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女が女に投資する循環が始まった――KRPベンチャー村より(後編)

2000年01月31日 00時00分更新

文● 服部貴美子 hattori@ixicorp.com

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去る1月27日に、開催された“KRPベンチャー村”には、女性参加者の姿も数多く見られた。本レポートでは、同日最後のイベントとなった女性起業家シンポジウムの概要をお伝えする。会場は、京都リサーチパークのサイエンスホール。

バブル後も生き残った女性起業家とは?

まず、最初に壇上に立ったのは、フリーライターの田村真理子氏。「昨年、“女性+起業”でホームページを検索したところ、100件以上もの項目が抽出されて驚いた」と語る田村氏は、この2つのキーワードが結び付けられにくかった'80年代初めころから、常に女性ベンチャーの姿を追い続けてきた。その後、雇用機会均等法の施行によって女性が“派遣される側からする側へ”と転身し、いわゆるニューサービスが台頭、やがて主要都市では女性向けの起業講座が行われるようになり、95年に北京で世界女性会議が開かれたことを境に、女性の起業熱は一気に高まった。

一方で、世間の抱く“華やかな女性起業家”のイメージとは裏腹に、「会社でも苦労をして、何度かの転職の末、借金をせずに済む300万円くらいの自己資金を元手に起業をする30代後半の女性」という実態や、「自己実現を目的に事業計画もないまま、スタートしてしまう人が多い」という危うさをも感じとっていたようだ。

田村氏は、日経新聞社在籍当時から、“女性起業家たち”の出版を手掛けるなど、女性のベンチャー進出に造詣が深い田村氏は、日経新聞社在籍当時から、“女性起業家たち”の出版を手掛けるなど、女性のベンチャー進出に造詣が深い



'90年代に入ると、日本の女性起業家に関するシンポジウムが海外で開催されるなど、国際的にも注目され始め、やがて景気回復の起爆剤として、女性労働力の活用が見直されてきた。

しかし、米国でも、女性起業家は増えたが、経済感覚的に、現実のビジネスに具現化するのは難しかったように、日本でも結局「コスト感覚のある人だけが残った。バブルのころに培ったネットワークを、早めにシステム化し、オンオフ両方のネットワークを活用できる女性起業家には注目」と、情報化と経済感覚が女性起業家の成否のカギであることを指摘した。

シリコンバレーのベンチャーはノンマジョリティーの時代に

続いて登場した影木准子氏は、日本経済新聞社のシリコンバレー支局の現役記者である。

「講演もシリコンバレー流に」と言って壇上から降り、参加者と距離を縮めて話す影木氏に、誰もが魅きつけられていった「講演もシリコンバレー流に」と言って壇上から降り、参加者と距離を縮めて話す影木氏に、誰もが魅きつけられていった



シリコンバレーでは、その名称、その由来でもある半導体産業を支える技術者たちが、起業家として中国やインドといったアジア諸国から流入したため、昨年初めて“白人比率”が50パーセントを割り込み“ノンマジョリティーの時代”に突入した。

では、女性はどうか? 「女性のベンチャーキャピタリスト(VC)が増えていること。インターネットの時代がやってきたこと。この2つの理由から、女性起業家の数は増えている」と影木氏は分析。シリコンバレーのVC、1600名のうち、75名が女性で、'94年の9名から、実に8倍にも増加している。「女性VCは、女性社長の会社に投資をしたがる。そして、インターネット時代の到来で、マーケティング、ブランド構築、デザイン能力など、女性の才能を発揮できる分野が増えた」

某大手ソフトハウスのような厚顔が必要

会社組織の中でアウトサイダーであった女性たちが、大躍進を遂げるチャンスだが、「完全主義になりがちな点は注意。ネット時代にはスピードが肝心。マイクロソフトのように、不完全でも発売して、ユーザーの声でアップデートするくらいの気持ちでなければ」と女性ならではの特性が時には欠点になることを指摘した。

ここで、影木氏は「起業で最も大切なのは、人との関係」と説明。シリコンバレーで“日本のベンチャーへ投資を希望しているベンチャーキャピタリスト”を3名と、“現地で活躍中の日本人女性”3名を紹介した。とくにDraper Fisher JurvetsのAsad Jamal氏(asad@dfj.com)は、「京都にオフィスを開きたいとの希望」との説明があると、場内がどっと沸いた。

参加者からの「投資を受けられる要因は何か?」との質問に、「これで世界を変えるというくらいのパッション」と答え、「シリコンバレーには、圧倒的なシェアを誇る大企業に本気で対抗しようとベンチャーを作る人がいて、彼らとともに頑張ろうと、優秀な人材が集まってくる、そんな“健康的な競争”がある」と説明するとともに、彼らの離職を食い止めることに苦労している経営者もいるという、シリコンバレーの影の部分にも触れた。

