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【Windows 2000 Expo Vol.3】コンパックのサーバー戦略はマルチCPUによるノンストップトランザクション--マイケル・カペラス社長兼CEOによる基調講演

2000年02月16日 00時00分更新

文● 編集部 鹿毛正之

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米サンフランシスコにて開催中のWindows 2000 Conference & Expoにおいて、15日の午後6時半(現地時間)から、米コンパックコンピュータの社長兼CEOを務めるマイケル・カペラス(Michael D. Capellas)氏による基調講演が行なわれた。

昨年の7月にコンパックのCEOに就任したカペラス氏は、米オラクルやSAPアメリカといった、エンタープライズサーバー上で用いられるソフトのベンダーに在籍した経歴を持つ。それゆえ、サーバー向けOSであるWindows 2000について語るには絶好の人物と言えよう。

大きなボディアクションでアグレッシブな講演スタイルをみせたマイケル・カペラス氏
大きなボディアクションでアグレッシブな講演スタイルをみせたマイケル・カペラス氏



キーワードは、いつでもどこでも“ノンストップ”

講演が始まる前に放映された同社のイメージビデオでは、“Windows 2000にとって最良のプラットフォーム”というキーワードが提示された。米国のサーバー市場においてデルコンピュータとシェア首位を争っているコンパックだが、サーバー分野ではUNIXサーバーのベンダーも強力なライバルとなる。そのためか、ビデオの内容は、Windows 2000をキーワードにサーバーの導入を検討している企業への強いアピールを感じさせるものだった。

今回の講演でカペラス氏が強調したのは、同社の広告でもおなじみの“ノンストップ”というキーワードだ。

会場とホテルを結ぶシャトルバスをスポンサーしていたコンパック。ここでも大きく“ノンストップ”をアピールしていた
会場とホテルを結ぶシャトルバスをスポンサーしていたコンパック。ここでも大きく“ノンストップ”をアピールしていた



カペラス氏は、これからの市場トレンドを、“全世界におけるインターネットの爆発(的発展)”と表現。具体的には現時点で2億人近いインターネットユーザーが2003年には5億人に達するほか、eビジネスの規模が現在の1110億ドル(約12兆円)から2003年には1兆3000億ドル(約143兆円)に爆増するという。

このようにインターネットが大きく拡大していくなかで、市場に対して“いつでもどこでも”インターネットに接続できる環境がますます求められようになると、カペラス氏は指摘した。

この、いつでもどこでもという環境を実現する“次世代のアーキテクチャー”の核として、カペラス氏は“ノンストップ・トランザクション・エンジン”を紹介。堅牢で信頼性が高く、しかも冗長性を備えたシステムとして同エンジンのコンセプトを示し、その重要性を指摘した。

また、顧客からのアクセスは自動車や家庭など場所を問わず行なわれ、アクセス用のデバイスも携帯電話などパソコン以外の機器が活用されるようになると語った。次世代アーキテクチャーではこれらのデバイスから発信される情報がウェブベースで適所に配置され、いつでもどこでも“ノンストップ”で処理されるのだという。

会場内の大スクリーンに、カペラス氏の一挙手一投足が映し出された。講演の要所では、スクリーンにスライドが映される場面も
会場内の大スクリーンに、カペラス氏の一挙手一投足が映し出された。講演の要所では、スクリーンにスライドが映される場面も



インターネットデバイスの『iPAQ』もWin 2000を搭載

これらの状況を元に、カペラス氏はコンパックの戦略として、次の3点を挙げた。それらは(1)ノンストップeビジネスの構築、(2)ノンストップのインターネットアクセス、(3)ノンストップソリューションの定義、というものだ。

ノンストップeビジネスの構築に関しては、「Windows 2000がコンパックにとっての鍵となる要素」だと明言。同社がマイクロソフトと20年近くにわたってパートナーシップを結んできたことをアピールし、すでに300台以上の社内サーバーがWindows 2000ベースに移行していることを明らかにした。

インターネットアクセスについては、1月に同社が発売を開始した『iPAQ』を紹介。iPAQはISA/PCIスロットやPS2といった旧来の装備を持たない“レガシーフリー”な設計で、インターフェースとしてはUSBのみを備えた“インターネットデバイス”だ。FDDやCD-ROMドライブといった外部記憶装置は、ホットスワップに対応した“マルチベイ”に収納される構造になっている。

iPAQでは、おもに企業内におけるクライアントマシンとしての利用を想定している。ただしiPAQにはPentium III-500MHzといった比較的高速なCPUが搭載されるほか、Windows 2000などのOSもインストールされており、この点でいわゆるサーバーコンピューティングやシンクライアントとは異なっている。

iPAQを手に、内部の構造を説明するコンパックのスタッフ。左側の液晶モニターには、操作中の画面が映し出されていた
iPAQを手に、内部の構造を説明するコンパックのスタッフ。左側の液晶モニターには、操作中の画面が映し出されていた



