旨について話すグループリーダーの藤井尚夫氏(アスキー)



インタラクティブCMは、吉本興業(株)が製作したもの。同社所属のお笑いタレントが出演しており、CM内での漫才に対し、ボタン選択により“ツッコミ”を入れると、ツッコミ用の音声ファイルが再生されて漫才に参加できるものや、出演者の顔への落書きが可能なもの、ボタンを押すと“ものまね映像”が再生されるCM(押さないと静止画)、CMのテーマ曲を着メロとして携帯電話機にダウンロードできるものなど、さまざまな作品が放送された。通常放送中にバックグラウンドでデータをスプールし、ユーザーのボタン操作があった時点で、音声や動画データを再生する仕組みだ。

CM内の漫才中にボタン操作をするようメッセージが表示されるので、ボタンを押すとそれに対応した音声データが再生されて漫才に参加することができる。左の通常のテレビはデータ放送未対応なので下のメッセージが表示されない
CM内の漫才中にボタン操作をするようメッセージが表示されるので、ボタンを押すとそれに対応した音声データが再生されて漫才に参加することができる。左の通常のテレビはデータ放送未対応なので下のメッセージが表示されない



着メロのデータをダウンロード中。左のノーマルテレビとは違う表示になっている
着メロのデータをダウンロード中。左のノーマルテレビとは違う表示になっている



双方向ショッピングは、MXTV(東京メトロポリタンテレビ)や日本ビクター(株)などが制作したもの。放送中の画面内にカーソルを合わせて購入できるものを選択、その詳細を見たり購入金額のチェック、一覧などを簡単なボタン操作で行なえる。品物をカートに入れるインターネット上のオンラインショップと同じ感覚だ。面白いのは放送中の動画の中に商品を置けば、その位置情報を検出して、どの品物が選択されたかがわかること。ショッピング番組だけでなく、技術的にはドラマなどにも応用することができるという。ちなみに、この実験ではパケット通信ができる携帯電話『DoPa』がユーザーからセンターへのアップリンク用に使用された。構想では4000アイテムを揃えたショッピング番組が可能であり、デジタル放送に興味を持つ30~40代男性やその配偶者をターゲットに、主に日用品の販売を狙っている。データ放送のフォーマットはBML(Broadcast Markup Language)というXML互換の言語が採用されており、位置情報の抽出や金額計算などのコマンドもあらかじめ用意されているという。

CMドラマ中のカーソルを動かして商品にフォーカスするとその商品を選択・購入することができる双方向ショッピング
CMドラマ中のカーソルを動かして商品にフォーカスするとその商品を選択・購入することができる双方向ショッピング



もちろん商品の詳細情報も電波で送られてくる
もちろん商品の詳細情報も電波で送られてくる



購入商品を確認。クレジットカードの番号はあらかじめICカードに内蔵しておける
購入商品を確認。クレジットカードの番号はあらかじめICカードに内蔵しておける



実際に電波を飛ばしてのデータ放送の実験はこれが初めてであり、もちろんコンテンツの制作も手探り状態なので、このスタイルが実際に使われるわけではない。ただしインターネットのオンラインショップ同様、データ放送がその将来性を高く評価されているのは事実(BSデジタル放送では参入企業が定数の数倍あったし、米国では地上波アナログ放送の隙間電波を使ったインタラクティブCMが行なわれている)。今後こうした動きはますます活発化してくることだろう。

    ※junya@sepia.ocn.ne.jp双方向サービス実験TG問い合わせ先:Tel.03-5351-8727

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