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大阪市創業支援センター(あきない・えーど)オープンに向けて専門家(士業)のサポート部隊が始業へ

2000年01月07日 00時00分更新

文● 服部貴美子 hattori@ixicorp.com

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去る'99年12月6日に、大阪市・中央区の船場センタービルにて、2000年2月より本格的な業務をスタートする大阪市創造支援センター(通称:あきない・えーど)の概要について、説明会が開かれた。

この会は、同センターが実施する予定のサービス事業において、起業家たちのサポート役を担う、中小企業診断士、社労士、弁理士、会計士らを対象としたもので、数十名の専門家たちが集まった。
司会は、大阪市創業支援センター準備室の上田実千代氏。

中央左から、司会の上田実千代氏、スタッフの菅原裕氏、吉田雅紀室長、スタッフの岩金弥惠子氏
中央左から、司会の上田実千代氏、スタッフの菅原裕氏、吉田雅紀室長、スタッフの岩金弥惠子氏



大阪市が官民、行政区の “垣根”を越えて創業支援に着手

日本が長い景気低迷に苦しむ中、平成11年度の大阪市の補正予算には、創業支援に関する項目が組み込まれた。大阪市の失業率の6.1パーセントという数字は、全国と比較しても高く、市の事業の停滞ぶりを示している。

各地方自治体でも、官民それぞれが創業支援への試みを続けているものの、利用者側からみると、「市、府(県)、国民金融公庫など、窓口がばらばらな上に境界がはっきりしないため、どこに尋ねていいのか考えるだけで疲れてしまう」という不満の声も大きい。そこで、官民の垣根も、市と府の境界もできうるかぎり取り去って、ワンストップですべてが分かる“開業・創業のポータル”を作ろうというのが、“あきない・えーど”の狙いだ。

「クライアントを支援したいという気持ちを持っているなら、横のつながりを持つべき。ベンチャーキャピタルや銀行、証券会社にも日参しました」と室長の吉田氏が説明する。

学生も歓迎! 幅広い参加者を専門家がサポート

従来の相談施設との最大の差は、横並びの指導をしないこと。相談者のレベルに応じてシード1~3に分け、初心者(シード1)には集合研修やベーシックセミナーで基礎知識を与え、その後でメールや面談で個別相談に応じるような仕組みにする。いよいよ創業段階に入った場合(シード3)は、ビジネスプランのたたき直しや、起業家同士の交流会を設定していく予定だ。

今回、ホームページでも公開したことについて吉田氏は、「アメリカ村が20年たっても元気なのは、若い感覚から生まれた街だからだと思う。だから、学生ベンチャーの人を含めて、もっと若い世代の人たちにも、見てほしいと思った」と語る。対象も、株式公開を目指すようなレベルのベンチャー企業だけでなく、もっとすそ野を広げたポータルにしていくつもりだという。

ここで、司会の上田氏から、各メニューの紹介とともに、ブレーンとなる専門家に手助けを要請する項目について説明が行なわれた。今まで、行政が指導するエデュケーションセミナーはレベル分けされておらず、全員が同じプログラムを受けていた。「これでは全員が不満ですし、無料という形態では、情報を提供する側も享受する側も甘えが出る。いずれは、有料にしてレベルを上げることも想定した上で、本当に役にたつ内容にしていきたい」(上田氏)というわけだ。

レベルをシード1~3とスタートアップの4段階に、サービス事業をコンサルティング、情報サービス、エデュケーションの3段階にわけて、個々のリクエストに答えられるプログラムを準備。ビジネスプランのコラボレーションや、交流会をはじめとするコミュニティーは、「欲しいのに、なかった」サービスといえるだろう
レベルをシード1~3とスタートアップの4段階に、サービス事業をコンサルティング、情報サービス、エデュケーションの3段階にわけて、個々のリクエストに答えられるプログラムを準備。ビジネスプランのコラボレーションや、交流会をはじめとするコミュニティーは、「欲しいのに、なかった」サービスといえるだろう



