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米サン、『Solaris 8』を正式発表

2000年01月27日 00時00分更新

文● 月刊ASCII network PRO編集部 渡邉利和

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米サン・マイクロシステムズ社は26日(米国時間)、同社の新しいOSである『Solaris 8 Operating Environment』(以下Solaris 8)を発表した。

Solaris 8リリースの発表を行なう、エドワード・ザンダー(Edward Zander)社長兼最高執行責任者
Solaris 8リリースの発表を行なう、エドワード・ザンダー(Edward Zander)社長兼最高執行責任者



Solaris 8は、昨年末からEarly Access Programという形で、ウェブサイトなどを通じてβ版の配布が行なわれていたが、製品出荷のスケジュールは2000年第1四半期とされていた。今回の発表では、米国内での出荷が3月5日、日本では3月末の出荷予定となっている。

ライセンスの無料化とソースの提供

Solaris 8は、前バージョンのSolaris 7に比べると大幅なバージョンアップという印象はないが、各種機能が洗練されたほか、新機能の追加ももちろん行なわれている。また、OSとしての機能強化のほかに、今回新たにライセンス/価格についての大きな方針変更が行なわれた。具体的には、利用ライセンスの無料化と、ソースコードの公開である。

利用ライセンスの無料化は、従来有料だったOSのライセンスを無償で提供するというもの。もっとも、SPARC版に関しては、ハードウェア(ワークステーション)を所有していれば自動的にOSのライセンスも付属しているため、主として旧バージョンからのバージョンアップ費用が無料になった、ということと考えてよい。

一方、インテル版に関しては従来有料で販売されていたものが今後無料となる。つまり、インテルCPUを搭載したPCユーザーにとっては、この措置によってLinuxやFree BSDなどといった無料で利用できるOSの選択肢に、新たにSolarisが加わったことになる。

さらに、ソースコードも公開される。個人/法人を問わず、こちらも無償で見ることができるし、限定された範囲で利用する場合には改変も自由だ。しかし、商用に再配布する場合などにはサンと別途契約し、ロイヤリティーを支払う必要がある。なお、無償で配布されるSolaris 8(バイナリー)に含まれる全モジュールのソースが公開されるわけではない。他社製品のバンドルソフトウェアなどのソースなど、公開されないソースもある。しかし、カーネル部分などの主要部分はほぼ公開される見込みだ。

従来は、大学等のアカデミックユーザーに対してソースが公開されていたほか、SPARCチップのユーザーやSolarisシステムのサポートをビジネスとする企業などが、有償でソースライセンスを受けていた例はあるものの、今回は対象となるユーザーに制限がない。Java2で採用されたライセンスであるSCSL(Sun Community Source License)とよく似たものになると考えてよいだろう。ただし、再配布に関する規定などがJavaとは異なるため、SCSLをそのまま利用するわけではないとのことだ。また、ソースコードの無条件/無制限な利用が認められているわけでもないので、一般的な“オープンソース”ともやや異なると見るべきだろう。

Solaris 8のバイナリー/ソースともに、ウェブサイトでのライセンス契約に同意すれば入手できるようになる予定だが、*各75ドル(約7900円)でCD-ROMメディアでの配布も行なわれる予定だ。ソースの提供開始は、4月の予定となっている。

*編集部注:配布されるのは英語版で、日本からも申し込むことができる


Solaris 8の主な改良点


Solaris 8では、多数の改良が行なわれているが、特に日本のユーザーにとっては、完全なマルチランゲージ化が行なわれている点が重要だろう。日本語版ではメニュー表示やオンラインドキュメントなどが日本語化されるほか、『ATOK』や『wnn』といった日本語入力環境が提供されるが、英語版のままでも多くの言語をサポートし、基本的なフォントも同時に提供される。そのため、日本語版を待たなくとも日本語の入出力は不自由なくでき、さらにUNICODEを利用した多国語混在文書の作成なども可能だ。

編集部注:現時点ではSolaris 8日本語版についての詳細は明らかにされていない。日本サン・マイクロシステムズ(株)によれば、日本語版については3月に発表を予定している

また、ネットワーク機能ではIPv6やMobile IPのサポートを提供している点が目に付く。このほかには、主として大規模なデータセンター等での利用を想定した高信頼性/高可用性/スケーラビリティーといった要素が強化されている。別途商用製品として提供されるクラスタリング機能や管理ツールなどを利用すれば、大規模環境での運用はこれまで以上に容易になるだろう。特に、ダウンタイムの減少に関しては、Dynamic Reconfigurationをサポートし、この機能に対応したサーバー機であれば、稼働中にCPUやメモリーを増設するなどといったことも可能になる。

特にサーバー用途でSolaris 8はWindows 2000と競合する

Solaris 8は、“The .com Operating Environment”と銘打たれているとおり、インターネット環境でのビジネスのプラットフォームとなることを企図したシステムソフトウェアである。そして、ライセンスを無償としたことは、ユーザー層を拡大し、アプリケーションやソリューションの増加を促すことでより魅力的なプラットフォームとしていくための方策である。

一方、サン・マイクロシステムズのビジネスの中心は、サーバーハードウェアと、Solaris上で動作する各種アプリケーションプラットフォーム、そしてサービスやサポートであるため、Solarisを単体製品として販売する意味はほとんどない。そのため、ライセンスの無償化にともなう損失はほとんどなく、市場拡大のメリットが大きいとされている。

Solaris 8のユーザーライセンスが無料となると、ユーザー数に応じてライセンスを購入する形態のWindows 2000と比べると、特に大規模サーバーではコストの差は無視できないほど大きくなる。しかも、ハードウェアが異なるSPARCシステムではともかく、インテル版に関してはユーザーにとっても魅力的なOSの選択肢が1つ増えたことになるため、Windows 2000と比較検討するユーザーも増えるだろう。

Windows 2000の正式リリース(2月18日)直前のこの時期にSolaris 8が発表されたことも、偶然ではなく当然Windows 2000を意識してのことと思われる。特に中小規模のサーバーではインテルベースのPCサーバーの存在感が大きくなっており、Windows 2000 Serverはここを主な市場と考えていると思われるため、形としてはSolaris 8がWindows 2000のマーケットに先制で参入したといえるだろう。今後、Linuxも含めてシェアがどのように推移していくのか、興味深い。

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