基調講演に続いて、中小企業総合研究機構の客員研究員である川名和美氏を進行役に迎え、4人のパネリストによるディスカッションが行なわれた。

川名氏は、ジェスチャーを交えた快活な進行ぶりで、ディスカッションを盛り上げた川名氏は、ジェスチャーを交えた快活な進行ぶりで、ディスカッションを盛り上げた



起業家の育ちにくい日本の土壌

アメリカの起業事情に詳しい真弓敦子氏によれば、米国では'80年代の規制緩和の効果が'90年代になってニュービジネスの創出に結びついたと説明。日本でも、「もっと、効果的な規制緩和をすれば、起業する女性の数は増えるかも。だが、日本では女性起業家のバックアップ体制は、まだ十分整っていないし、法人の最低資本金制度や、登録料の高さなどがネックになっているのでは?」と指摘した。

米国起業家研究者の真弓氏は、帝国データバンクによる女性経営企業数のデータを示し、「米国に比べて日本の女性起業家は、数も比率も少ない」と説明した米国起業家研究者の真弓氏は、帝国データバンクによる女性経営企業数のデータを示し、「米国に比べて日本の女性起業家は、数も比率も少ない」と説明した



また、中央監査法人の松永幸廣氏は、「女性起業塾の生徒を見ていると、パッションがアクションに結びついていない。お勉強ばかりで実行に移せない」という日本女性の短所に触れ、「商売は、ものを売るのではなく、人を売るのだということを意識し、とにかく動きながら考えていくべき」とすすめた。

そうした行動力で道を切り開いてきたのが、(株)キャリストセンターの笠松ゆみ氏。基調講演での女性は事業プランも立てずにはじめてしまうとの意見に「まさに私もそれでした」と語った。

『SOHOは営業が命』という著書のタイトル通り、保険外交で培った営業力と主婦SOHOの人脈を武器に、自営→有限会社→株式会社とステップアップした笠松氏『SOHOは営業が命』という著書のタイトル通り、保険外交で培った営業力と主婦SOHOの人脈を武器に、自営→有限会社→株式会社とステップアップした笠松氏



長短あわせ持つ、女性ベンチャーたち

笠松氏のように、インターネットの活用による女性の活躍の場が広がりを歓迎すべきという点でパネリストの意見は一致。しかし、女性特有の“経理面での弱さ”について、多くの起業家たちのコンサルティングをしてきた立場から、アッシュインターナショナルの建入ひとみ氏は不安要素であると指摘する。

建入氏(左)はコンサルタントとして、松永氏(右)はKRPの女性起業家支援事業のサポーターとして、多くの起業家たちに出会ってきた
建入氏(左)はコンサルタントとして、松永氏(右)はKRPの女性起業家支援事業のサポーターとして、多くの起業家たちに出会ってきた



建入氏はさらに、「働いている事務所のスタッフの半数以上がママだったことから、0才児を預かるベビールームを始めた人がいる。人的には保母や教員などの資格を持った人をネットワークし、ホームページで募集をするなどして、まずまず成功の部類。しかし、社会にもまれていないせいか、仕事とプライベートの境目がはっきりしない、3年後、5年後のビジョンが見えないなど、不安も残る」とコメントした。

笠松氏は、法人化によって受注する仕事が大きくなるかわりに、入金や支払いの金額も増大し、「払えなくなると慌てた。銀行はもちろん、国民生活金融公庫からも、そう簡単には借り入れできない」とエピソードを披露した。松永氏は、「たとえ借り入れできたとしても、お金の種類と意味をきちんと把握しておくべき。株主資本は株主に、借入金は銀行に返却すべきものだし、補助金も国民の税金だという意識を持ってほしい。自由に使えるのは売り上げだけ」と、資金調達における心構えを伝授した。

雇用契約やパテント戦略もしっかりと

会場からは、仕事でのパートナーの選び方や、他社との競争に打ち勝つための戦術について質問が出た。松永氏からは、「女性は上司、部下という関係のない、フラットな組織を作ることが多いが、目標がはっきりしないともめる可能性が高いので、きちんと契約関係を結ぶこと。解雇は、金銭的にも精神的にも負担が大きい」とアドバイス。建入氏は、今後注目すべき動向として「ビジネスの概論の特許化が本格化してくるので、技術だけでなく、販売システムなどにおいてもパテント戦略をしっかりと」と注意を促した。

終始辛口のコメントが続いた松永氏から「ビジネスには、必ず小さな勝ち負けはあるが、最大の負け=やめる、お金がなくなることさえ避ければ、成功する。ポジティブな仲間をみつけて、お互いにエネルギーになれるよう、頑張ってください」という励ましの言葉が出たところで、司会の川名氏が「数年後には、日本でも女性経営者が当たり前になる時代が訪れるかも。それまでになすべきことは何かを考られる有意義な機会だった」と、討議を締めくくった。

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