1月16~20日の5日間、米国フロリダ州オーランドにおいて、デベロッパー向けカンファレンス“Lotusphere
2000 Orlando”が開催されている。ただし、16日は米ロータス社のビジネスパートナーを対象とした“Business
Development Day”となっているため、実質的には本日(17日、月曜日)が初日といってよいだろう。さまざまなセッションが行なわれた中で、もっとも注目されたのが午前8時から開かれたOpening
General Sessionである。
Opening General Sessionで話すジェフ・パポウズ社長兼CEO |
先日、社長兼CEOのジェフ・パポウズ(Jeff Papows)氏が2月1日付けで退任し、後任(両職とも)には米IBMのアル・ゾラー(Al
Zollar)氏が就任する、と発表されたばかりであり、この日は実質的なパポウズ氏のお別れ講演ともなった。もっとも、壇上に現われたパポウズ氏の話は製品や技術の紹介、Dominoを中心とする同社の製品の今後の戦略/方向性といった内容が主で、自らの退任の話は簡単に触れる程度に留めた。また、客席最前列にいたゾラー氏も紹介を受けてその場で立ち上がり、客席に向かって挨拶しただけで、スピーチ等は行なわなかった。
Opening Sessionで紹介されたニュースをまとめてみると、大きく2つの方向性が示されたように思う。1つは、これまで取り組んできたKnowledge
Management(KM)の拡充、本格的な製品への展開の開始である。これをサーバサイドの技術と位置づけると、もう1つがクライアントサイドの話題、ユニバーサルクライアントの本格展開である。
KMをサポートするサーバプラットフォーム、コード名“Raven”の背景にあるのは、企業が持つリソースをThings、Place、Peopleの3つに分類し、その効率的な利用をサポートすることで、“Organizational
Effectiveness”を高める、つまり、組織運営の効率化を図っていくという考え方だと理解してよさそうだ。
“Organizational Effectiveness”を実現するための条件。下から2番目のe-Lineとは、e-business化された.com企業と従来型の企業を分ける仮想的な境界線。これからはあらゆる企業がこのe-Lineという一線を越えることを目指さなくては、ということでここに入っているようだ。逆に、Organizational Effectivenessの実現が“Cross the e-Line”の条件と考えてもよいかもしれない |
あるプロジェクトを推進する場合、、Dominoデータベースに蓄積されたドキュメントデータベースから情報を抽出することで必要な情報を持っている人(People)を見つけだしてコンタクト方法を提供し、それらの人々がコラボレーションできる場(Place)を提供する。さらに、必要な情報やリソース(Things)を管理/提供する、というスタイルが提案されている。
Ravenがいつ製品としてリリースされるかについては、時期ははっきりとは示されなかったが、デモンストレーションを通じて必要な技術は既にほぼ開発され、揃っていることがアピールされた。
新たに3ラインに分かれたクライアントソフトウェア。従来の専用クライアントの“Notes”、WebブラウザとOutlookを利用する“i Notes”、携帯情報機器を使う“Mobile Notes” |
一方、クライアントではNotesが新たに3つのラインナップとして拡充されることになった。従来の“Notes”、ウェブブラウザーなどを利用してDominoサーバーにアクセスするための“i
Notes”、そして携帯電話やPDAなどからのアクセスを想定した“Mobile
Notes”の3つである。
i Notesでは、サーバーとなるDominoに組み込まれるDomino Off Line Service(DOLS)が利用され、Webブラウザのほか、マイクロソフトの『Outlook』との統合も行なわれると発表された。Outlookからアクセスした場合、MAPI経由でのアクセスに応答するための拡張がサーバー側で行なわれ、メッセージをOutlookとやりとりすることになるという。また、Mobile
NotesではPalmシリーズやモトローラの双方向ページャー、ノキアの携帯電話といった端末に組み込んだ例が紹介された。なお、これらのクライアントサイドの製品については、正式な発表が明日18日に行なわれる予定であり、現時点では詳細は不明である。
Mobile Notesの例として示されたノキア製携帯電話の液晶画面 |
こちらは、モトローラの双方向ページャーの様子 |
ロータスからはさまざまな製品群が提供されているが、今回のLotusphereではこれが整理されたと感じられた。ドキュメントデータベースであるDominoを核に、KMをキーワードにした製品群が位置する。DominoがDBで、RavenはViewだといってもよいだろうか。この環境にアクセスするクライアントは自由度が増し、ユーザーの使用する環境に応じてさまざまなものが利用できるようになる、というわけである。関連して製品の価格体系も分かりやすいものに整理され、ユーザー数に応じた単純なものになるという。
KMという切り口はあるものの、さまざまなデータを格納したデータベースを中心に据え、その取り出し方や分析/活用のためのさまざまなツールを揃えていく、という言い方にまとめてしまうと、これはオラクルが『Oracle8i』で取り組んでいる戦略とよく似たものに見えてくる。これはつまり、現在のe-businessのプラットフォームを提供していくという戦略そのものであり、グループウェアという1カテゴリの中の話では収まらなくなってきていると言うことだろう。プラットフォームプロバイダとしてのLotusのこれからの方向性は、このLotusphereでかなり明らかになったといってよいのではないだろうか。
Opening General Sessionが開催されたWalt Disney World Dolphin Hotel。1月とはいえフロリダは青空で、風はやや冷たく感じるものの、日向にいると汗ばむほどの陽気だ |