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“教育と技術の橋渡し”ができる人材の育成を――第4回情報通信セミナー開催より(後篇)

2000年02月03日 00時00分更新

文● 天野憲一

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1月30日、兵庫県立姫路工業大学において“ネットディで創ろう、開かれた学校”と題して、第4回情報通信セミナーが開催された。本稿では、今回のセミナーの最後に催されたパネルディスカッションを紹介する。

兵庫ニューメディア推進協議会の山本誠次郎氏をコーディネーターに、明石市立衣川中学校ネットディ実行委員会の柿野敏彦氏、姫路市立安室東小学校長の平野成介氏、はりまスマートスクールプロジェクトの和崎宏氏、兵庫県教育委員会教育研修所の上谷良一氏らがディスカッションに参加した。

パネリストの各氏パネリストの各氏



コーディネーターの山本氏コーディネーターの山本氏



兵庫県下の学校のパソコン設置率は99.1パーセント

まず上谷氏から、兵庫県下の情報教育の現状について発表があった。県内の学校におけるコンピューターの設置率は99.1パーセントであり、全国平均以上となっている。

今後の計画としては、2001年には全教員がコンピューターの操作をできるよう、すべての学校をインターネットに接続する。2002年以降には、新しい学習指導要領で“情報”が必須となり、いっそう積極的にコンピューターを活用することになっていく。そして、2005年には全教員が1人1台のコンピューターを専有し、高速な回線でのインターネットの接続を実現していくと述べた。

兵庫県教育委員会教育研修所の上谷氏 兵庫県教育委員会教育研修所の上谷氏



続いて、和崎氏が“ネットディ”に関する発表を行なった。同氏はこの運動を播磨で始めたきっかけとして、“はりまスマートスクールズ”の企画を立て、昨年4月に調査費として補助金がおりたため、実行委員会を組織した。そしてボランティアが学校で配線など機器を設置し、インターネット接続をする“ネットディ”が実現した。「ただ、現在の“ネットディ”はまだまだ地域だけのものが多く、規模が大きいとは言えない。それでもこの“ネットディ”をきっかけとして、学校間のみならず、地域の人々との関わりを広げることになれば」と語った。  

はりまスマートスクールプロジェクトの和崎氏はりまスマートスクールプロジェクトの和崎氏



インターネットの導入で、教師、生徒、さらに父親との結びつきも

平野氏からは、安室東小学校での“ネットディ”での経験が報告された。「“ネットディ”を実現するまでは、コンピューターは難しいものだという意識があったが、いまでは大変便利なものだと考えるようになった。毎日学校のコンピュータールームを使いたいという要望も子供たちから出てきているほどだ。先生たちも分からないことを子供に尋ねるという空気ができ、こういうコミュニケーションができたのもネットディのおかげだと思う」

姫路市立安室東小学校長の平野氏姫路市立安室東小学校長の平野氏



柿野氏は、衣川中学校でのネットディについて発表。PTA代表として、これまで学校に対してどういう関わりをすればよいのか悩んでいたが、ネットディに参加して、これは教育への父親参加のきっかけになると思ったという。「開かれた学校を作ることが必要だと感じ、ネットディのあとも、パソコンやインターネットの教室などを開いてくれるよう、学校に要望している。学校の施設を一般に開放することは管理上問題があるだろうが、それについてはPTAとして補佐していきたい」と述べた。

明石市立衣川中学校ネットディ実行委員会の柿野氏明石市立衣川中学校ネットディ実行委員会の柿野氏



ネットを利用して地域ぐるみで子供を育てるコミュニティーの再現を

パネルディスカッションは盛り上がり、今後の“ネットディ”の広がりや、兵庫県独自の情報発信をどう進めていくかについて、先の和崎氏から発言があった。

熱心に聞き入る参加者熱心に聞き入る参加者



「昔は学校が地域の中心となり、地域ぐるみで子供を育てていた時代があったが、再びそういうコミュニティーを作っていきたいという思いがある。その中で親が自分たちの得意なもので学校に関わることができれば、親が学校のサポーターになれるだろう。そして学校も開かれ、壁がなくなっていくだろう。“ネットディ”は手段であり、それが産み出すものが目的だ」

上谷氏は、“ネットディ”が学校や家庭や地域をつなぐための新しい切り口であるとし、現在、学校における情報教育のための環境整備が必要であるが、それは手段であって、目的は人とつながることであるとした。「これから学校が情報の拠点となれば、たとえば防災上の拠点ともなるので、いざというとき誰もが使えるものでなければならない。休日もパソコンを使えるようにする必要があり、それでこそ開かれた環境といえる」と述べた。

また、会場からは、来年“ネットディ”を実施する予定の学校の教師からイベントに向かっての状況が報告されるなど、参加者を交えての質疑応答も交わされた。

来年ネットディを実施予定の学校の教師からの質問も来年ネットディを実施予定の学校の教師からの質問も



コンピューターがあるという意味では、学校の環境も大きく変わりつつある。しかしそれよりも大切なのは、たとえばテクノロジーコーディネーターのような、“教育と技術の橋渡し”ができる人材なのだろう。“ネットディ”が、これから新たな教育の時代を作るきっかけとなるだろうと思わせるセミナーだった。

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