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テキサス・インスツルメンツ、トップ来日記者会見を開催

2000年02月01日 00時00分更新

文● ケイズプロダクション 岡田 靖

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DSPとアナログ半導体の最大手

米テキサス・インスツルメンツ(Texas Instruments:TI)社は、DSP(Digtal Signal Processor)やアナログ半導体を中核とし、経営資源を集中投入することで大きな成長を遂げた半導体・電子機器メーカーだ。1996年に現会長、社長兼CEOのThomas J. Engibous(トーマス・J・エンジバス)氏がCEOに就任してから、それらに集約するため、事業の売却、買収を進行させ、DSPおよびアナログ半導体でトップシェアを獲得している。特に、同社が最も得意とするDSPにおいては、全世界の市場のうち半分近くを獲得し、「DSPといえばTI」ともいわれるほどになっている。

ご存じの読者も多いかと思うが、DSPはハードウェアロジックで乗算器を備え、プログラムバスとデータバスを別個に持つことによって、大量のデータを高速に処理できるロジックLSIだ。CPUより効率よく処理を進められるため、同じ処理性能を得るにもコストや消費電力の面で非常に有利となる。また、プログラムでさまざまな処理を行なえるので、応用範囲も幅広い。ハードウェアのみで構成されたシステムと異なり、プログラムを変更すれば新しい機能に対応できるので、規格の変更や、製品の陳腐化への対策として非常に有効で、製品の開発期間も短縮できるという利点もある。携帯電話のリアルタイム音声処理、特に圧縮/伸張コーデックにも必須とされており、今後さらに市場の拡大が期待されている半導体だ。

テキサス・インスツルメンツ会長、社長兼CEOのThomas J. Engibous氏
テキサス・インスツルメンツ会長、社長兼CEOのThomas J. Engibous氏



DSPは動画や音声などの処理が得意だ。これらの製品は、DSPの応用によって可能になった
DSPは動画や音声などの処理が得意だ。これらの製品は、DSPの応用によって可能になった



パソコン時代の終焉を迎えて

その「DSPのTI」のEngibous氏が来日し、1月31日の記者会見で2000年の事業戦略を語った。日本テキサス・インスツルメンツ(株)(以下、日本TI)代表取締役社長、生駒俊明氏の挨拶に続いて壇上に上がったEngibous氏は冒頭で、「新しい千年紀は、将来、このように呼ばれるようになる――PC時代が終わり、広帯域通信や個人用携帯情報機器などによるインターネット時代の始まりとなった――と予言する。もちろん、PCは非常に重要だ。しかし、民生市場では、リアルタイムにデータ通信やコミュニケーションを行なう個人用ツールが、今後さらに重要になってくる」とし、通信、情報機器市場がより急成長すると語った。

携帯電話市場は、今後もさらに成長を続け、しかもインターネット接続など、さらに多機能になってくる。もちろん、有線通信でも、xDSLやCATVインターネット接続などにより、非常に広帯域の通信手段が導入されるようになってくる。これらの分野では、DSPが重要な役割を果たすのだ。

日本テキサス・インスツルメンツ代表取締役社長の生駒俊明氏
日本テキサス・インスツルメンツ代表取締役社長の生駒俊明氏



無線式広帯域通信機器(携帯電話など)の方式によって、どれだけの処理能力が必要になるかというグラフ。「3G」というのは、第3世代を意味し、IMT-2000で採用されたW-CDMAやcdma2000などの方式を示す
無線式広帯域通信機器(携帯電話など)の方式によって、どれだけの処理能力が必要になるかというグラフ。「3G」というのは、第3世代を意味し、IMT-2000で採用されたW-CDMAやcdma2000などの方式を示す



今後予想される、ケーブルモデムやxDSLモデムの出荷台数推移
今後予想される、ケーブルモデムやxDSLモデムの出荷台数推移



アナログも手抜かりなし

TIのもう一つの柱、アナログ半導体も、通信には非常に重要だ。TIはこの分野で1998年から首位に立っている。関連技術をもつ企業を買収するなどして技術を向上させてきた結果だ。こちらでも戦略的に製品群の拡張を図っており、図に示すように、年々多くの新製品を投入していくという。

また、設備投資額や研究開発費も、それぞれ前年比42%増、15%増と増強し、プロセス技術の向上や新製品の開発を加速する。それだけでなく、ワイヤレス通信、広帯域有線通信、そしてデジタル情報家電の3分野への応用を推進するため、ソフト開発も含めた各方面から顧客へのサポートを行なう方針だ。

急増する、TIのアナログ半導体新製品の推移
急増する、TIのアナログ半導体新製品の推移



DMD生産も順調に増強

会見後、Engibous氏があまり語らなかったDMD(Digital Micromirror Device)に関して、日本TIのデジタルイメージング事業部長、堀内豊太郎氏にたずねてみた。DMDはマイクロマシンによる画像デバイスで、LSIとほぼ同じプロセスで生産される。それぞれの画素は微細な鏡となっており、下の柱によって支えられており、その鏡面を、画素ごとに設けられた電極で静電界によって傾けることで反射光を調節する仕組みだ。光の利用効率がLCDの約3倍と、非常に高いだけでなく、ミラーを制御する電極それぞれが完全にデジタル駆動されるため、完全デジタル方式のディスプレイが可能になる。さらに、マイクロミラーの反応速度はLCDとは比較にならないほど高速で、動画にも強いという特徴を持つ。また、LSI製造ラインにちょっと手を加えるだけで生産でき、最先端LSIほどには微細化を要求しない。半導体としては旧式のラインを、そのまま活用できるので、コストも抑えられている。この結果、DMDを採用したプロジェクターは小型軽量ながらスクリーン輝度も高く、しかもビデオ動画からPC画像まで高画質と高い評価を得ている。逆に人気が災いして、DMDそのものの生産が追いつかないほどになったのだ。

日本テキサス・インスツルメンツ デジタルイメージング事業部長の堀内豊太郎氏
日本テキサス・インスツルメンツ デジタルイメージング事業部長の堀内豊太郎氏



堀内氏は、「顧客をずいぶん待たせてしまったが、今年の後半にはニーズに応えられるような生産能力に追い上げる予定だ。普通のプロジェクタだけでなく、リアプロジェクター式TVや、さらにデジタルから直接出力するミニラボ機器にも採用されるようになった。プロジェクター市場だけでも年30%の成長といわれており、これからは生産ラインを150mmウェーハから200mmウェーハに転換してゆくなどして追い上げる」としている。
DMDも、DSPと同じくさまざまな使われ方をするようになった、と言うことができるだろう。

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