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【バーチャルバンキング Vol.4】「米政府の取引のうち60パーセント、48兆円がカード決済に移行」

2000年01月19日 00時00分更新

文● 月刊アスキー編集部 佐々木俊尚

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コンファレンス“バーチャル・バンキング--リーテイル金融進化論”が、1月18から19日まで、都内のロイヤルパークホテルにおいて開催された。同コンファレンスは、世界41ヵ国でエグゼクティブを対象にしたイベントなど開催している英International Communications for Management Group社(ICM)が主催しているもの。

2日目の19日は、電子認証や公開鍵暗号、コンピュータウィルス防御など電子商取引を支えるさまざまなインフラについて、多角的に分析した。

午前の基調講演に立った電子商取引実証推進協議会(ECOM)の主任研究員、青島幹郎氏は「デビットカードやICカードなど新たなカード決済が始まりつつあるが、今後は偽造カードが最大の問題となる。磁気カードはシステム的に偽造を防御する方法がなく、実務家の目から見ても今後の被害拡大が心配だ」と指摘した。

「日本がバブルに踊っているころ、米国は情報通信に投資」

ECOMは通産省のエレクトロニックコマース推進事業に基づき、EC実現のためのインフラ整備や制度的課題などを検討するため、'96年に設立された。'98年からは活動はフェーズ2に移り、さまざまなワーキンググループを作ってECを実際に立ち上げるための具体的方策などについて検討を進めている。今年4月には他組織などと合同し、「電子商取引推進協議会」(英名はECOMのまま)の名称になるという。

ECOMが通産省やアンダーセン・コンサルティングなどと共同して実施している調査では、国内のEC取引額は、たとえばBtoC分野で'98年に650億円だったのが、2003年には3兆1600億円に達すると予測されている。だが米国との格差が縮まる見通しは依然少なく、その原因について青島氏は、「日本がバブル経済に踊っているころ、米国は情報通信関連へ集中的に投資したことが大きいとされている。日本は今になってあわててIT関連投資に走っているが、なかなか間に合わない」と話した。

'98年の統計では、BtoC取引のベスト3は、“PC”、“金融”、“衣類・アクセサリ”だった。これが2003年には、“旅行”、“自動車”、“PC”になるとECOMでは予測しており、将来のECはマーケット、消費者主導型になる見通しだという。インターネット証券やオンラインバンキングなど金融関連について、青島氏は「安全な決済や認証などの基盤がまだきちんと整備されていないため、日本ではまだ広がらない。しかしインフラ整備が完了すれば、一気に拡大することになるだろう」と予測した。

「今後は、偽造カードが最大の問題になる」

一方、ECの大きなプラットフォームとなっているカード決済について、青島氏は、「日本では大型加盟店センターと銀行センター、カード会社センターを結ぶネットワークが網の目のように発達しており、他国と比較してもカードのオンラインシステムが極度に進んだ国になっている」と説明した。しかし青島氏によると、そうした状況にも関わらず、日本では偽造カード犯罪への対応が進んでおらず、海外の偽造カードグループの草刈り場となりつつあるという。

昨年放映されたテレビのニュースドキュメンタリーでは、海外の組織犯罪のメンバーが、「カード偽造に対して、日本ほど甘い国はない」、「米国などでは確実に懲役刑だが、日本ではカード偽造で逮捕されても執行猶予だ」、「偽造だけで、使用しなければ日本では法的に罰せられない」などと証言する様子が放映されたという。

警察のまとめによれば、昨年の偽造カード被害額は約26億円。しかしECOMでは、被害額の実体はその10倍以上に上る可能性がある、とみている。盗んだカードのデータをリーダーライターを使って読みとり、秘密工場で即座に複製するというのが主な手口。カードのデータを磁気で構成している以上、複製を避けることはできない。

「デビットカードでは、店員が不正をすると全額引き出せる」

青島氏は、「こういうことをされると、システム的に防御する方法がない。異常な使い方をされるとすぐにそのカードを停止するなど対症療法的な対応しかできない。さらに問題なのは、デビットカードだ。認証にサインではなく暗証番号を使うが、小売店の従業員の買収などの方法で簡単に暗証を盗まれてしまう。デビットカードはキャッシュカードにもなるので、口座の残高をあっという間に引き出されてしまう」と指摘。

「デビットカードでは、店員が不正をすると全額引き出せる」と警告を発する青島幹郎氏「デビットカードでは、店員が不正をすると全額引き出せる」と警告を発する青島幹郎氏



さらに「今年半ばからはこうした被害が実際に発生してくるのは間違いない。私はこういう商売を37、8年もやっているが、実務家の目から見てもこの問題はたいへん心配だ」と危惧を表明した。

「米政府の取引のうち60パーセント、48兆円がカード決済に移行」

しかし一方で、米国などではカード決済によるECがさらに次の段階に進みつつあるという。従来のBtoC、BtoBから、今年はBtoG(Government=政府)へとECは拡大。電子政府の実現と管理コスト節減のため、米政府は政府購入と調達のうち、25000ドル(約300万円)以下のものについてはすべてカード決済にすることを決定しているという。

これを2001年度には完全実施されることを目標にしており、その場合、カード決済が行なわれるのは、米政府の年間取引件数約4200万件のうち約85パーセント、金額にすると総額約80兆円のうちの約60パーセント。実に48兆円にも達することになるという。これに伴うセキュリティー対策として、米政府は'99年にすでにSET対応のICカードを導入している。

青島氏はEC導入の今後の戦略として、「単独の企業ですべてが行なえるという時代は終わった。今後はブランド力やコーディネート力を使い、事業連携などを進めてEC実現を行なっていくべきだ。インフラとして、ICカードの採用がセキュリティ向上やリスク軽減などの観点からも多くのメリットがあるだろう」と結んだ。

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