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【INTERVIEW】「SANは、ネットワークでデータを効率よく活用するための解」――米ネットワークアプライアンス社のマーキ氏

2000年01月14日 00時00分更新

文● 編集部 小林伸也

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SAN(Storage Area Network)やNAS(Network Attached Storage)といった言葉が、ネットワークを左右するキーワードとして注目されている。これまで単なるデータの貯蔵庫と考えられていたストレージだが、ネットワークに直結させたり、あるいはネットワーク化して利用することで、管理コストを削減するだけでなく、より戦略的なデータの活用が期待できるという。このような動きの中、主にミドルレンジファイルサーバーといったストレージ製品で急成長を続けているのが米ネットワークアプライアンス社だ。社名の通り、ネットワーク向けストレージ専業ベンダーとして市場に確固たる地位を築いた同社が目指す方向について、同社エンタープライズマーケティング部門のディレクター、マイケル・マーキ(Michael J.Marchi)氏に話を聞いた。

米ネットワークアプライアンス社エンタープライズマーケティング部門のディレクター、マイケル・マーキ氏(東京・千代田区の日本ネットワーク・アプライアンス(株)のオフィスで)
米ネットワークアプライアンス社エンタープライズマーケティング部門のディレクター、マイケル・マーキ氏(東京・千代田区の日本ネットワーク・アプライアンス(株)のオフィスで)



――SANが今、注目を浴びているのはなぜでしょうか。

「電子商取引の拡大やデータベースの活用が進み、企業内が保有するデータは予想よりも早いペースで増え続けています。このため、データを記録したり、バックアップを取るために必要とされるストレージもどんどん増えています。またネットワークでは、Windows NTやUNIXといった異なるOSが混在しています」

「ストレージに関わるコストも急上昇しています。ある調査機関の調べでは、'99年ではサーバーとストレージに掛けられるコストはほぼ同じ割合ですが、2003年にはストレージの方が上回るとしています。「2003年までに、サーバーはストレージの周辺機器になっているだろう」と言い切るアナリストもいるほどです」

「こういった課題をネットワークの中で技術的に解決するのがSANです。これまでストレージはサーバーごとに接続されていました。これを分離し、ストレージだけでネットワークを組むことで、各サーバーの負担を減らすことができ、クライアントからのアクセスも容易になります。またストレージを一元管理できるので、管理コストの削減にもつながります。このようにデータの有効利用を考えている企業にとって、SANは重要なソリューションになってきています」


――SANを実現する製品として、貴社ではファイルサーバー製品を発表していますが、これは競合他社の製品に比べどのような点が優れているのでしょうか。


「我々の製品は独自のOSである『Data ONTAP(Open Network Technology for Appliance Products)』を搭載しています。このOSは、構造的にはリアルタイムOSのカーネルを持っています。120万ラインのCで書かれ、ブートファイルはメモリーに格納されています。特徴は、RAID機能をDate ONTAPそのものがサポートしていることです。ユーザーはRAIDを利用する際に、ほかのソフトやハードを用意する必要がありません」

「Date ONTAPでは、データは独自のファイルシステムであるWAFL(Write Anywhere File Layout)形式で記録されます。このWAFLファイルシステムでは、データをメモリーに蓄積してからすべて同時にディスクに書き込むようになっています。そのためWindows NTのNTFSといった他のファイル形式に比べ、データ読み取りの際、読み取りヘッドのシークタイムを短縮することに成功しています」

「ディスクの容量は年々増え続けているのに対し、シークタイムの短縮についてはそれほど向上が見られません。無駄なシークタイムは今、ネットワークにおける一番のボトルネックとなっています。ネットワークアプライアンス社は、このヘッドシークを独自ファイル形式によって最小化できる唯一のベンダーなのです」

――ネットワーク向けストレージにおける貴社の実績を教えてください。――ネットワーク向けストレージにおける貴社の実績を教えてください。



「我々が手掛けた中で最大級だったのは、米ヤフーのフリーメールサービスである“Yahoo! Mail”のシステムです。このサービスは多数のユーザーからアクセスが殺到し、ユーザー数も増え続けていましたが、レスポンスの低下は許されません。ヤフーではストレージの導入に当たって、EMCら競合他社の製品をすべて調査しました。その上で、スケーラビリティーや拡張性、運用コストにおいてネットワークアプライアンスの製品がベストであると結論し、導入に踏み切りました」

「ミッドレンジのNASに限定すると、我々はワールドワイドで43パーセントのシェアを獲得しています。'98年、NAS全体の売り上げは600万ドル(約6億円)でしたが、そのうちの290万ドル(約2億9000万円)を我々が占めています。この市場が2003年には60億ドル(6000億円)にまで成長するとの予測があり、我々はシェアを維持するだけで高成長が期待できるということです」

「ネットワークアプライアンス社全体の売上において、日本法人が占める割合は、現在7パーセントです。しかし2000年問題で滞っていたIT投資がこれから伸びると見込まれ、今年は10パーセントほどになるかもしれません。本社としても、ヨーロッパ市場よりも日本市場に大きな期待を寄せています。日本でも、競合他社の製品とかち合っても、結果としてほぼ我々の製品を採用していただいています」


――今後の戦略について教えてください。


「現在の売上は7割が北米市場で、ヨーロッパや日本といった他の市場は3割にとどまっています。北米以外での売上をどう伸ばすかが課題となっています。我々はデルコンピュータや富士通とOEM契約を結んでいますが、こういったOEM先や代理店など、パートナーシップの拡充を進めていきたいと考えています」

「日本では商社系の代理店が販売に当たっています。これからの顧客は必ずしもネットワークやサーバーに詳しい企業ではないでしょう。製品のみの販売にとどまらず、システム全体を売れるようなソリューションプロバイダーとも組んでビジネスを進めるつもりです」

「ストレージだけでも巨大なマーケットになると見込んでいますが、今後はアプリケーションベンダーとの連携も考えています。SAP社のようなERP(Enterprise Resource Planning)ソフトベンダーや、オラクルといったデータベースソフトベンダーらとパートナーを組んでさらに市場に食い込んでいく計画を考えています」

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