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【バーチャルバンキングVol.2】ヨーロッパ初の無店舗銀行に学ぶ

2000年01月18日 00時00分更新

文● 編集部 高島茂男

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コンファレンス“バーチャル・バンキング--リーテイル金融進化論”が1月18から19日まで、都内のロイヤルパークホテルにおいて開催されている。同コンファレンスは、世界41ヵ国でエグゼクティブを対象にしたイベントなど開催している英International Communications for Management Group社(ICM)が主催するもの。

国内外の金融機関などの講演者が、バーチャルバンキングの成功事例や、金融ネット取引、電子商取引の導入事例などを紹介、導入した効果の検証や金融機関の将来を探る内容になっている。

アイルランドに本拠を置くenba社のCEO、Gerhard Huber(ジェラード・ハバー)氏が、“ファーストエー・ザ インターネットバンク--ヨーロッパ初の無店舗銀行”と題した講演を行なった。

enba社のCEO、ジェラード・ハバー氏
enba社のCEO、ジェラード・ハバー氏



enbaは、ヨーロッパを営業範囲とするバーチャルバンク、“first-e, the internet bank”を運営している。同銀行は、現在イギリスで営業しており、まったく店舗を持たずインターネット上のみで顧客にサービスを提供している。同銀行が何を、なぜしているのか、ハバー氏が語ってくれた。

「enbaは、ヨーロッパのリーテイル銀行をベースにしています。現在はインターネット上のパソコンユーザーを顧客としていますが、2年もすれば携帯電話のユーザーのほうが、パソコンのユーザーより多くインターネットにアクセスするようになるでしょう」

「オンラインの金融サービスは、ヨーロッパにおいて重要な位置にあります。顧客はヨーロッパの15の国におり、そのニーズを満たさねばなりません。どこに拠点を置いても関係ないのです。15の国、15の異なった歴史があり、それぞれの文化を尊重しなければなりません。イギリスのサービスをドイツに持っていくだけではだめなのです。その国にあったサービスを提供する必要があります。それができれば、優位性を持つことができます」

「我々の提供しているサービスに“投資バンキング”というものがあります。現金はあるけれど、時間がないといった人が対象です。ヨーロッパで非常に伸びてきている層です。このサービスは、その人たちの資産を最適化してあげようというものです」

「また、家を買ってローンを組もうという人などに、最適な商品を提供しようというのが“金融仲買業”です。これは、家を買うという全てのこと、ローン、水道や電気の供給会社などについて、最も条件のよいところを探して提供しようという考え方です」

「アイルランドを拠点としているのは、イギリスではイギリスの企業が、ドイツではドイツの企業が優位といったことがあります。同社を小さな中立的な企業として位置づけたかったのです。いろいろな諸条件を調べた結果、アイルランドが最適であるとなったわけです」

「インターネット上の無店舗銀行といっても、成功のためには実際の世界とバーチャルな世界をつないでいる必要があります。これは支店が必要というわけではありません。ポイントが必要なのです。ロンドンに“体験センター”を開設したのです。これは支店とは異なります」

「ヨーロッパで営業するということは、(インターネット上の銀行とはいえ)ヨーロッパの規制対象となるわけです。ヨーロッパの中ですから、規制に従属しなければならないのは当然と考えていました。営業許可のライセンスを持っていれば、ドイツにある銀行でなくても、ドイツの銀行として認めてもらえることになります。政治的な壁はあっても、最終的にはライセンスを取得することができたのです」

「enbaはもう1つのブランド、“rubitec”を持っています。このブランドは、オークションサイトのeBayの顧客に対して、金融サービスを提供することになりました。売上代金を回収するときなど、大西洋を越えるトランザクションのチャージだけでもかなりの額になってしまいます。そこに我々がサービスを提供するのです」

「first-eは、バックエンドをアウトソースにすることで、フロントエンド全体がお客のほうを向くことになります。ヨーロッパ全体を相手にしていますので、各国のシステムに対応したり、システムをバージョンアップしたりということを行なっていては大変です。そういったことはサービスプロバイダーに任せてしまおうということになったわけです」

「インターネットの最初のインターフェースは、Javaアプレットでした。これは当時128bitの暗号を米商務省が輸出を許さなかったため、選択肢がJavaしかなかったのです。米商務省も128bit暗号の輸出をOKしたものですから、次のバージョンではダイナミックHTMLにします」と語った。次のバージョンでは、現バージョンと比較して、見やすく、直観的に操作できるものになるという。

質疑応答において、ヨーロッパ以外からでも利用できるのかという問いに対して、香港からでも利用できるし、実際に世界各国に顧客がおり、あなたがイギリス型の銀行を利用したいなら可能であると回答した。

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