セミナーに集まったブレーンたちは、顧問契約を結んで仕事をしているメンバーが多い。“あきない・えーど”においては無償もしくはわずかな謝礼で面談やメール相談に応じることになるが、もし独立を果たした暁には契約先に育つ可能性もある。

参加者からの質疑応答では「メールを回答手段の中心とした場合、報酬計算の基準となる拘束時間の判断が難しい」という意見が出た。メールではコミュニケーションの度合いに限界あるので、場合によって実際の面談との組み合わせは不可欠であろう。しかし、「インターネットリテラシーは、2000年に飛躍的に向上するであろうことを加味すれば、メールは、かなりポピュラーなツールとなっていくはず」(菅原氏)である。また、「クイックレスポンス=48時間以内の返信を重視した場合も最適な手段」(吉田氏)との回答もあった。

ある程度の運営フィーの範疇(はんちゅう)で、相談内容を振り分け、初心者レベルのものはセミナーへの参加を促す、汎用性のある質問はホームページのコミュニティー上で回答する、守秘義務のある内容やレベルの高い質問は個別対応(場合によっては料金も別途)という形で対応することになりそうだ。

また、「大学の新学期(4月)を利用して、起業家サークルを訪問したり、たとえば沖縄サミットのプレイベントとして予定されている学生サミットのビジネスプランコンテストなどとも、うまくからめていきたい」(菅原氏)と学生の参加についても歓迎していく姿勢を見せている。

2001年に完成予定の新オフィス『産業創造館(仮称)』には、創業準備団体オフィスも用意する。1坪程度のブースを30個集めたスペースで、起業は決まったが事務所の手配が済んでいないというレベルの人たちに貸し出す予定。菅原氏は「たとえばETICのような組織にいるインターンを、この共同オフィスの受付業務など、スタッフの一員として働いてもらえるかもしれない」と語った
2001年に完成予定の新オフィス『産業創造館(仮称)』には、創業準備団体オフィスも用意する。1坪程度のブースを30個集めたスペースで、起業は決まったが事務所の手配が済んでいないというレベルの人たちに貸し出す予定。菅原氏は「たとえばETICのような組織にいるインターンを、この共同オフィスの受付業務など、スタッフの一員として働いてもらえるかもしれない」と語った



報酬体系や個々の事業との線引きが、今後の課題に……

“あきない・えーど”としての取り組みと個人的な契約との線引きが難しいという問題は否めないし、無料サービスを行なうことで、行政が民間の営業を圧迫しているのではないか? という声が出ることも懸念される。「たとえば、助成金申請などには、若干のテクニックもある。それをオープンにすることは、士業としては自分を安売りすることのようにも思える」(参加者)との意見もあった。

吉田氏は、「まずは、このプロジェクトに参加してもらえるかどうか。参加できるとすれば、どのような形がいいのかもヒアリングしていきたい。現段階では、批判もトラブルも歓迎します」と語り、スタッフ同士のMLを開設する準備があることを発表した。

このプロジェクトのために、関東から駆け付けている菅原氏は「関西の事業家たちを見ていると、何か自信がなさそうにみえる。起業にヒト、モノ、カネ、アイデアが必要だとすれば、アイデアに対する思い入れが強いのに、カネがないという悩みが切実で萎縮している感じ。『あきない・えーど』は、会員制だが、資格も参加費も必要ないので、ぜひ積極的に参加して欲しい」と述べた。

説明会終了後に、「協力してみたい」というスタッフたちが、さっそくプロフィール用の写真を撮影した
説明会終了後に、「協力してみたい」というスタッフたちが、さっそくプロフィール用の写真を撮影した



ブレーン同士の名刺交換会も行なわれ、場内は新しいインキュベーターの誕生に盛り上がりをみせた。いわゆる“士業家”が中心だが、ネットビジネスの先駆者や、ベンチャーキャピタルや証券会社スタッフの顔もみられた
ブレーン同士の名刺交換会も行なわれ、場内は新しいインキュベーターの誕生に盛り上がりをみせた。いわゆる“士業家”が中心だが、ネットビジネスの先駆者や、ベンチャーキャピタルや証券会社スタッフの顔もみられた

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