2月1日、DTPフォントメーカーのフォントワークス・インターナショナルは、業務用の高品位な外字を簡単に作成できるソフト『フォントワークス外字マスター1.0』を発表した。
『外字マスター1.0』は、既存のフォントを部首や1画ずつの線(ストローク)などに分解したモジュールを提供する。モジュールで提供されるフォントは、1画ずつが独立したアウトラインデータになっており、ブロック積み木の要領で、類似した文字の各部分をかき集めて新しい文字を作成できる。部品を組み合わせるので、ある程度の品質の文字を短時間で作成できる(*1)。また、外字作成を効率化するだけでなく、フォントデザインも既存のものに合せることもできる(*2)。
(*1)フォントメーカーが発売する外字セットでは、旧字、異体字、歴史的な漢字や地名、人名などの場合、サポートされていないものも多い。このため実務では、フォントセットに含まれない漢字はそのつど作成している。足りない字の制作には、専用の外字作成ツールや線画作成ソフトなどが利用されているが、フォントの作成は難しく、しかも時間が掛かる。加えて、本文に使われているフォントのデザインを、新たに作成したフォントのデザインを合わせることは、プロのフォントデザイナーでも難しい。
(*2)一般にアウトラインフォントは、字の外形にアウトラインをなぞらせた形で作られる。つまり、1字1字がデザイン的に高度に完成された形になっている。このため、極めてよく似た字であっても、これを再編集して使うことが難しい。出版物の中では、たまに前後の文字と微妙に異なるデザインのものが混じっていることがある。これは、フォントの指定がその前後と異なって誤って指定されている場合もあるが、そのときだけのために応急に作られたフォントで間に合わせていることが多い。デザイン的な整合性まで行き届かなかった例だ。
![]() | 線画ソフトや従来の外字作成ソフトでフォントを作成する場合、フォントはその外形をなぞる形でアウトラインを描かなければならない(右上)。『フォントワークス外字マスター1.0』でのフォント作成では、1画ずつアウトラインとして提供される(右下)ので、短時間でフォントを作成できる。個々のアウトラインも自動化されたツールで変更できる |
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『外字マスター1.0』の最大の特徴は、文字の部品を拡大、縮小しても、部品を構成する縦横の線の幅が変わらないこと。従来の外字作成ツールやAdobe
Illustratorなどの線画作成ソフトでの外字作成では、縦横の線幅が変わるために、この微調整が難しく、外字作成上のネックになっていた。
作成された外字は、文字の縮小によっても潰れが起こらない仕組み、ヒント情報を含んだものになる。また、作成されたフォントは文字を扱うことができるすべてのアプリケーションで利用でき、線画ソフトによるフォントのアウトライン取得、PDF(Portable
Document Format)への埋め込みも可能。今回はMacintosh上のフォントであるが、将来はWindowsなど他のOSへの対応も予定している。
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『外字マスター1.0』では、部品を拡大、縮小しても文字を構成する線の幅が変わらない。画面は『外字マスター1.0』のユーザーインターフェース |
『外字マスター1.0』の販売は2月14日から開始。製品としては、アプリケーション本体を無償で提供する。フォントの部品の集合であるモジュールは、フォントごとに発売される予定。1モジュール5万円。当面、提供されるモジュールは同社のマティス-Mのみだが、今後逐次、同社の既存フォントと同デザインのモジュールも提供していく。
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『フォントワークス外字マスター1.0』について説明するフォントワークス・インターナショナル社、社長兼CEOのロス・エバンス氏 |
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フォントワークスジャパン代表取締役松雪文一氏。「業務レベルでは、文字を構成する線の縦横の幅や、相互の位置関係や空白のバランスなどを調整する必要があるが、外字マスター1.0を使えば、慣れれば、1文字を1分間で作成できる」 |
なお、『外字マスター1.0』は販売に先駆けて、東京・池袋のサンシャインシティ・コンベンションセンターで4日まで開催中のPAGE2000において、一般公開される。