ステージでは、iPAQのマルチベイにFDDを挿し込み、FDからワードのdocファイルを読み出した後、USBポートに接続したプリンターで印刷するというデモを実演。続いて、インターネット経由でコンパックの社内LANにアクセスし、USB接続したカメラを利用したビデオ会議システムを利用するデモも行なった。

1月に発売したばかりのiPAQは順調に出荷されているとのことで、コンパックでは今年中に100万ドル(約1億1000万円)相当のiPAQを販売する見込みだという。同社のサイトではiPAQを499ドル(約5万5000円)で販売していることから、約2000台の出荷を予定している計算となる。

マルチプロセッサーを中心としたサーバー戦略

このようにクライアントとしての製品を紹介した次は、コンパックが得意とするサーバー製品の紹介だ。コンパックでは次世代のサーバー戦略として“ProLiant eGeneration”のラインナップを計画しているという。

この戦略では、性能面では毎秒10万以上のトランザクション(10万tpmC)を処理し、拡張性ではOpen SAN アーキテクチャーに準拠した32CPU超の製品がラインナップされる。同社は8CPUのサーバーでは市場の90パーセントを占めており、マルチプロセッサー分野では業界のリーダー的存在である。

ステージ上には8CPU搭載機と32CPU搭載機という2台のProLiantが置かれ、川上(サーバー)から川下(iPAQ)までの幅広いラインナップを提供する同社の商品戦略がアピールされた。

左にマルチプロセッサーのProLiant、右にiPAQと、コンパックの幅広い製品ラインナップを並べてみせた
左にマルチプロセッサーのProLiant、右にiPAQと、コンパックの幅広い製品ラインナップを並べてみせた



ライバル同士の奇妙な一致、eビジネスの方向性を示唆

ここで興味深かったのは、カペラス氏の発言には、午前中に行なわれたマイケル・デル デルコンピュータ会長の発言と重なっている部分が少なくなかったということだ。

カペラス氏は、eビジネスの発展に伴ってさらに高いパフォーマンスが要求されるようになると述べ、それに対応する同社の“サーバー・プラットフォーム・ストラテジー”を明らかにした。そのストラテジー(戦略)の要素として挙げたのが、管理の容易さをもたらす“Manageability”であり、クラスター構成における拡張性を意味する“Clustering to Scale”だった。

この2つは、デル氏がeビジネスに必要な基礎として指摘した4項目のうち、容易な管理(Manageble)と拡張性(Scalable)にズバリ一致する。またデル氏が挙げた信頼性(Reliable)や可用性(Flexible)については、前述の“ノンストップ・トランザクション・エンジン”が該当すると言えなくもない。

この奇妙な一致は、米サーバー市場で覇権を争う両者の戦略が、図らずも一致していることを如実に表わしている。同じようなサーバー製品で同じWindows 2000を走らせる以上、戦略が似てくるのは道理ではあるのだが、両社の思惑が一致したことにより、今後のeビジネスにおける方向性が明らかにされたと捉えることができるだろう。

カペラス氏とデル氏の講演で共通するもうひとつの要素は、ともにマイクロソフトとのパートナーシップを強調していた点だ。カペラス氏は、“コンパックのサービスと、Windows 2000の組みあわせ”が、拡張性を持つ(Scalable)なサーバーの提供を可能にするとアピール。また、マイクロソフトが運営するMSNがコンパック製品の顧客であるとし、2000台以上のSQLサーバーを運用しているという実績を強調した。

Windows 2000のバナーを前に講演を行なうカペラス氏。コンパックとマイクロソフトのパートナーシップをアピールしているかのようだ
Windows 2000のバナーを前に講演を行なうカペラス氏。コンパックとマイクロソフトのパートナーシップをアピールしているかのようだ



薄利多売か、高利益率か、分かれる両社の戦略

講演の最後にカペラス氏が挙げた概略(Summary)では、コンパック製品がWindows 2000にとって最良のプラットフォームであるという、冒頭にビデオで紹介されたキーワードが繰り返された。また、“ディープパートナーシップ”という言葉を用いて、同社とマイクロソフトとの強力な関係を再度アピールした。

15日に開催された2つの基調講演では、デルコンピュータとコンパックの戦略を対比することができた。両社とも、Windows 2000を搭載したサーバーを売り込みたいという点では一致しており、eビジネスの今後についても見解に大きな違いはない。

ただ、製品の内容に関しては、デルでは数多くのサーバーを販売する薄利多売的な戦略を目指すのに対し、コンパックではマルチプロセッサーなど付加価値の高いサーバーの比重を高めていく模様だ。比較的小規模の企業も相手に商売するデルに対し、高性能のサーバーを必要とする企業を対象とするコンパック。この両社の違いが現われたのが印象的であった。

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